広報の未来:PRMが変える、広報の役割・ポジション
近年、ビジネスの世界では、あらゆるステークホルダーとの関係性の構築が重視されています。その中で、広報の役割が大きく変わりつつあります。広報はもはや単なる情報発信の手段に留まらず、「経営機能」として組織全体に影響を及ぼす重要な役割を果たしています。ここでは、PRM(Public Relations Management)という新たな概念を取り入れ、企業がどのようにしてメディアとの関係を革新しているかを掘り下げていきます。
1. PRMとは何か?
「PRM」とはPublic Relations Managementの略で、ITテクノロジーを活用して記者の経歴や連絡先、所属部署や担当業界、執筆記事やコンタクト履歴等などのデータを蓄積し、自社とメディアの関係性を管理する概念です。
記者との関係性を管理することで、記者の情報ニーズを把握した上でコミュニケーションを取ることが可能となるため、自社とメディアとの良好な関係を構築・促進することが可能となり、結果、広報活動を自社の認知獲得や営業・採用活動の成果向上につなげることができます。
2. PRMの国内外での展開
「経営機能としての広報・PR」への意識が高い米国では、広報部のみならずマーケティングや事業推進、営業などがPRMを導入し、メディアとの関係性構築を戦略的に実行する企業が増えており、主要ツールとしてPRM大手の米国Mack Ruck社(https://muckrack.com/)が急成長しています。ファイザーやVISA、FedExなど多くのグローバル企業が導入し、1億8000万ドル(約250億円)の資金調達を完了しています。
3.広報の経営機能としての役割
広報業務の高度化、複雑化を受け2023年6月、日本広報学会(https://www.jsccs.jp/info/news/post-4.html)が約30年ぶりに広報の定義を刷新しました。新たな定義は【組織や個人が、目的達成や課題解決のために、多様なステークホルダーとの双方向コミュニケーションによって、社会的に望ましい関係を構築・維持する経営機能である】です。 定義の主な注目点としては、広報を「経営機能」と位置付けて広報部門だけでなく経営者を含めた組織全体に関わる役割が担うものとしたことです。
経営機能とは、継続的・計画的に事業を遂行するために必要な役割であり、今後広報は、認知獲得や売上増・採用計画の実現・信頼醸成など、経営目標達成に必要な経営機能として「人事機能・マーケティング機能・販売機能・財務機能」などと並ぶ重要な役割を担うことが求められます。
4.広報部門でのDX化の遅れ
経営機能において「各ターゲットとの関係性作り」に重きをおいた取り組みとしてITツールの導入が加速しています。マーケティング機能においては「顧客との関係性」管理のためのCRMツール(Customer Relationship Management:SalesforceやHubspot、キントーンなど)、人事・採用機能においては「求職者との関係性」管理のためのATSツール(Applicant Tracking System:ハーモスやジョブカンなど)を活用したデータ管理のもと、ターゲットとのコンタクト履歴を常に更新した上でターゲットのニーズを把握、ベストなタイミングで提案を行うことで双方向コミュニケーションがうまれ良好な関係づくりを実現します。それが他社との差別化となり売上や採用につながります。
一方、広報においては、ステークホルダーとの橋渡しを担う記者との良好な関係づくりが重要となりますが、記者情報をまとめた「メディアリスト」をそもそも作成していない、または名刺管理やエクセル管理が一般的で更新性が低い、さらにはPR代行会社に任せているため自社のメディアリレーションの実態がよく分からないなど、記者データを管理するための最適な方法が無く企業によって管理レベルも様々な現状です。記者からの問い合わせや取材記録などコンタクトした際の履歴管理が中途半端で、結果として関係づくりに活かせないケースが一般的で、「メディアリレーションの管理」「メディアとの関係構築」は広報活動において常に上位に挙がる課題です。
5.メディアリストの更新は後回しの現状
メディアリスト化しても、記者の情報ニーズを把握するレベルまで運用ができておらず、記者とのコミュニケーションはプレスリリースを一斉配信するだけの、一方通行型のコミュニケーションに終始している企業が多いのも現状です。このような中で「広報を経営機能として位置づける」ためには、記者との関係管理にITテクノロジーを活用し、コンタクト履歴が常に更新され、記者の情報ニーズを把握できる状態に引き上げる必要があります。
6.「PRONE」をPRMプラットフォームに
このような現状から、先行する海外同様に広報を経営機能として活用したい企業に向け、オンライン広報サービスPRONE(プロネ:https://prone.jp/ )上に、PRMメディアリスト機能をはじめとしたPRM関連の新機能を複数実装し、提供しています。国内においてPRMプラットフォームを提供するのは当社が初めてです。(自社調べ、2024年3月時点)
7.PRMメディアリストについて
記者の経歴やSNSの検索、過去の執筆記事から報道傾向の分析、効果的な情報提供やリリース配信、記者とのコンタクト履歴や関係性の一元管理、PRの効果測定などがオンライン上で完結でき、データに基づいた広報・PR活動が展開できる機能です。
データを元に抽出した記者の情報ニーズに合わせ、配信リストを作成し、メール提案ができます。
また、記者のSNS情報等ネット上に公開されているオープンデータをまとめて閲覧できる記者公開情報の提供も同時に開始します。これにより、記者とのつながりがなく、自社に記者情報がないユーザーでも、記者に直接アプローチするために必要な「経歴、過去記事、SNSなどの連絡先情報情報」をPRMメディアリスト内で閲覧できるため、記者との新たなつながりに活用できます。
約200名の記者情報が閲覧可能となり、今後も随時アップデートしていきます。
8.PRMメディアリストの機能紹介
(1).記者データの一元管理
自社に関係する記者データ(連絡先やSNSアカウント、記者とのコンタクト履歴や過去記事等)を入力し、閲覧できる機能です。記者に関する情報を細かく入力することやタグ付けするなど、記者との関係性を細かく管理することで、記者データを経営資産として活用できます。
(2).記者の情報ニーズに合わせた配信リストの作成
一元管理された記者データから抽出した個別記者毎の情報ニーズを元に、メール配信リストをセグメント化して管理することが可能です。これにより、記者の情報ニーズを踏まえた最適な提案ができます。
(3).メール配信
メール配信リストを元に、簡単にメールを配信できます。メール返信元の設定や配信時刻の予約設定も可能です。
(4).記者コンタクト入力・管理
記者とのやりとりや問い合わせ/取材依頼、記事化の有無などをフォームから簡単に入力できます。入力された情報は自動的に記者情報に紐づくため、記者との関係性が見える化され、良好な関係を構築しやすくなります。
(5).効果計測のためのダッシュボード
記者毎のメール開封状況やメール開封率が計測できます。また自社とつながりのある記者の人数や、メール配信件数、記者とのコンタクト数、取材/記事化件数など、広報活動数と実績数をリアルタイムに閲覧することが可能となります。取材/記事化などの結果だけでなく、広報活動自体が見える化されるため、広報担当者を評価することはもちろん、経営層に対してのフィードバックもしやすくなります。
(6).記者公開情報(今回発表した新コンテンツ)
記者のSNS情報等ネット上に公開されているオープンデータをまとめて閲覧できる「記者公開情報」の提供を開始します。これにより、記者とのつながりがない人でも、記者に直接アプローチするために必要な情報をPRMメディアリスト内で閲覧し、記者との新たなつながり作りに活用できます。
9.まとめと今後の展望
デジタル技術を駆使したPRMは、今後の広報活動における新たな標準となるでしょう。企業がメディアとの関係をより戦略的に管理することで、経営目標の達成に直接寄与することが期待されます。PRONEとしても、今後もPRMを通じて革新的な広報の可能性を追求し、企業の成長をサポートしていく考えです。
この記事を通じて、PRMの重要性とその機能について理解を深め、ビジネスにおける新たな広報戦略としての活用を検討していただければ幸いです。
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