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「わからない」と言える強さ

前回につづき、国内不動産運営会社にいた頃の暗黒時代の話。

僕のプライドは、クライアントとのコミュニケーションにおいてだけでなく、会社内においてもズダボロにされた。

僕の仕事のできなさから、ついに週一度の部会に「今週の田中」というコーナーが設置された。
どういうコーナーかというと、「今週わからなかったことを、みんなの前で言う・聞く」というコーナーだ。

何でもいいからどんどん聞けと言われるので、正直にそのまま言ったり聞いたりすると、
「何を聞きたいかが全くわからない」
「そんなことも知らないのか」
と野次られて終わる回が、数回つづいた。

意気揚々と転職してきた勝ち気だった26歳の僕は、十数人の前で晒し者にされ、ボコボコにされ、めちゃくちゃ辛かった。
悔しかった。


そこを抜け出すために、僕は勉強した。
とにかく、深く勉強した。

そうすると、今までいかに仕事の質が低かったかに自ずと気づいていく。


たとえば、1社目では「業者に聞く」が、ほぼイコール「調べた」になっていた。
なんとなくしか理解できていなくても誰かが助けてくれるだろうとか、下請けの会社さんに任せておけば何とかなるだろうみたいな、丸投げ的感覚の仕事も少なくなかった。

でも2社目では、自分で調べて勉強して理解できていないと、仕事の話すらまともにできない。
勉強して理解して、さらには自分自身の第三者的立場の視点も必要になってくる。
理解をした上で、「自分がどう思うのか?」を伝えられる人になりたいと思った。

だから、とにかく勉強をしたし、勉強してもわからないことは積極的に人に聞いた。
そして、わからないことを「わからない」と言うようにした。


こうした行動の変化によって、仕事の内容と質も変わっていった。

徐々にクライアントとコミュニケーションが取れるようになり、
自分のエッセンスや思いが乗せられるようになり、
そうしているうちに、仕事が円滑に回るようになった。

暗黒時代のはじまりから、半年あまり。
ようやく暗い世界から抜け出すときが来た。


それ以降はもう、仕事の中に「自分がどうしたいか?」を自由に盛り込めるようになっていったので、辛いと思うこともなくなったし、自然と仕事を楽しめるようになっていった。
この頃から「出来る人」のイメージが変化していった気がする。

2社目の国内不動産運営会社で、BtoBビジネスの基礎がつくられたのは間違いない。
僕の再スタートの場所だ。

***

ありがたいことに、今に至るまで、名だたる有名企業の重役、オーナー、財閥の方、海外の投資家…と、たくさんのご縁をいただいてきた。

彼らを見ていると、“事を成していく人”には共通点があることに気がつく。
それは、『わからないことを「わからない」と言えること』だ。

大抵の場合、大人になり歳を重ねていけばいくほど、プライドやエゴが邪魔をして、わからないことを「わからない」と言えなくなっていく。
「あいつ、そんなことも知らないのか」なんて思われるのが恥ずかしくて、言えなくなるのだ。

ところが事を成していくような人は、どんな年になっても、どんなポジションにいても、自分が知らないことは普通に「知らない」「わからない」と言える。
それがたとえ、世の中で当たり前のことだったとしても。


要するに、彼らにとって「知らないこと」と「自信」は完全に別物なのだ。

そこを多くの人は、勘違いしている。

知らないと、自分の自信が減る…
知らないなんて、自分はできてない人間だ…

でも、決してそうではない。
逆に、知ったかぶりをする人は、残念ながら器用貧乏で終わってしまう。

素直に人に質問できること、
わからないことを「わからない」と言えること。

それは、強さなのだと思う。


次回につづく。

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