【P+Bインタビュー】TapNow開発者・野間悠磨さん(後編)「これからのSNSに求められるものがわかってきた」
Twitterが突然仕様を変更したり「X」になったり、Metaが「Threads」をリリースして話題を呼んだり、かと思えばさまざまな新興SNSが台頭してきたり……今やSNSは群雄割拠の時代といっても過言ではありません。そんな中、日本発の新たなSNSとして世界中のZ世代から支持を集めている「TapNow(タップナウ)」をご存じでしょうか? これまで他のSNSが、世界中の人たちと繋がれることを謳って勢力を拡大してきたのに対し、TapNowは連絡先を知っている人同士でしか繋がれないクローズドなSNSとして注目されています。
今回は、TapNowを開発したスタートアップ、サンゴテクノロジーズ株式会社の代表取締役・野間悠磨さんにTapNowの特徴やZ世代に支持される理由などについてお話を伺いました。
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後編ではZ世代がTapNowをはじめとする新興SNSに求めているものや、自分と異なる世代のプロダクトを開発する時に野間さんが意識していることについてお届けします。
世代によってデジタル上での距離感への理解は異なる
―年齢が下がるにつれてデジタル上での距離感はどんどん縮まっている、というのはどういった時に感じますか?
野間:時代を遡ると例えばブログが流行ったころ、上の世代で「デジタル上の文字には温かみがない」とかいう人がいませんでしたか?
―いましたね。
野間:その後、ブログをもっと簡略化させたTwitterが出てきましたが、ブログ全盛期の世代からすると140文字だと短すぎて何を言っているかわからないし伝わらない、という人もいたと思います。さらにそれが進んでもう写真だけでいいとなり、Instagramが出てきて文字すらなくなりました。多分僕らミレニアル世代はその辺りまでは理解できるのですが、この次に新たに来たのは文字でも写真ですらもない位置情報系アプリ。位置情報をシェアするだけで勝手に自分の情報が伝わって便利だよね、という世代が到来しています。
―もうついていけないです。
野間:僕もついていけません。多分僕ら世代は「ストーカーみたいだ」という発想になるのですよ。これもさっき言った「温かみがない」と言い出す世代の話と一緒で。「Zenly」などZ世代にものすごくウケている位置情報系アプリは便利なのだとは思いますが、僕は便利よりも気持ち悪さが先行してしまいます。そういうギャップが世代ごとにあるということだと思います。それと同じで、TapNowのホーム画面に写真を共有し合うのも、僕たち世代は楽しさがよくわからなくても、若い世代からするとその距離感が楽しいのでしょう。
自分と違う世代に向けたプロダクトに、自分のニーズはいらない
―野間さんご自身がZ世代の感性に親和性があるからこういうアイデアが生まれたのかなと思ったのですが、そういうわけではないのですね。
野間:いや、いまだにやっぱり難しいと思うことのほうが多いです。だから新しい機能を考える時は、「自分だったらこれが便利、これが欲しい」という発想は捨てています。それをしないと、Z世代ではなくおじさん向けのサービスになってしまうのです。僕の場合、生活のほとんどの時間が仕事なので、僕にとって便利な機能というとビジネス寄りの機能になってしまいます。それは僕のニーズであってZ世代のニーズではありません。なので「自分のこれがやりたい」がZ世代には合わないことは意識しないといけないと思っています。僕が使いたいだけ、にならないように、あえて見方を変えています。
―なるほど。自分とは違う世代に向けた商品開発にも参考になる考え方です。ちなみにTapNowを通して、Z世代ならではの特徴としてどのようなことを感じますか?
野間:SNSに求めるものが変わってきているというのは感じます。僕たちミレニアル世代までが慣れ親しんだSNSは基本的に「自由」でした。何をしてもいいですよ、どんな使い方をしてもいいですよ、という世界観のもと、世界中の人がつながることができました。Z世代の子たちは、生まれた時からそういったサービスがあって慣れ親しんでいるので、インターネット上の「自由」は所与のもの。そのうえで他のSNSが流行るにはどのような要素がキーになるのかというと、「あえて制限がかけられている」というところだと思います。制限がある、つまりゲーム性があるSNSが流行るというのは1つあると思います。
―制限=ゲーム性。
野間:はい。ゲーム性を作ろうと思うと制限が絶対に必要になります。たとえば何回かペンが当たったら死んでしまう、このレベルに達成しないと次に進めない、というこれらは「制限」じゃないですか。だからこそゲーム性の楽しさが出てくるのです。いま流行っているSNSはそういったゲーム性を踏襲しています。
「BeReal」や「Bondee」はまさにそうですね。BeRealはアプリから毎日ランダムに突然通知が来て、その瞬間に自分が何をしているのかを写真に撮って2分以内に投稿する、というSNS。一方Bondeeは友達の人数制限があるSNSです。
―TapNOWもそういったゲーム性を盛り込んでいるのですか?
野間:はい。ホーム画面に送られてくる写真はスクエア(正方形)じゃないといけないとか、コメントができるのはここまでとか、そういうゲームを入れています。
―ありがとうございます。ほかにZ世代の傾向で気づくことはありますか。
野間:あとはやはりコロナの影響が大きかったと思います。コロナ禍のZ世代はリモートで家にいる時間が長く、外に出かけてもマスクをしていて変わり映えのない毎日を過ごしていたと思うのですよ。そうなると、リアルな日常を投稿し合えるようなSNSよりも、バーチャル上で繋がれるSNSやゲームをしながら音声を楽しむSNSが若い世代で流行っていたと思います。
一方、今ではもうコロナが明けて若い子たちも日常を取り戻しています。高校の友達同士で放課後教室に残ってワイワイ喋ったり、帰りにコンビニ寄ったりとか、僕らの時代と同じような日常を過ごすようになってきました。そうなると、バーチャル同士の繋がりではなくリアル上の繋がりや楽しみをSNSにも持ってくるようになってきていると感じます。
―今はまさにコロナ禍からもとの日常に戻ったちょうど切り替わりのところかもしれないですね。
野間:はい。このタイミングで、リアルをベースにしたアプリがすごく成長しています。BeRealは日本よりも先にアメリカで流行ったのですが、アメリカは日本よりもコロナが早くあけているじゃないですか。それは関係していると思うのですよね。あとはBondeeもこのタイミングで伸びたアプリの1つですが、Bondeeは繋がれる人数が20人と限られているので、その貴重な20人はリアルで仲の良い友達と繋がりたい、となると思うのですよ。
―そのタイミングで、TapNowの特徴は見事にZ世代のニーズをカバーしていると言えますね。今後について、実装を予定している新しい機能や別の新しいアプリ開発など、どのような構想がありますか。
野間:まず他のアプリを作るという考えは現時点ではなくTapNowに全集中していく予定で、機能開発の部分をもっと強化していきたいです。TapNowは近い人たちと遊べる居心地の良さが前面に出ているSNSですが、今ユーザーがどんどん増えてきている状態の中で、先ほどもお話ししたゲーム性を追加していったり、人が熱狂するような機能も考えています。
―具体的にはどのような機能か、教えていただけますか?
野間:この1年間SNSを開発して出てきた悩みや課題感について、世界中のいろいろな新興SNSが同じ悩みを抱えているということがわかりました。最たるものとして、投稿するネタのネタ切れ防止という課題があると思います。
たとえばBeRealはアプリから通知が来たら2分以内に今の自分の写真をシェアするSNSなので、何を投稿しよう? と悩む必要がありません。Instagramなど従来のSNSは、「私もフォロワーを集めたいな」か思ったらそのために投稿を続けないといけないので、「そんなに投稿する内容がない」とつまずいてしまう人がいっぱいいたはずです。一方、位置共有アプリとしてZ世代に支持された Zenlyは移動している状況を自動で送り続けるだけなので、ネタ切れはしないじゃないですか。
―投稿するネタを自分で探さなくても続けられるということですね。
野間:はい。ネタ切れ防止についてはほかにも、海外では「kiwi」というアプリが流行っています。これは日本にまだ入ってきていないのですが、音楽版BeRealともいわれており、SpotifyやAmazonMusicといった音楽アプリを連携させることで、自分が今この瞬間の直前に聴いていた音楽が投稿されるというものです。まさにネタを考えずに今の自分を投稿し続けられるアプリです。
―すごく理にかなっていますね。
野間:なので僕自身も、今後その部分をどうやって作り上げていくかにフォーカスして機能開発をしていきたいと思っています。
野間さんが考える、Z世代に支持されるこれからのSNS
多くの企業にとってXやInstagramなど従来のSNSは、世界中と繋がっていて多くの人に発信できるということが前提にあるゆえに宣伝活動やマーケティングに不可欠の存在になっていることでしょう。しかしSNSに求められるものが変わってきている中、新しいSNSをどう使いこなしていくか。Z世代の心を動かすサービスや商品開発を考える際、SNSの動向はこまめにチェックしていく必要がありそうです。
電通プロモーションプラスでは、Z世代をターゲットとしたプロモーションの企画・実施やZ世代との共創のサポートをおこなっております。お気軽にお問い合わせください。
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