クセの強さが生む唯一無二のアナログサウンド!Waves EMI TG12345 Channel Strip
今回は、私が楽曲制作で愛用しているプラグイン、Waves EMI TG12345 Channel Stripをご紹介します。
このプラグインは、Waves Abbey Road Collectionに含まれており、ヴィンテージ感あふれるアナログサウンドを求める方におすすめのアナログコンソールプラグインです。
この記事では、EMI TG12345 Channel Stripの特徴や効果的な使い方、そしてこのプラグインを使うことで得られるサウンドの変化について詳しく解説していきます。
EMI TG12345 Channel Stripとは?
EMI TG12345 Channel Stripは、Abbey Road StudiosのEMI TG12345コンソールを基にしており、アナログの温かみと独特の質感をデジタル環境で再現することができます。
最大の特徴は、その強いクセにあります。調整は大雑把でザックリとしたものが多いですが、このザックリ感こそが、他にはない強烈なサウンドを生み出しています。
不条理とも思えるザックリとしたEQ
EQは3バンド構成。
BASS(低域)とTREBLE(高域)はそれぞれ50Hzと5kHzに固定されています。PRESENCEは500Hzから10kHzまでの連続可変式ですが、選べる周波数帯が限られているため、自由度はあまり高くありません。
Q幅は固定されており、比較的広めに設定されています。そのため、鋭く効くというよりは、緩やかに作用するトーンコントロールのようなイメージです。
低域が足りなかったらBASSをザックリ上げる、高域が足りなかったらTREBLEをザックリ上げる。周辺の帯域を巻き込みながら気持ちよく持ち上がります。
ガッツリ上げても破綻しないため、積極的にブーストしてください。このEQの旨みを活かすためには、ブースト方向で使うのがオススメです。
アタック感があるクセの強いダイナミクス
ダイナミクスは、アタックタイム1ms固定のVCAタイプ。コンプモードとリミッターモードにより、レシオは2:1または7:1から選べます。
リリースタイムは、100ms、250ms、500ms、1秒、2秒、5秒の6段階で固定されており、最速が100msとやや粗めな設定です。そのため、細かな調整には向かず、ザックリとした操作感が特徴です。
サウンド面では、強いアタック感が際立ちます。
アタックタイムが固定され、レシオやリリースタイムも切り替え式のシンプルな設計ですが、この荒々しい仕様が独特のアタック感とアナログな質感を生み出し、他にはない個性的なサウンドキャラクターを提供します。
ステレオイメージのコントロールと倍音付加
通すだけで自然に倍音が加わり、サウンドにアナログの温かみをプラスします。
ステレオモードでは、左右(LR)で異なるコンソールをモデリングしているため、左右のサウンドに微妙な違いが生まれます。
これは、昔のアナログコンソールを忠実に再現した機能であり、アナログ特有の温かみと個性を再現しています。もちろん、左右で同じコンソールを選ぶことで、左右差を抑えることも可能です。
また、SPREAD機能を使えば、ステレオイメージを自由に操作でき、特にマスタリングでの処理に効果を発揮します。
効果的な使い方について
EMI TG12345 Channel Stripの基本を紹介したところで、ここからは、私が実際に行っている効果的な使い方をご紹介します。
すべてのトラックに挿入すれば、アナログコンソールでミキシングしたかのような効果が期待できますが、CPU負荷の点で難しい場合もあります。
そこで、まずはバストラックやマスター処理としての使用をおすすめします。
ドラムにパワフルなパンチを!— ドラムバストラックでの活用
ドラムのバストラックに使用すると、アタック感の強い、キレのあるドラムサウンドに仕上がります。
私はプリセット「Drum Bus1」の設定をほぼそのまま使うことが多いです。
ザックリとしたEQで低域と高域を程よく強調しましょう。やることは、BASSとTREBLEを心地よいポイントまで持ち上げるだけ。Q幅が広いため、周辺の帯域を自然に巻き込みながら、気持ちよくブーストしてくれます。
また、アタック感が際立つダイナミクス処理により、キレのあるメリハリ感を加えることができます。アタック感をさらに強調したい場合は、MIX量(パラレル処理)を調整すると効果的です。
キックの低域が過度に圧縮される場合は、サイドチェインハイパスフィルターを使うと良いでしょう。このフィルターは90Hz前後を境に作用するため、低域がコンプレッサーにかかりすぎる際に特に有効です。
マスターに温かみを加えよう!— マスターでの活用
楽曲の最終仕上げとして、マスターに挿して使用するのもおすすめです。
上記ギターカバー動画のマスター処理は、EMI TG12345 Channel Stripがメイン。これもプリセットほぼそのままです。と言っても、EMI TG12345 Channel Stripのプリセットではなく、WAVESのプラグインチェイン・プリセットコミュニティStudioVerseのプリセットです。
ここで威力を発揮するのが、前述したSPREAD。わずかにプッシュして気持ちいいステレオ感を出しています。
デジタルプラグインとの併用について
上記で使用しているStudioVerseのプリセットでは、EMI TG12345 Channel Stripで質感を整えた後、Waves L2で音圧を上げていますが、iZotope Ozoneなどのデジタル系プラグインで最終的な調整を行うのも一つの選択肢として有効です。
また、Logic Proをお使いの方であれば、Mastering Assistantを使って同様の調整が可能です。
このように、デジタルプラグインを併用することで、アナログの魅力を活かしつつ、操作性や使い勝手が向上します。ぜひ一度、試してみてください。
まとめ
今回は、私が楽曲制作で愛用しているプラグイン、Waves EMI TG12345 Channel Stripの特徴や効果的な使い方をご紹介しました。
シンプルながらも、他にはない唯一無二のサウンドを作り出せるこのプラグインは、まさにアナログとデジタルの良いとこ取り。ヴィンテージ感あふれるサウンドメイクを追求する方には、ぜひ試していただきたい一品です。
皆さんもぜひ、EMI TG12345 Channel Stripを使って、あなただけのオリジナルサウンドを作り上げてくださいね!