コロナの打撃があるのに株価が堅調な会社をどうみるか(ディズニーランドの例)
企業業績について、株式市場の見方とは全く異なるトーンの報道が行われることがあります。「東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドの先行きが見通せない。」とし、今期の黒転は可能との見方を紹介しつつ、コスト抑制など懸念が多いとしたのは今朝の日経報道です。
実はオリエンタルランド(OLC)の株価は「先行きが見通せない」というような水準には全くなっておらず、OLCは値上げができる会社だとして、至極健全な成長を織り込んでいます。
もちろん、足元ではコロナの打撃は深刻です。入園客数は感染状況次第、会社は「合理的な業績予想を示すことは非常に困難」だとし、決算短信でも業績予想の公表を控えました。
しかし株価はコロナ前の水準より1割ほど高く、相場全体が約15%上昇していることを考えても、コロナで大打撃を受けるタイプの会社にしては堅調に推移しています。
株価は落としていないが、業績は急落して大赤字。黒字回復できても当面の利益は恐らく低水準。このような会社が実はいま一定数あるのですが、株価の割高割安はどのように判断すればよいのでしょう?
コロナによる業績打撃の度合い
さきに、OLCのコロナ影響を業績面からざっと振り返っておきましょう。
売上高は20.3期に△12%減、21.3期には△63%減となり、コロナ前の19.3期5260億円に対して1/3弱に相当する1710億円にまで落ち込みました。純利益は史上最高益だった19.3期903億円に対し、21.3期は△542億円の赤字です。
こちらは直近2年度の四半期業績です。20.3期は東京ディズニーリゾート35周年イベントの翌年にあたるため、年初からかなりの減収減益が予想されていました。第1四半期からその傾向は明らかでしたが、コロナ感染が始まった第4四半期には売上高が△41%減と急落していることが分かります。
一過性要因はいずれなくなるものと考える
コロナについてよく言われるのは、根本的には数年で過ぎ去るはずだということです。金融セクターを含むバランスシートを大きく毀損させ、長期にわたり影響を及ぼす金融危機のような現象とは異なるとする見方です。
言うまでもなく人の生死に関わる問題ですし、経済影響は甚大です。航空や旅行、不動産業界などにも一部構造変化の可能性があるとされる一方、テック業界の中には業績を大きく伸ばす分野があります。
ただ、これら構造的に影響を受ける業界を除いては、いずれコロナ前の環境に戻ると考えることができるわけです。昨年3月末の相場急落が極めて短期で収束し、その後の相場が強含んできたのもそうした見方が台頭しているからだと言えるでしょう。
反動減と反動増、そして長期成長率へ
投資判断の第一歩はいまの株価がどのような将来を織り込んでいるか、すなわち織込み成長率について考えること。一時的な状況にすぎないなら、長期的構造的な影響はないはずです。
もちろん、実際に起きたことをなかったことにするわけにはいかず、失われたキャッシュフローは現実です。それらはバランスシートを通じて反映されるでしょう。
そのうえで、今後の見通しについては、一時的に押し下げられた業績を起点とするのではなく、「通常の業績年」を起点として考えるとよいわけです。
なお、コロナの収束に伴う業績回復は、押し下げられていた需要の戻り局面で一時的にハイペースで進行するものと思われます。分野によっては押し留められていた需要がバブルを生み、反動減ならぬ反動増を引き起こすでしょう。
反動増もやがて落ち着き、「通常状態」に戻ったあとは、長期成長率に落ち着いていく。このように、一時的な業績変化があると、その後はいくつかのフェーズの切り替えがあると考えられるのです。
proproのイレギュラー決算設定機能
さて、proproはこのような状況に対応する機能を備えています。一時的な業績のブレに対して適用する「イレギュラー決算設定」です。
オリエンタルランドを例にとりましょう。proproでは、有料機能を無料で使えるおためし利用にすすんで頂くと、業績チャートの右下にリンクが出てきます。
上の画面では、紫色で示される20.3期~22.3期までの3年度をイレギュラー決算に設定しています。
画面中央右寄りに表示されている+7.5%は、今の株価が織り込む長期の売上成長率ですが、これはイレギュラー決算が始まる前の19.3期を起点とした成長率です。
織込み成長率は通常、直近年度を起点に計算されます。イレギュラー決算を設定せず、コロナで低く押し下げられた21.3期を起点とした成長率は構造的な長期成長率とはいえません。
将来期間は定率で伸び続ける前提がとられます。いまの株価が織り込む成長率として、コロナによる落ち込みが大きければ大きいほど、高い値が算出されてしまいます。(実際、+23%という計算になり、過去の成長率とはかなりの食い違いを見せることになります)
イレギュラー決算を設定すれば、一旦はハイペースで正常化し、そこからは長期成長率でという具合に、より正確な計算ができるのです。
イレギュラー決算には将来期間を含めて設定することが可能です。上の例では現在進行中の22.3期までをイレギュラー決算とし、正常化は23.3期からという設定をしています。
これにより、21.3期から23.3期までの2ヶ年度は、その後の期間とは異なる、反動期特有の高い成長率を享受する年度という扱いになっています。表示される+7.5%は、その2年度以降の構造的な成長率として今の株価が織り込んでいる値です。
良い会社を安く買う。割安割高の判断は、まず織込み成長率と自分の予想を比べることから始めましょう。織込み成長率について「こんな低いわけがないだろう」と思えたら、チャンスです。(いろんな会社の織込みについてはこちらの記事も参考に)
いかがでしょうか?ありきたりなツールとは違い、proproは非常に実用的な機能を備えています。
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