第57回 “勝ちたい人”の心理とは…
以前にも書きましたが、とにかく誰にでも、どこででも、どんな状況でも、そこで“勝ちたい”という人がいます。
『一言多い人ってすごく損をしている。その一言を言った方は言ってやった感があって一時満足するだろうが、自分の価値を落とすだけ。どこで黙るか、その一言を言わないのが大人。』
これは漫画家の小池一夫さんの言葉です。
実はこれ、恥ずかしながら私にも大いに当てはまることでして、自戒も込めて、今回改めて書こうと思ったしだいです。
「勝ちたい人」と聞いて、思い浮かぶ言葉の一つは”承認欲求”ですが、これについては以前に書いていますので、もう一つ…いや他にも色々あるのですが、今回は”自己防衛本能”が働くということと、実はその「勝ちたい」の背後には”劣等感”があるということについて、書いてみようと思います。
例えば、いつも「勝ちたい」人が”劣等感”の持ち主で、そこにふれられることを極度に恐れている場合は、とにかく優位に立っておきたいという感情で会話をすすめます。そして、ふれられたくない部分を指摘される前に勝手に攻撃的になり、人を不快な思いにさせます。
とにかく身振り手振りが大げさだったり、こちらの言うことについては「知ってる知ってる!」を連発し、けっして自分には知らないことなどない、ここら辺のことはだいたい知っている、というような雰囲気で知識をひけらかします。でも、人から聞いた受け売りが多いのも「勝ちたい」人の特徴です。
ということは、人からの受け売りですから、それが事実かどうかは定かではなく、それについての詳しい内容を問いただしたりすると、まぁボロが出るわけです。
そこを見抜ける人が話し相手であるとき、その人のパーソナリティーによっては、始まった始まったと思いながらも「うんうん」と聞き流してくれる場合と、逆にあまりにも失礼で相手を怒らせてしまうと、反撃され、痛いところをつかれ、実は無知であることや、情報が不確かであることが露呈し、どんどん”劣等感”を刺激され、自ら傷を負うこともあります。
そうして横柄な態度を取っておきながら、他人が自分のことをどう思っているかを極度に気にします。本当に勝っている人、自信がある人というのは、他人のことを気にしません。でもこれは、他人を無視しているということではなく、人の評価を鑑みて、自分自身を客観視できるので、けっして感情的にはならないということです。
「ふ~ん、あの人は私のことをそう思っているのね」という感じです。
私は私であり、私でない。私という人を、別人格レベルの一人の人として認知しているという感覚かなと考えています。
そして日本人だけが持っているあれですよ。
「負けるが勝ち」
心理学の世界では知られているアルフレッド・アドラー、ジークムント・フロイト、メラニー・クライン、ハインツ・コートなどは、この日本人の心理は理解できないでしょうね。彼らの理論から考えると勝ったものは嫉妬され、嫌われ、負けたものは劣等感を抱き、傷つくということになります。多分、日本人以外はそうなのであろうと私は考えます。
「戦いに勝利し、平和を勝ち取る」と考える人種とは異なる精神性と文化を長く守ってきた私達日本人。私は状況によって、この「負けるが勝ち」を用いることで、よりよい人間関係を構築できると考えながら、日々様々な人々とコミュニケーションを重ねています。