在宅医療における多職種連携「これからの情報共有とこの地域の可能性」掛川東病院主催[イベントレポート]
2024年11月21日に医療法人社団 綾和会 掛川東病院 院長であり、ハタフレ認定アドバイザーの宮地 紘樹(みやち ひろき)さんが「多職種連携会さてつ」を開催されました。多職種連携会さてつは掛川東病院が主催する会で、毎月オンラインで開催されています。地域のつながりや連携によって、医療介護の専門性の高いサービスを提供していくのみならず、皆で支え合う文化を作っていこうという想いで活動されています。
第62回の今回は、「これからの情報共有とこの地域の可能性」をテーマに、令和6年度診療報酬改定で新設された在宅医療情報連携について、地域での可能性を探りました。掛川東病院の院長でもある宮地さんは、「医療のDXをどう進めていくのか」そして「チャットツールを実際にどう使ってるか」などについてお話くださいました。その連携会の様子をお届けします。
医療のDXで変わる未来
令和6年度の資料報酬改定で、医療のDX推進が前面に打ち出されました。すでにマイナ保険証の対応、オンライン資格確認システムの導入などを進めている方も多いでしょう。
カルテ情報の共有によりどの医療機関でも患者情報を適切に収集できるようになります。すでに一部の自治体では救急車で運ばれたときにマイナ保険証からその方の情報を取得できるようになっています。また、予診表やワクチンの接種券がデジタル化され、郵送を待つ必要もなくなるでしょう。
一方で、この診療報酬改定では、質の高い在宅医療訪問看護の確保もうたわれています。介護及び医療との連携が、ますます重要視されています。今後は、在宅医療に関わる、病院やクリニック、施設や、薬局、訪問看護などの事業所が連携して、利用者の情報を一元的に管理していく。それが、利用者の方の生活を支えるためには重要になると宮地さんは強調していました。
連携を密にとることで、医療の質が上がる
宮地さんの病院では、ICT(情報連携ツール)としてChatworkとシズケア*かけはしを使い、地域のおよそ70から80の事業所と連携をとっているそうです。Chatworkの良いところは、アプリがあってスマホで使いやすいところで、「タスク」という忘れないようにする機能が便利だとお話くださいました。シズケア*かけはしは、静岡県医師会が作ったシステムです。Chatworkもシズケア*かけはしも、通信のデータにセキュリティがかかっていて盗み見されないようになっているところも大切なポイントだと、宮地さんは話します。
続いて、実際にChatworkやシズケア*かけはしを看護師やケアマネジャーがどう使っているのか、その使い方を具体的に教えてくださいました。
例えば、急ぎではないけれど、医師に方針を決めてほしい内容はチャットを使って連絡しているそうです。メリットとしては、特に医師に連絡する場合は、チャットを使うことで連絡のハードルが下がり、ちょっとしたことでも連絡しようと報告の頻度が上がることだと言います。医者や看護師、ケアマネジャーや薬剤師も、情報が多ければ多いほど仕事の質が上がるので、報告の頻度が上がるのは好ましいと宮地さんは説明します。また、言ったことがすぐ伝わっていると、利用者の方の安心感にもつながる点もメリットの一つだそうです。
他に、薬剤師との連携の例では「今回この薬は少ないですが、たくさん余っているので出していません」といったことを申し送りできるようになったと宮地さんは話します。薬剤師が薬の量が間違っているのか、故意に減らしたのかを憶測する時間を減らすことができるので、業務の効率化にも一役買っているとのことでした。
チャットツールで効率的に医師と連携することが可能に
講演の中では、医療に関わるさまざまな職種の方がICTの活用術についてお話する動画も流されました。
在宅介護支援事業所 ケアマネジャーの活用方法
介護保険サービスの中で、医療系のサービスを利用する時には、主治医の先生から了解をいただいてからサービス開始になります。主治医の連絡票という書類があり、そちらの書類を使って利用者の方の状況やサービス導入のお願いを文章にして、FAXで先生に送る形を今まで取っていました。
FAXを送って先生からお返事をいただき、その後サービス導入になりますが、FAXを送ってからのお返事が早い先生でも1日2日、長い先生ですと2、3週間のお時間をいただくことがあり、それが通常でした。Chatworkを利用するようになってから、先生にお願いの依頼文を送ってから早い時では数分、ほとんどがその日のうちにはお返事がいただけるようになったので、サービス導入までがとても早くできるようになりました。
掛川東病院の院内利用の活用方法
訪問診療では、毎日たくさんの電話がかかってきます。電話を取り次いだスタッフは医師に伝達するため、目的別に分かれたグループチャットに用件を送ります。30分以内に確認して欲しいもの、文書確認など手が空いた時で構わないものなど、緊急度や用件でグループチャットを分けることで、医師は手が空いている時に優先度が高い順に確認ができ、時間を有効に使うことができています。
他にも訪問看護師や施設課スタッフなどの活用方法が流れると、多くの参加者の方が頷きながら集中して動画を見ていました。動画の視聴後、宮地さんは、無料でChatworkを使っているところも多いので、まずは簡単に始めてみてはとチャットサービスの導入をおすすめしていました。
宮地さんは導入に当たって、個人情報の取り扱いには気をつけるようアドバイスをしていました。個人情報を多職種で使う同意書は、利用する全員に必ずお願いする必要があります。また携帯電話を落とした場合に備えて、宮地さんの病院では有料のセキュリティの仕組みを取り入れ、遠隔でロックを行えるようにしているそうです。
地域でITを活用する仕組みを作りたい
その後の、参加者によるディスカッションでは、ICT(情報連携ツール)について、地域でどう導入するのか、どんなルールが必要かといった点についてさまざまな意見が交わされました。
「ICTの使いどころはいろいろなアイディアはありますが、まずはどこから始めて、全体をどう巻き込んでいくかを考えなければいけない」
「顔の見える関係ということが基本のきだと思うので、医療や介護の現場でそれを蔑ろにしないようにしたい」
などの意見が上がりました。函館市の看看連携の例をお話される方もいらっしゃいました。
終了後のアンケートでは、
「地域の実際のICTの活用の事をきけたので大変参考になった。少し気になっていたChatworkの話が聞けて良かったです」「情報の扱いをどうするかが課題になるのでしょうがこの地域でITを活用して訪問診療の方だけでなく外来の方でも医療との共有ができる仕組みができるといいですね」といった声がありました。
講演中もディスカッション中も、「一緒にやりましょう」「お手伝いします」と声をかける宮地さんの姿がとても印象的でした。参加の皆さん、宮地さん、ありがとうございました。
Project ハタフレとは?
「Project ハタフレ」は2024年3月に始動した中小企業の課題解決を促進するプロジェクトです。日本各地で様々な地域・業界課題と正面から向き合い、解決策を考え活動されている有識者の方々が「認定アドバイザー」に就任、ITに詳しい人もそうでない人も、業界業種、年齢といった属性とは関係なく、中小企業に関わる誰もが安心してDXへの一歩を踏み出せる環境を創出・拡大することを目的に活動しています。また、より多くの中小企業に情報をお届けできる環境を創出するため各業界で活動している団体が賛同企業としてご参画いただいています。
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