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【ショートショート】キミと僕
ある日、困った猫ちゃんが散歩に行くと、
かわいそうなうさぎさんが泣いていました。
困った猫ちゃんは、かわいそうなうさぎさんに『どうしたの?』と、声をかけました。
かわいそうなうさぎさんは言いました。
『さっきそこで悪い人間に私は捨てられたの』
それを聞いた困った猫ちゃんは、心の中の正義感がめばえました。
『だったら新しい飼い主をぼくが探してあげるよ!』
困った猫ちゃんの正義の旅が始まります。
まずは、困った猫ちゃんは人間が多くいるところへ行こうと思いました。
古い田舎町へ旅立ちました。
そこで一人の疲れた顔のお婆さんと出会いました。
困った猫ちゃんはお婆さんに言いました。
『かわいそうなうさぎさんの新しい飼い主になってください』
するとお婆さんは言いました。
『わたしゃ、今は洗濯や家事にやる事いっぱいなんだよ。うっとおしいからあっちへお行き!』
怒鳴られた、困った猫ちゃんはその場から去りました。
今度は、広い街へ旅立ちました。
そこで一人の女の子に出会いました。
困った猫ちゃんは女の子に言いました。
『かわいそうなうさぎさんの新しい飼い主になってください』
すると女の子は言いました。
『あたし、今日は塾にピアノ教室にゲームに友達との約束にやることいっぱいで、無理。』
そっけなくされた、困った猫ちゃんはその場から去りました。
今度は、大きい都会へ旅立ちました。
そこで一人のサラリーマンに出会いました。
困った猫ちゃんはサラリーマンに言いました。
『かわいそうなうさぎさんの新しい飼い主になってください』
するとサラリーマンは言いました。
『私は、今から取引先へ行かなければならない。君の話を聞いてる暇はないんだ。』
冷たくされた、困った猫ちゃんはその場から去りました。
そして、海を渡って外国へと旅立ちました。
そこで一人の大統領に出会いました。
困った猫ちゃんは大統領に言いました。
『かわいそうなうさぎさんの新しい飼い主になってください』
すると大統領は言いました。
『ワタシハ コレカラ センソウノ ジュンビヲ ハジメナケレバイケマセン アッチヘイッテテクダサーイ』
怖くなった、困った猫ちゃんはその場から去りました。
そして空を飛んで宇宙へと旅立ちました。
そこで一人の宇宙人に出会いました。
困った猫ちゃんは宇宙人に言いました。
『かわいそうなうさぎさんの新しい飼い主になってください』
すると宇宙人は言いました。
『♠︎♥︎♡←→♢☺︎☾♫✛✝︎⚬↘︎↓㎗・・・・・・・』
困った猫ちゃんは肩を落としてその場から去りました。
困った猫ちゃんはかわいそうなうさぎさんの飼い主を探すため、いろいろな人間と出会いましたが、どれもこれも人間たちの身勝手さにふりまわされてしまい、結局何ひとつ結果が残せないまま、かわいそうなうさぎさんのもとへ戻ってきました。
『ごめんよ。君のために新しい飼い主を見つけようと思ったけど結局見つからなかったよ』
うさぎさんは言いました。
『ううん。君が、ボクのために動いてくれたことが何よりの宝さ。ボクのためにありがとう』
困った猫ちゃんとうさぎさんは気がつくとかたい友情でむすばれていました。
困った猫ちゃんという友だちができ、ひとりぼっちじゃなくなったうさぎさんは、かわいそうなうさぎさんではありません。
『幸せなうさぎさん』です。
END