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舞台刀剣乱舞の魅力について

やっと舞台『刀剣乱舞』七周年感謝祭 -夢語刀宴會- を観ました。日テレプラスで。
そこで、あらためてこのコンテンツの面白さ、いや、とんでもない面白さについて考えたので、語ってみたいと思います。


これを書いている人

もともと舞台は宝塚・歌舞伎・グランドミュージカルを中心に観ていて、
刀ステでは生で観劇したのは「綺伝」「禺伝」のみ(これだけで誰のファンか分かる 笑)。
映像では「心伝」以外は観ている。
2.5次元舞台はこの刀ステで初めて触れて、その後映像を含めて刀ミュ、エーステ、PSYCHO-PASS等々を観た。
※刀剣乱舞にはストレートプレイの舞台と、ミュージカルの舞台がある。前者は刀ステ、後者は刀ミュと呼ばれる。この記事で書いているのは刀ステのこと。

だいぶ俳優さんの名前は覚えたとはいえ、2.5次元舞台に関する偏差値はまだ52くらいだろうか…?
あまり不案内な分野について語るのは避けてきたけど、あえてこのくらいの素人からみた魅力を語ってみるのもいいんじゃないかと思い、書いています。物語そのものの考察はありません。

冒頭の話に戻りますが。
夢語刀宴會がね、とっっっっっても良かったんです。
私のご贔屓(推し)は出ていないので現地には行かなかったけれど、これは刀を愛する人たちによる刀を愛する人たちのためのお祭りなんだなと…
大きな愛、それから、このコンテンツがこの世にもたらした影響を感じて、なんだか心打たれてしまい、今キーボードを叩いています。

原案:刀剣乱舞について

ごく簡単に説明するために、wikiから引用します。

西暦2205年、時の政府は過去へ干渉し歴史改変を目論む「歴史修正主義者」に対抗すべく、物に眠る想いや心を目覚めさせ力を引き出す能力を持つ「審神者」(さにわ)と刀剣より生み出された付喪神刀剣男士」(とうけんだんし)[注 2]を各時代へと送り込み、戦いを繰り広げる。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%88%80%E5%89%A3%E4%B9%B1%E8%88%9E

原作はゲーム。プレイヤー各々が「審神者」であり、各々の「本丸」に「刀剣男士」がいる。「刀剣男士」は「審神者」のことを「主(あるじ)」と呼ぶ。
刀ステには刀ステの本丸がいて、主がいて、刀剣男士がいて、物語がある。
刀ミュにもまた別の本丸があるし、とうかぶ(刀剣乱舞歌舞伎)にも別の本丸がある。(序でながら、とうかぶ本丸の審神者の声は中村獅童さんでした)

「解釈違い」が起こりにくい構造

このように、ひとつの原作ではあるけれど、それぞれの審神者にそれぞれ別の物語がある、ということが刀剣乱舞の特長だと思う。
各物語はスピンオフなどではなくて、パラレルに存在しているというわけです。
これは有利に働いていて、たとえば刀ステの〇〇のキャラクターは自分のイメージとちょっと違う…というような時でも、「刀ステの本丸の刀剣男士の個性」と「自分の本丸の刀剣男士の個性」が違うというだけで、単なる「個体差」であって、それは舞台版が「解釈違い」だというわけではない。
(と、好意的に捉える声が多い気がするというだけで、実際には解釈違いと感じる人はいるのかもしれない。ただ、ほかの2.5次元舞台よりもそういうことが構造的に起こりにくくなっていると思う。)

たとえば、禺伝のとき。オープニングで軽やかに舞う刀剣男士を観て、
「うちの本丸の則宗さん(一文字則宗)はあんな風に足上がらない…」という声を聞いたのだけど、これって少し違えば「高く足を上げる則宗さんは解釈違い」ということにもなり得るはずで。
そうならなかったのは、「各々に本丸があり、刀剣男士がいる」というシステムに依るものだと思う。

そして、システム以外にも要因はもう一つ。これは、多種多様なキャラクターの再現度が高い(高いというか、そのまんま)こと。
刀剣男士のビジュアルは、当たり前ながら、二次元。
しかも付喪神であるから、そんじょそこらにいるような外見ではない。
それを2.5次元にするために、
・世界のウィッグの最高峰では?という髪型の造形
・原作通り、かつ激しい殺陣に耐える衣装
・演者のお顔立ちをキャラクターに寄せながらも、繊細な演技を邪魔しないような濃すぎないメイク
などなど、あらゆる技術の結晶で出来上がったそのビジュアルの説得力があるからこそ、「解釈違い」が起こりにくいのではないかなと。
あと、これは後述するけれど、役者さん側も体形や所作など相当な努力をされているというのもあります。

さらに言えば、照明や音響がキャラクターをまた魅力的に浮かび上がらせていると思う。
刀ステの照明は初めて見たとき綺麗で斬新だなと…そして照明すらもが伏線になっているのだからすごい。

刀剣男士のビジュアルの多種多様さについては七周年感謝祭 -夢語刀宴會-のサイトが分かりやすいです。これだけ揃うと圧巻だね!
https://stage-toukenranbu.jp/archive/anniversary7th/

物語の面白さ

刀ステを語るうえで外せないのは「物語そのものの面白さ」。
そもそも筋書きが最高に面白い。刀ステは戯曲として出版されていたと思うけど、歴史SF小説としても抜群に面白いのです。

私はもともとそこまで日本史に興味があるわけではなかったけれど、刀ステにみる歴史の≪if≫を通して、歴史の中に生きた人々に思いを馳せることができた。
刀剣乱舞では、「歴史修正主義者」による「改変された歴史」を正すために、審神者は刀剣男士たちを過去に送り込みます。
―もし、織田信長が本能寺の変で死ななかったら?
―もし、細川ガラシャがキリシタンの国を作っていたら?
その歴史改変の中心に在るのは切実な誰かの願いや想い(生きていてほしいとか、愛されたいとか…)で、
それを引き継ぎたくも許されないモノ(付喪神たる刀剣男士)の想いは、とても切ない。

歴史はひとつしかないと思っていたのは、教科書でしか歴史を学んでいないからで、実際にはいくつもの出来事が糸のように絡まっていて、それを便宜上歴史と呼んでいるだけなのではないか、と、今は思う。

「物が語る故、物語」-これは刀剣乱舞で折に触れて出てくる言葉。
人はいつか亡くなる。でも、人とともにあった刀はずっと長くそのかたちを留める。人の記憶を残して、争いや憎しみや愛の記憶を後世に伝える役割も担っているのかもしれない。
きっと日本人がどこかで潜在的に刀に感じている神聖さを、刀剣乱舞は物語にしてみせた。歴史上の話ではあるけれど、私たちとも無関係な話ではないと思わせてくれる。
うん、そりゃ全国各地の史跡に行ってみたくなるよね。
私の祖父母の出身地も刀剣に所縁のある町で、この刀剣乱舞のおかげで来訪者が増えて、展示のある時期限定とはいえ活気を取り戻している。

それから、世の中のコンテンツはやたらと恋愛モノの比率が高い。
そんな中で、恋愛だけではなく親子の愛、忠誠心や臣下への愛、仲間との絆、信仰、破滅しかないとわかっていても進むしかない道……
こういった心情を見事に描き切っているのが刀ステだと思う。

演出・脚本は末満健一さん。
こんなにすごい方がいたんだ、と、私は衝撃を受けた。この方を知らずに私は舞台観劇が趣味なんて言っていたのかと…。
筋書きだけではなくて、すっと頭に入ってくる台詞や美しい歌の歌詞までも、本当に素晴らしい作品を続々とこの世に送り出してくださっていて、感謝の気持ちでいっぱい。

まだある、刀ステの魅力

初めて観劇したときに度肝を抜かれたのは、殺陣の激しさでした。
前方席だと席が揺れるし、刀や槍が飛んでくるんじゃないかという迫力。
一歩間違えれば怪我するであろうレベルの殺陣をたっぷり観られるのは、刀ステならでは。
舞台袖で酸素吸ってるとか聞くもんね…。本当に、役者さんはすごい。

それから、ある意味歌舞伎みたいだなぁと思うのが「決め台詞」。
歌舞伎には、
「知らざぁ言ってきかせやしょう」(白浪五人男)
「問われて名乗るもおこがましいが」(同上)
「こいつぁ春から縁起がいいわぇ」(三人吉三巴白浪)
なんて決め台詞があり、この台詞が聞けると分かっていて見に行って、分かってるというのに聞けるとテンションが上がったりするもの。

同じように、刀剣乱舞でも、原案ゲームでの台詞がそのまま聞けることが嬉しい。
そしてその台詞の再現度が高いのだ。
個人的に好きなのは
「文系と言えど僕は之定だからね」
「雅を解さぬ罰だ」
「力がなければ、文系であることを押し通せぬ世の中さ。世知辛いね」
ですね~。歌仙さんが好きです。

やっぱり人の魅力

刀剣乱舞、役者さんのコミットがすごい。
これはほかの2.5次元もそうなんだと思うけれども、キャラクターとして生きるための努力が半端ではない。
役が決まってからコルセットを着けて過ごしたとか(これは刀ミュ)、
役のままファンサするとか…だってそのためには役として反応するための瞬発力と役の理解がいるというわけで(これも刀ミュ)、
SNSにアップされる舞台袖でのショットを見てもポーズや佇まいが「役」だなぁと思う。
カーテンコールで審神者側に立って熱い想いを語る梅津さんや、
自作の句を詠んでくれる和田さんも素敵。
運営側からの縛りや教育がどの程度あるものなのか分からないけど、本当に役を大切にしていることが役者さんから伝わってくる。

当然ながら想いだけではなくて、技術も。
あの込み入った構造の衣装を軽やかに着こなしている体幹の強さがすごいし、歩いたり戦ったりするときに、袖や裾がもたつかないのも当たり前ではない。
抜刀・納刀の所作も美しいなと思う。
やり直しがきく映像ではなく、1回1回が本番の舞台で毎度やっているのだから驚く。

結び

2.5次元偏差値は高くないくせに、過去最高に長い記事になってしまった。

とにかく私は、この時代に日本に住んでいて、舞台が好きで、刀ステを知って、刀剣乱舞を知って、よかったなぁと思っています。
永遠に続くものはないから、刀ステが気になっている方がいらっしゃったらぜひとも生で観てみて欲しいです。



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