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【ショートショート】りんごと天使の羽
みんなにはひみつだけど、ぼくのせなかには白い羽がついてるんだ。
なぜ羽がついたかというと、ママにはないしょで、おばあちゃんの大好きなりんごを食べちゃったからなんだ。
ある日、学校でお友だちとけんかしちゃった。
ぼくはわるくないもん。
ぼくはわるくないもん。
そう思いながらぼくはその日、目をつむりながら、夜のせかいにはいった。
気がつくと、ぼくは雲の上にいた。
まわりはふわふわ
なんだかいいきもちだなあ。
とおくにキラキラ光るお星さまが見える。
あ!
おばあちゃんがいる!
おばあちゃんはやさしい声でぼくにいった。
「さあ、こわくないよ。ゆうきを出して」
ぼくはおばあちゃんと手をつないで前へ進んだ。
せなかについている白い羽がつばさを立ててはばたいた。
ぼくはおばあちゃんと夜のせかいを旅した。
ぎん色にかがやくまるい月。
七色に光る夜空。
黄色いはとがぼくににっこりする。
青色の風がぼくとおばあちゃんをつつみこむ。
やがて白いきりが出てくるころには、明るくかがやいていた世界も終わりをむかえた。
朝のたいようが、かがやいているときに、ぼくはママに起こされた。
ママはぼくに小さな声で話しかけた。
「きのう、おばあちゃんはお空に行ったのよ」
そうだよ。ママ。ぼくはきのうおばあちゃんとお空をとんで夜のせかいを旅したんだ。
朝ごはんのデザートはうさぎの形をしたりんごだった。
あまくて少しすっぱいりんごを食べ終わった。
おばあちゃん。
きょう、学校でお友だちに「ごめんね」って言うよ。
ぼくとお空をとんでくれてありがとう。
ママに見おくられながら学校へ走って行くぼくのせなかに、もう白い羽はなかった。