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膝関節伸展可動域制限に対する治療展開 理学療法士
今回は膝関節伸展可動域制限に対する考え方や方向性についてまとめていきます。
膝関節は脛骨大腿関節と膝蓋大腿関節から構成され、大腿骨と脛骨、膝蓋骨の骨運動の組み合わせで起こります。
脛骨大腿関節運動では骨形態の特徴から関節面形状が異なり(凹凸の関係の違い)、内側の関節面と外側の関節面の運動量に差があり、内側を支点に外側が大きく動くような特徴があり、そのため矢状面運動には必ず水平面運動が組み合わされます。
これはスクリューホームムーブメントというものです。
そのため、関節内運動を評価する際は膝蓋骨と脛骨粗面の位置関係を把握しながら、回旋障害の有無を把握することが必要となります。
そして、回旋障害があった場合に考慮すべきことは膝関節アライメント不良は「骨運動の結果である可能性」「周囲組織の滑走不全である可能性」ということです。
骨運動の結果である可能性
脛骨大腿関節は大腿骨と脛骨の骨運動の結果であり、長管骨は近位と遠位の回転運動が必要となります。
そのため、大腿骨近位部での運動制限は必ず、大腿遠位部の運動制限に影響し、下腿も同様のことが考えられます。
つまり、股関節や足関節で回旋制限が起こっている場合は少なからず脛骨大腿関節アライメントや運動に影響するということが解釈として必要です。
評価は膝関節のみならず、隣接関節やそれに影響するものを診ることがかなり重要です。
脛骨の過外旋がなぜ起こっているのかを考えずに下腿を内旋誘導することの恐ろしさがわかります。
また、関節内運動を引き出す際も、まずは伸展位ではなく、軽度屈曲位など関節の副運動が出やすいポジションで回旋アライメント不良の修正をすることが安全に治療するために必要であると思います。
周囲組織の滑走不全である可能性
骨運動によって、隣接部位の影響が少ないことが予測されたにも関わらず、脛骨大腿関節に制限やアライメント不良が残存している場合に周囲組織の影響を考えます。
つまり、骨運動が初めに把握し、その次に組織の評価に移るイメージです。
伸展可動域では脛骨や大腿骨の回旋制限に加えて、膝蓋骨の運動制限も組織滑走不全が影響している場合があります。
それぞれ骨運動に伴い、筋や組織の過緊張が変わらないことや圧痛所見を評価しながらターゲットを決めることが必要です。
大腿遠位部の回旋制限では鵞足筋や腓腹筋、ハムストリングス、腸脛靭帯などの滑走不全
下腿近位部の回旋制限では鵞足部、腸脛靭帯などの滑走不全
膝蓋骨周囲では膝蓋下脂肪体、膝蓋上嚢、支帯などの滑走不全
がそれぞれ伸展制限の因子となりやすい印象があります。
また、膝蓋骨は大腿骨上に存在するため、大腿骨の位置関係によりポジションを既定される要素があります。
そのため、膝蓋大腿関節のアライメントや運動を評価する前に脛骨大腿関節のアライメントや運動を評価する順番が良いと思います。
私は上記の2点を踏まえることで治療の優先順位や進め方が見えてくると考えています。
ご意見ありましたらコメントしていただければと思います。
※この内容は個人の解釈がありますので参考程度にお願いします。