長岡高専発のスタートアップ同士がM&A!両社の強みを活かした事業拡大戦略とは
プロッセルは拾壱・ビッグストーン株式会社(以下、ビッグストーン)の株式を取得し、子会社化することを決意しました。
プロッセルは高専生のキャリア支援事業を行なっており、ビッグストーンは主に製造業界での受託開発やアクチュエーター製品の設計・開発を行なっている会社です。
なぜ正反対にも見える事業を行う両社がM&Aを行ったのか、決断に至るまでの経緯や想いを伺いました。
長岡高専の先輩後輩!長年のご縁が実を結ぶ
大石:幼い頃からものづくりに興味があり「将来はロボットと人間が共存できる社会をつくりたい」という想いを抱いていました。中学卒業後は長岡高専に進学し、当社の前身となるベンチャーサークル「ビッグストーン・ラボ」を設立しました。
サークルでは民間企業の技術開発をハードウェアという側面から支援しており、具体的には超小型サイクロイド減速機の開発を行なっていました。何社か取引をしたいと言っていただく企業が増えてきたので、2018年に法人化することになりました。
大石:減速機というのは、歯車をつかって回転速度を落とす機械のことで、速度を減速するかわりに大きな力を出すことができるものです。身近なところでは、ロボットの関節部分や自動車などに使われています。
減速機の中でもサイクロイド減速機は、小型で軽量なためコンパクト設計が可能という特徴があります。一方でサイクロイド減速機を生産するためには高価な材料を使用する必要があるため、日本ではあまり普及していない現状がありました。そこで、構造や歯車の形状を変えて1/3以下のサイズにすることで、より安価でコンパクトなものを開発したんです。
大石:同じ寮で生活をしていたので、もちろん存在は知っていましたが、そこまで関係が深くあるわけではありませんでした。
横山:大石さんは高専時代からすごくものづくりに対して熱心という印象がありました。1年生の頃からフリーランスとして働いていたり、寮の中でも機械を使って製作していたりと、学校内でも目立っていましたね(笑)
私が創業したタイミングで既に大石さんは起業していたので、同じ長岡の起業家の先輩として定款や法人登記などについてアドバイスもいただいていました。
大石:事業が元々は全く異なる領域だったにも関わらず、今コラボレーションが実現したというのはとても面白いですよね。
M&Aは起業家のキャリアの選択肢
大石:きっかけは2つあります。
1つ目は、私の性格的に経営者というより、100%と言っていいほどエンジニアの体質をしていることです。会社を設立した経緯でも話した通り、経営者としてキャリアを歩みたくて創業したわけではなく、仕事の依頼が舞い込んできたことがきっかけで経営者になったので。
2つ目は、事業内容を大きく変える意思決定をしたことです。これまでの製造業での経験を活かし、Webサービスを立ち上げることにしました。ずっとハードウェア一本でやってきた会社だったので、Webサービスの道に明るい企業の助けを借りたいと思った時に、M&Aの構想を考え始めました。
大石:3Dプリンターを活用した、3D造形部品製造サービスです。立ち上げようと思ったきっかけは、受託している開発案件のリードタイムを縮めるために国産の3Dプリンターを導入したことです。機械がとても優秀で、3Dプリンターを使えば光の速さで出来上がる故に、使っていない時間が多くありました。
せっかく買ったのにもったいないなと思い、地元の製造業で3Dプリンターを使ってみたいという企業からの依頼を引き受けるようになったんです。
大石:そうですね。しかし、そのために見積もりを取るのがとても大変でした。依頼する企業側としても、少しでも安く費用を抑えたいというニーズがあるため、何度もデータを変更して見積もりを依頼されていました。その度に自分でCADを開いて見積もりを書いていたので、かなり時間を取られていましたね。
そこで、Webで自動で見積もりができて、自由に受発注できるようなシステムが作れないかと考えたんです。そこで立ち上げたのが「MORION」というサービスです。
高専出身の起業家を支援!互いの強みを活かして事業を伸ばす
横山:2024年の1月頭に、長岡で大石さんとご飯に行ったんですよ。その時にお互いの会社の現状について話をして、今後一緒に進めていく未来が見えたので具体的な話を進めていきました。プロッセルもちょうど、高専出身の起業家が立ち上げた事業に参画しM&Aを推進していきたいと考えていたタイミングでした。
横山:MORIONという新サービスにすごく可能性を感じています。「世の中にないものは自分で作っちゃえ」というマインドが魅力的ですね。ビッグストーン自身が困っていたことを解決するために、自ら新サービスを考えてローンチしたという点がすごくいいなと。ものづくりに対する想いを感じましたし、高専出身らしいなと思いましたね。笑
横山:当社はソフトウェアのエンジニアが多く、これまでeラーニングや新卒のスカウトサービスなどを開発してきました。一方でハードウェアに関しては全く知見がありませんでした。そのため、高専生のキャリア支援をする中で、機械系の学生に対してサポートすることが難しかったんです。ビッグストーンと組むことで、ハードウェアを学びたい学生の受け皿が増えるので、既存のビジネスとの相性もすごく良いなと思いました。
横山:高専出身者はものづくりへの熱量は高いのですが、それをどうマーケットで広げていくかというマーケティングや広報の知見が乏しいです。新しいサービスを創ることは得意なので、その後の成長支援をプロッセルが手伝うというようなサイクルを生み出していきたいと構想しています。