【イベントレポート】第1回「意外と変われる霞が関大賞」を開催!発表内容と審査結果を一挙にご紹介
2022年5月29日、プロジェクトKは『第1回・意外と変われる霞が関大賞』ピッチイベントをリアルとオンラインのハイブリッドで開催し、河野太郎賞、小室淑恵賞、千正康裕賞、そしてグランプリを贈りました。またオブザーバーとして人事院総裁の川本裕子氏もご臨席いただいた中、ノウハウ共有とともに活発な議論がなされました。本記事では栄えある各賞を受賞したチームのみなさんとそのピッチ内容をご紹介します。受賞チームのみなさん、改めておめでとうございます!!
グランプリ(大賞):
河野太郎賞:
小室淑恵賞:
千正康裕賞:
全8チームのピッチスライド全公開!
登壇された8チームの発表内容と審査員コメントは以下の通りです。
※当日使用したパワーポイント資料を一部改変しPDF化して掲載しています。
【Entry No.1】 農林水産省大臣官房秘書課
「農林水産省の組織力 フル発揮に向けて」
トップバッターは農林水産省。同省では新卒志望者の減少と離職者の増加に直面する中、令和3年度の内定者は事務官・技官ともに約2割が中途採用者、一般職も年間約100人の中途採用を実施するなど、中途採用に力を入れた結果が表れてきているとのことです。その理由として、「中途採用者がいることが当たり前(お客様扱いしない・されない)」という環境を目指し、新卒・中途問わず一人ひとりに人事配置の意図を伝え議論することを始めるとともに、心理的安全性確保のための定期的な人事面談を実施することなど多様な経験・機会を増やすことなどが紹介されました。
審査員の河野氏からは「新卒が採れなくなった結果中途採用に力を入れているということでは?」という鋭い質問に対し、登壇チームからは、「省内に新しい考え方を取り入れていく上で中途採用が貢献してくれると考えており、新卒も中途も力を入れている」と意図と熱意を説明。小室氏からは「人事異動の目的を伝えているというのは素晴らしい。実は難しい取組だが非常に重要」とのエールも送られました。
【Entry No.2】 文部科学省職員有志
「意外と変われ『て』る!ボトムアップで切り拓く文部科学省改革」
続く文部科学省では、有志と担当課が双方の強み・弱みを補完する形でタッグを組んだ事例として、国会対応における63問全問24時前対応にも繋がったSlack/boxの省内伝道活動や、立場不問・サポート体制付きの「提案型政策形成」を紹介。若手と現場を掛け合わせた取組として、企業等と連携した職員持ち込み企画を公式研修とする「Driving MEXT Project(ドラメク)」、国と現場の知見のエクスチェンジを企図した中央省庁初のNPO派遣などを紹介し、内外から組織を活性化する改革状況をアピールしました。
審査員の千正氏からは、職員のやる気を引き出す取組を評価しつつ、省内提案のあった政策を組織が受け取りやすくする仕掛けについて質問が挙がると、登壇チームからは幹部も直接審査に関わったことや、提案者への併任発令もありえる旨の説明がありました。小室氏からクラウドツールの導入に際してどう内部を説得したのか質問がなされると、情報システム部門の前向きな姿勢も背景にあったことや、メンバーのノウハウ共有の努力が明らかになりました。
【Entry No.3】統計データ利活用センター一同(総務省)
「統計データ利活用センターにおける業務見直しのチャレンジ」
和歌山県に拠点を構える統計データ利活用センターは、執務室のフリーアドレス化と座席表の自動生成、集中作業ブースやカフェスペースの設置、帳票類の廃止、単純作業の効率化、マクロ等の勉強会などの取組えを紹介。それとともに、そうした改革成功の背景には、一気に100点を目指すあまりエラーを生じさせるより、まずは確実な60点を目指し、残った未改善部分を60点まで引き上げることを繰り返す「60点主義」や、マシュマロチャレンジによるチームビルディングなどもあることをアピールしました。
河野氏から「テレワークが進んでいるのだとしたら、なぜ和歌山に拠点を構える必要があるのか」と質問があると、登壇チームからは、ワーケーションのように業後は東京ではできないことを楽しんでいる職員が多いことや、現地採用が地域の雇用創出にも貢献していることを紹介。また他の審査員との質疑応答では、ビジョンの共有や失敗の許容を通して「必要のない業務をやめる」ということが実現できていることや、予算のやりくりを工夫してオフィス改革を行ったことなども明らかになりました。
【Entry No.4】ソトナカプロジェクト(有志)
「中途採用をきっかけに多様な人材が新しい社会を創り出す霞が関へ」
霞が関外部出身の官僚を中心とした有志団体「ソトナカプロジェクト」は、中途採用人材の活躍を促進すべく、内閣人事局・人事院、各府省庁の人事課・秘書課への提言と実施サポートを行うことを紹介。外部出身者へのアンケートや、民間企業や有識者などへのヒアリング、関係部署との協議を重ねながら、提言では中途採用活用のレベルを3つのステージに分け、各府省庁の実情に即して実践できるロードマップを示しました。
審査員の千正氏は、「中途採用者は国にしかできない仕事に誇りを持っている一方、入省後のサポートやキャリアへの不安を感じている」など当事者としての経験をベースに提言を策定している点を評価しつつ、今後取り組みたい施策を質問。登壇メンバーからは6月27日にコミュニティづくりを兼ねた勉強会を開催予定の旨も説明がありました。また外部出身人材がプロパー職員より低い年次に換算される仕組みの問題点を河野氏と確認しつつ、最終的には年次という概念自体を撤廃すべきという考え方を示しました。
【Entry No.5】第ゼロセクター(経済産業省・有志)
「自らの想いを起点に政策立案を行う実践の入り口 第ゼロセクター」
セクターを横断して共創し社会変革に取り組むコミュニティ「第ゼロセクター」は、産官学民様の々な立場の人々が本音を対等にぶつけ合い、現状の政策の修正ではなくゼロベースで理想のあり方を議論している活動を紹介。省庁や自治体、大企業、NPO、スタートアップなどから30名が3ヶ月にわたってアイデアを磨いていったインキュベーションプログラム(第1期)や、コラボレーションパートナーと出会うセッションを通して、新産業創出の実証実験など複数のプロジェクトが生まれたことをアピールしました。
審査員の小室氏は、外と繋がれない、成長したくても成長できないということが離職の大きな要因になっていることに言及。登壇メンバーからは「現状の忙しさから新しいアクションができないのが課題と認識している。まずはプラスアルファでやろうとしている方々を応援することに焦点を当てている」と趣旨の解説がありました。河野氏からの「総務省の問題もあり官民交流に制約もあるが、どう乗り越えているか」との質問には、「利益相反はNG。情報管理を徹底している」と応じました。
【Entry No.6】パブ☆スタ企画チーム(経済産業省・3年目有志職員)
「霞が関に閉じない政策協創への挑戦」
続く登壇チームは、スタートアップエコシステムと行政を接続させるべく官民対話・共創イベントを開催している「パブ☆スタ」のみなさん。「創薬ベンチャーの資金不足」をテーマに、経産省、スタートアップのCFO、VC、製薬大手企業をパネリストに300人を超える参加者が集った回をはじめ、これまでに3回トークイベントを開催してきたそうです。スタートアップ側の「行政が何を考えているのか分かった」など参加者の声を紹介しつつ、「ワカモノ」を中心に日本の未来を共創する仕組みを創っていきたいとアピールしました。
審査員の小室氏は、同チームの集客力を評価しつつ、「外では話が通じるのに、中は通じないという憤りの力を梃子に、中を変えることを今後の活動に追加していただきたい」とエールを送りました。一方千正氏は「行政はどうしても客(国民)と遠いので、コミュニケーションの場は重要。ただ、その先の広がりも大事で、実例はあるか」と質問。登壇チームは「これまでオープンな場で行ってきたが、クローズドな場の提供など、より効果的に協創を生み出すための仕組みづくりも行なっていきたい」と意欲を示しました。
【Entry No.7】国土交通省働き方改革推進室及び各局
「変えたい!国土交通省におけるワークスタイル改革」
続いては、国土交通省。同省は本省に30弱もの部局があり、業務内容も風土も意識も異なるという実情を踏まえて改革を進めてきたそうです。昨年度行った試みの一つが「コンサルによる伴走支援」。各部局の「業務改善計画」や「職員アンケート」を基に外部コンサルと課題等をヒアリング・議論し、実行への伴走支援を実施したとのこと。もう一つが「オフィス改革の支援」。改善案をコンペで募集し、採択部局をモデルとして2案採用したことを紹介しました。
「オフィス改革の具体的な成果はあるか」という河野氏からの質問に対しては、実施後のアンケートですべてのスコアが改善しており、上司にすぐ報告しやすくなったなど具体的な業務改善に繋がったことをアピールしました。小室氏からはコンペ形式でオフィス改革を行ったことを評価するコメントも出ました。また千正氏からは「今後規模拡大のためには予算要求が必要だが、組織のパフォーマンスや世の中への効果を示す材料があるか」と問われ、登壇チームは数値を示していくことで改革を推進していく意気込みを示しました。
【Entry No.8】環境省職員有志
「環境省の働き方改革〜多様なアプローチで意外と変われる?〜」
ラストは環境省有志チーム。オンラインでのピッチとなりました。同省は2020年に大臣直属となる「選択と集中」実行本部を設置し、トップダウンとボトムアップの融合により「働き方改革ランチセミナー」「管理職向けマネジメント研修」「管理職の評価基準の見直し」「オフィス改革」「20%ルール導入」「メンター制度」「大臣自ら育児休暇の取得」「外部アドバイザーの導入」「業務改革室の設置」「国会対応改革」「省内公募制」など多種多様な取組を実践してきたそうです。
審査員の河野氏からの「大臣が変わると改革が停滞したりする。変わっても取り組みが変わらないことが大事」という指摘を受けて、「大臣交代の引き継ぎの際にもオンラインの活用を始めとする働き方改革など「選択と集中」の項目が入り、施策を続けられている」ということもアピールしていました。また小室氏や千正氏とのやり取りの中で、「財務省や法制局は変わってきていて、最後が国会。若い議員はオンライン化や働き方改革の意識が高いため、そういった方から年次が上の方にも実践を広げてほしい。また、地方議会の方が進んでいる場合もあり、国会改革の参考としていただきたい」という想いを明かしました。最近も、国会の環境委員会ではデジタル化が合意されるなど、ぜひ国会全体に波及してほしいところです。
それぞれの創意工夫が光った各受賞取組
グランプリに選ばれたのは文部科学省の取組(Entry No.2)。民間企業では導入が進んでおり海外の政府機関でも使用されているデジタルツールが、日本の役所ではなかなか通らないという実情がある中、創意工夫次第で導入できることを証明している点などが評価されました。
同取組は、審査員賞の一つである河野太郎賞とのダブル受賞にもなりました。
2つ目の審査員賞である小室淑恵賞を獲得したのは、統計データ利活用センターの取組でした。小室氏は「残業をしないために効率化を徹底している。やりがいを持てる取組を業務に乗せていくという発想ではなく、今ある業務を削っていることが素晴らしい」と高く評価。
プロトタイプでは完璧を目指さず、まずは6割の完成度を目指す「60点主義」も評価ポイントとなりました。
3つ目の審査員賞である千正康裕賞は、ソトナカプロジェクトの取組に贈られました。同チームは、社会人歴が10年目であったとしても、霞が関に転職した際の年次では10年目とは扱われないこともあるとして、中途採用者向けに行ったアンケートに基づき「むなしさを感じている職員もいる」と紹介しました。そうした実情がある中で、千正氏は「外から来た人たちが、(職務自体は)やりがいがある仕事だと中から発信することは、中途採用の活性化につながる」と評価しました。
今回オブザーバーとして参加してくださった川本氏からは、参考にさせていただきたい取組も多く、勇気と情熱と知恵でますますこういった取組を推進していってほしいと応援の言葉をいただきました。加えて、「リーダーはルールの中でベストを尽くす人というよりは、ルールを変えていく人。発表された皆さんがきっとそうであるとともに、私自身も私の立場で尽力していきたい」との決意も述べられました。
イベント後の懇親会でも熱気はやまず、Tipsの共有や新たな仲間を見つける場に
イベント終了後の懇親会では、一部審査員の方も残っていただき、限られた時間の中ではできなかった審査員陣とのより突っ込んだ会話や、登壇チーム間の交流もなされました。
レポート後記:「早く行くなら一人で行け。遠くへ行くならみんなで行け。」
ご存じの人もいるかもしれませんが、アフリカには「早く行くなら一人で行け。遠くへ行くならみんなで行け。」という諺があるそうです。今回エントリーいただいた全チームの取組と、このイベントでの出会いは、まさしくそれを体現しているように思いました。いきなり霞が関全体でやろうとすると中々実現できないことを、まず小さな単位で実践したことが、クイックな(と言っても民間からするとまだまだですが)実装に繋がったことは明白でしたし、“同志”がこのイベントに集ったことで生まれた「そうやって組織を通したんですね!ぜひ参考にさせてください」「実はこういう課題があって、今度話せませんか」といった熱意と熱意の出会いは、より大きな変革を予感させます。
アワードという特性上、賞を受賞するチームとそうでないチームに分かれてしまいますが、どのチームにも創意工夫と熱意がありました。業務時間外の時間でわざわざ登壇し発表しててくださったこと自体が、それを証明していると思います。
今回複数のメディア関係者の方々にも取材にお越しいただきました。その発信による仲間の輪の拡大や、より“遠くへ行く”改革の拡大にも期待したいところです。もちろん、本イベントを主催したプロジェクトKとしても、精一杯バックアップしていきたいと考えています。
【Special Thanks!】
一般社団法人官民共創HUB(会場提供)
『Publingual』(広報支援)
株式会社スタディーズ(デザイン支援、物品協賛)
(文責:プロジェクトKメンバー 榊原)
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