埋もれないサウンドを作る決定版!Waves Vitaminの魅力を徹底解説します
DTMにおける楽曲制作において、トラックを際立たせるための方法は数多くありますが、その中でも「エンハンサー」は特に強力なツールです。
今回は、マルチバンド・ハーモニック・エンハンサー 「Waves Vitamin」を取り上げ、その特徴や使い方を解説します。
エンハンサーとは?
エンハンサーとは、簡単に言えば「原音に倍音成分を加えて、音に煌びやかさを与える」エフェクトです。
「倍音を加える」と聞くと、歪み系エフェクトを連想するかもしれませんが、エンハンサーの効果は全く異なります。歪みを加えるのではなく、音の明瞭感を調整するエフェクトで、EQでは得られない独特の気持ちよさを感じられるのが特徴です。
EQとの違い
では、EQとは何が違うのでしょうか?ここに、Waves Vitaminが「栄養」と表現される理由があります。
以下、440Hzのサイン波を例に見てみましょう。
EQは、指定した周波数帯のボリュームを直接持ち上げて強調します。
これに対し、エンハンサーはその周波数帯に含まれる倍音を付加して強調します。
エンハンサーのポイントは、EQのように単に音量を上げるのではなく、倍音を加えて明瞭感を引き出すことです。倍音によって生まれる明瞭感は、EQでは代用できない滑らかさがあり、ターゲットとした周波数帯域が自然に、かつ気持ちよく持ち上がってきます。
Waves Vitaminの主な特徴
Waves Vitaminは、音に「栄養を与える」というコンセプトで作られたエンハンサーです。単にエンハンス処理を行うだけでなく、幅広い機能を備えているのが大きな特徴です。
1. マルチバンド・ハーモニック・エンハンサー
Waves Vitaminは5バンドのマルチバンドエンハンサーです。各バンドごとに音をコントロールでき、必要な帯域にだけ処理を加えることができます。
名前の通り、音に「栄養」を与え、パワーや明瞭感を加えます。例えば、低音を力強く、ギターの高域をクリアにするなど、楽器やトラックに応じた調整が可能です。
2. パラレル処理でトラック再構築
Waves Vitaminの特徴的な機能の一つに、パラレル処理があります。
エンハンス処理された音と原音を自由にブレンドでき、エンハンス音だけでトラックを再構築することも可能です。
原音をオフにして、各帯域のエンハンス量を調整しながらトラックを再構築する方法は、ミックスでトラックをうまく馴染ませる際に非常に効果的です。
トラックを力強く、煌びやかな音にしたい場合は、狙った帯域にエンハンス処理を施しましょう。逆に、ミックス全体に自然な一体感を持たせたいときには、エンハンスされた音だけでバランスを整えるのも一つの方法です。
3. ステレオイメージの操作
Waves Vitaminは、ステレオイメージを簡単に操作できます。
一般的に、低域から高域に向かうほどステレオイメージを広げるのが理想的と言われており、特に低域はモノラルに近づけると、音が引き締まって聞こえます。
シンセやベーストラックの低域を引き締めつつ、高域で広がりを出すなど、非常に効果的です。
4. トランジェント処理でアタック感を調整
Waves Vitaminは、トランジェント(アタック感)もコントロールできます。
例えば、ベーストラックにVitaminを適用し、トランジェントを際立たせることで、アタック感の強いベースラインが前に出たサウンドに仕上がります。逆に、トランジェントを抑えることで、豊かで滑らかな鳴りを持つベーストラックに仕上げることが可能です。
さらに、エンハンス処理と組み合わせることで、トラックの「美味しい帯域」を強調しながら、パンチのある力強いサウンドを簡単に作り出せます。
5. サチュレーションで倍音を加える
Waves Vitaminには、さらにサチュレーション機能も備わっています。インプットゲインを上げることで、サチュレーションを加えることが可能です。
このサチュレーションは、あくまで隠し味として使うのがおすすめです。微妙な歪みを加えることで、楽曲全体のサウンドに深みや存在感をもたらします。
音を際立たせる4つの処理を組み合わせて音作りしよう
上述したように、Waves Vitaminは以下の4つの処理を組み合わせてサウンドに生命力を与えます。
明瞭感を引き出すエンハンサー
パンチ感を持たせるトランジェントシェイプ
広がり感を操作するステレオイメージャー
隠し味的なサチュレーション
これらをうまく調整することで、埋もれがちなトラックも生き生きとしたサウンドに仕上がります。
「栄養」を加えて存在感のある音に
Waves Vitaminの大きな特徴は、トラックの「美味しい帯域」や「聴かせたい部分」に栄養を与えるようにエンハンス処理できる点です。
例えば、アコースティックギターのトラックが中低域に偏っていて、他の楽器に埋もれがちな場合。そんな時こそ、Waves Vitaminで美味しい帯域をエンハンスすることで、楽曲全体にしっかりと存在感を持たせることができます。
アコースティックギターの胴鳴りの温かさや、高域の空気感を持つ帯域をエンハンスしてみました。音の存在感が一目瞭然で変わりますよね。
このように、聴かせたい部分を狙ってエンハンスすることで、トラックが他の音に埋もれないサウンドに仕上がります。これがWaves Vitaminの基本的な使い方であり、非常に効果的な方法です。
パンチ感を加えて埋もれないサウンドに
Waves Vitaminで得られるのは明瞭感だけではありません。パンチ感を加えることで、トラックに躍動感を持たせることも可能です。
例えば、ドラムのキックでは、低域の厚みと高域の皮鳴りを強調し、重量感のあるサウンドに仕上げることができます。
ここで注目してほしいのは、キックのパンチ感。アタックがしっかりと強調され、トラック全体に躍動感を与えています。このパンチ感こそ、楽曲内で埋もれないサウンドを実現する重要な要素になります。
広がり感を出してみよう
Waves Vitaminは、ステレオイメージを操作することで、サウンドに奥行きや広がりを持たせ、他のパートに埋もれない存在感のあるトラックに仕上げることも可能です。
シンセのステレオイメージが広がっているのが分かりますよね。
中高域から高域にかけてエンハンス処理を施し、パンチ感を加えながらステレオイメージを広げることで、サウンドに豊かな広がりを持たせることができます。
シンセやストリングスなど、特に空間の広がりを求めるトラックに非常に有効です。
サチュレーションで隠し味を加える
Waves Vitaminでは、インプットを突っ込むことで、心地よい歪みを加えることができます。
注目すべきポイントはインプットレベルです。インプットをピークに近いレベルまで上げると、自然で心地よいサチュレーションを得ることができます。
サチュレーションは、楽曲内で埋もれないサウンドを作るために欠かせない要素です。適度な歪みが、トラックの存在感を際立たせ、全体のミックスに豊かさを加えます。
ただし、サチュレーションは隠し味として控えめに使うのがポイント。あまり強調しすぎないように、ミックス内でトラックの聴こえ方を微妙に変化させる感覚で活用すると、より自然で洗練されたサウンドに仕上がります。
ギターの音作りにおけるWaves Vitaminの使い方
具体的な使い方として、ギタートラックにWaves Vitaminを使用する例を紹介します。
エンハンス処理でギターを際立たせる
ギターの音作りでWaves Vitaminを使用する際は、5つのバンドを「太さを足す帯域」「厚みを足す帯域」などに分けて、クロスオーバーポイントを設定しましょう。
各帯域のフェーダーを使って音を細かく調整することで、理想的なサウンドを作り出すことができます。
ギターのEQポイントは、以下の動画を参考にしてください。
ギターの「美味しい」帯域をエンハンスして存在感を出します。
低域〜ローミッドで太さを加える
ローミッド〜ハイミッドで厚みを出す
ハイミッド〜高域で音抜け感を強調する
これにより、ギターが他の楽器に埋もれず、しっかりとクリアなサウンドになります。
エンハンサーはかけっぱなしでもOK
エンハンサーはギターにおける「ブースター」のような役割を果たすことがありますが、楽曲全体を通してエンハンサーをかけっぱなしにしても問題ありません。
実際に、私の過去のギターカバー動画では、Waves Vitaminを常にかけていました。その結果、存在感があり、演奏していても気持ちの良いサウンドに仕上がっています。
おわりに
Waves Vitaminは、トラックにパワーと明瞭感、広がりを加える万能なエンハンサーです。マルチバンドでの処理、ステレオイメージの操作、トランジェントやサチュレーションの調整など、様々な機能が一体となって楽曲をより魅力的に仕上げます。
ぜひ、Waves Vitaminを使って、トラックを埋もれないサウンドに仕上げ、楽曲に生命力を与えてください。