小説の題名の決め方

 最近、題名に悩む作家志望者の方を良く見かけます。

 小説の題名。小説を書く人はみんな悩みますよね?僕も現在進行形で悩んでいます。

 僕自身これで合ってるかどうかはわからないんですが、見聞きしたり、自分で考えたりしたやり方があるので、一応共有しておきます。思考のとっかかりにでもなったらと思います。

 ここで紹介するやり方は大きく分けて2種類。一つは「キャッチコピーをそのまま題名にする」というもので、もう一つは「圧縮して詩的な題名にする」というものになります。


キャッチコピーをそのまま題名にする

 ネット小説の台頭で、急速に広がったやり方で、現在「小説家になろう」などの小説投稿サイトを開くと、大部分がこの方式をとっています。メリットは題名を見ただけで、ある程度内容を推測できることでしょう。
 デメリットは題名が長くなる傾向があることと、一部にアンチがいることでしょうか。

 このやり方は今や主流と言っても過言ではないんですが、こうなったのには理由があります。

 すでに実績があってファンが多数ついてるなら話は別ですが、ネット小説で読者に選ばれるためには、何万、何十万もの作品の中から選んでもらう必要があります。もちろん、読者はすべての小説に目を通して、良い作品を選んでくれるわけでありません。

 そして作者が読者にアピールできる場というのは、さほど多くありません。何のコネもない初期状態の作家の場合、チャンスは新着情報に掲載される数十分だけです。しかも表示されるのはタイトルと紹介文の触り部分のみ。この一瞬で読者を獲得できなければ、どんなに良い作品だろうと埋没したままになります。

 ここで目立つためには、タイトルを目立たせる以外に手段がないんですね。これがネット小説でタイトルが長くなる要因です。

 ただ、アンチなろうな方々には、「タイトル長すぎ」や「なろう小説キライ」とか言われることがあったりなかったりします。ただ、世の広告の大半で使われている技術を内包しているものでもあります。あんまりバカにすると痛い目を見るので、ここの読者の人は注意しましょう。

 さて、このタイトルの作り方は、まずプロットの中に、その作品を端的に説明するコンセプトを含めて作ります。広告業界では「一行タイトル」「一行コンセプト」、作家界隈では「ログライン」なんて言い方をする場合もあるでしょうか。
 この手法を採用した場合、タイトルで予備知識を得た読者が読み始めることになりますので、ストーリーとの連動性が重要になります。プロット段階からコンセプトをはっきりさせておかないと、タイトルと内容がズレて「タイトル詐欺!」とか言われかねませんので注意しましょう。

 そこから先は、そのコンセプトを意識してタイトルを決めます。世間にはコピーライターって職業の人がいて、キャッチコピーに関する本が何百冊も出版されていますので、そのあたりを参考にするかもよいかもしれませんね。

 この手法で意識すべきタイトルの役割は、読者の興味を引く事です。タイトルに謎が残っても、少しでも読者の心に爪痕を残せれば勝ちです。

 ですが、あまりに長すぎて、トップページの表示文字数を超えてしまうとそれ以降の文字列に意味はありません。クリックしてもらえたなら、あとはあらすじの領分です。

 ブームとして長いタイトルがもてはやされていますが、なろうでも表示文字数が溢れているタイトルは役割を果たしていない可能性を感じます。
 製本された背表紙でも、長すぎて文字が小さくなったら、可読性が下がる可能性もあるでしょうか。

 ブームに流されず、長いと何が、どう有利なのか、ちゃんと考えてから良い落としどころを考えてくださいね。

 ちなみに最近はAI診断とか便利なものがあって、D判定からB判定にタイトルを変えると、ホントにアクセスが3~4倍程度増えました。すげー。


圧縮して詩的な題名にする

 こちらは割と伝統的な手法でしょうか。

 俳句や短歌なんかは、不要な描写を極限まで削ぎ落として抽象化して、雰囲気だけ伝える技法ですが、同じような事をタイトルに適用するとこちらのタイトルになります。

 メリットは受け入れてもらえる層が広くなること。デメリットは作品や作者に実績がないと、興味を持ってもらうのが至難というあたりでしょうか。

 世の文芸小説至上主義者や古いラノベ読者は、なろう的作品を敬遠して、製本された作品を至高と考える節があり、逆になろう系作品を読み慣れている人はさほど抵抗を持たないので、読者が確実に目を通してくれる局面、例えば公募などではなろう系の気配がないこちらが良いかもしれません。

 作り方は、一行コンセプトをさらにそぎ落とす方法と、その作品の要素を付箋に書いて並べて、そこから発想する言葉をタイトルにする、などがありますね。

 目に引っかかるタイトルというのは、読んだ瞬間情景が浮かぶものや、違和感が残るものです。情景に関しては俳句や短歌に近いので僕には解説できませんが、違和感があるというのは、あえて反対の単語を並べたり、普段は絶対組み合わせない言葉を並べるイメージでしょうか。

 理想は読んだ瞬間に読者を共感させれたら良いんでしょうが、よりセンスの影響が強くなる気がします。短歌や俳句を作るのが上手な人はこういうタイトルを作るのもうまい気がしますね。先入観かもしれませんが。


紹介した方法を複合させて題名にする

 さっき紹介した方法を複合させて題名にするパターンです。

『圧縮系題名 ~キャッチコピー的副題~』

 みたいな感じですね。きっと作者さんたちも葛藤しているのでしょう。こういう形をとる作品もけっこう多くなっています。良いとこ取りができたら良いんですけどね。



 とまぁ、今回は題名についてでした。僕の好みとしては、作品由来に完結した題名ではなく、読者も世界に巻き込んだタイトルが強いんではないかと思うんですが、そのあたりはまだフワフワしたイメージで言葉にはできてません。作品のコンセプトと読者の立ち位置を、ニュアンスで包んだ題名、そんな題名を目指して、日々修行中です。

 みなさんも一緒にがんばりましょう!