大学教授になって英語を教えよう!:長期休暇には何をしているのか
長期休暇は大学教員の特権
大学教員になるメリットは、夏休みや春休みなど長期休暇があることです。最近では様々な教育以外の業務が増えることで、多少自由な時間が減ってはいるものの、夏休みや春休みは研究などに使える貴重な時間になります。
まずは夏休みについて
長期休暇中も、実は授業以外の大学でのさまざまな業務が存在します。原則として休暇というのは、授業がない期間つまり学生が休む期間であり、教員や職員は原則として勤務を要する期間です。ですので、行うべき業務があれば休み中でも出勤してその業務を行わなければなりません。
夏休みといえばオープンキャンパス
まず夏休みについて考えてみると、オープンキャンパスのような学生募集のためのイベントがありますので、そういったイベントへの参加や準備等で時間がとられることがあります。オープンキャンパスは、1回だけ実施するものではなく、有名大学でも複数回実施するのが普通になっています。ですので学部、あるいは大学全体の広報委員になっている場合、あるいは入試関係の委員になっている場合などは、このようなオープンキャンパスにかり出されることが結構あります。また、こういった委員ではない先生も、やはりオープンキャンパスに動員されて受験生やその保護者などに対応したり、あるいは学部・学科としての説明やレクチャーを組織代表して行ったりなどといった仕事が割り当てられることがあります。
人事関係の仕事が入ることも
次に人事関係の仕事があるかもしれません。次の年度に着任予定の専任教員を募集する場合、公募情報が年度の初め頃、つまり4月や5月に公開されることが多いものです。その場合、しばらく間をおいて応募締め切りとなりますが、それが例えば6月の末や7月の初旬になることがあります。その後、学部・学科では審査にあたる教員が書類選考を行い、実際に面接や模擬面接に来てもらう候補者を複数名選びます。大学の教員募集は、一般的な企業の採用活動のように大学の新卒者をターゲットとはしていませんし、基本的には既にどこかの大学で教員をしている人を念頭においています。このため、面接を実施する場合には、土曜日や日曜日、さらには長期休暇中に行われるのが普通です。例えば、前述のスケジュールで考えれば、6月の末や7月の初旬に書類選考通過者に面接・模擬授業の連絡をした場合、可能性としては前期授業終了後、つまり前期試験期間や夏休み中の面接、模擬授業が濃厚になってきます。そうすると、審査に関わる教員は、面接そして模擬事業に立ち会う必要があるので、夏休み中であっても出勤します。また、組織によっては模擬授業や面接を学部、学科の教員に公開するケースもあります。参加は自由ではありますが、責任感の強い教員は、出勤して候補者の模擬授業、そして面接に立ち会います。
ゼミ合宿
これは先生によりますが、夏休み中にゼミ合宿を行うというケースもあります。そうすると学生を引率して、どこか適切な施設に宿泊しつつ、ゼミ合宿を行うということになります。また、こういったゼミ行事を行うような熱心な先生の場合、合宿の準備作業も学生とともに行ったりするでしょうから、合宿の前にもある程度出勤して中心となるゼミ生とともに合宿準備を行うということもあるでしょう。
会議への出席
あまり頻繁ではありませんが、夏休み中であっても教授会があったり、各種委員会があったりします。定例の会議としてもともと設定されている場合もありますし、何か緊急に審議しなければならないことが生じた場合、やはり臨時に会議が設定されます。今日では、オンラインでの会議もあり得ますが、古い体質の大学では対面のみで会議が行われることもあり、その場合には大学に出勤しなければなりません。
小中高の先生方についてはこのようなケースはほとんどないと思いますが、大学教員については実際の自宅は遠隔地にあり、学期中には大学にすぐに通える場所の賃貸物件の居住するということがあり得ます。私自身も、東京の大学に勤務したことがありますが、大学の近くの賃貸マンションに住んでいました。そして、夏休みや春休みといった長期休暇中には自分の神戸の自宅に戻っていました。ただし、万一長期期間中に重要な委員会や教授会などの会議がある場合には、当然出勤しなければなりませんので、東京に行かねばなりませんでした。年老いた両親がまだ地元におりましたので、いわば東京への単身赴任であったわけですが、大学側から見れば、そのような状況は教員の個人的な勝手ですので、会議への参加を免除してほしいなどという事は、原則として言うことができません。
成績処理
もちろんですが、学期が終わればそれぞれの授業科目の成績を教務に報告しなければなりません。学期中のさまざまなレポートや小テストなどを評価して総合的に評価するわけですが、これが結構時間がかかるものです。今ではExcelなど表計算のツールがあるので小テストやミニレポートの点数の重みづけなども加味して比較的簡単に最終成績の算出はできるようになりましたが、それでもかなり成績処理作業には時間がかかります。
なお、最近の大学では成績疑義照会という制度ができています。これは学生が成績を受け取った後に、その成績が間違いではないか、あるいは不当に評価が低いのではないかといったことを問い合わせることができるという制度です。言った言わないなどの間違いがないように、これら対学生コミュニケーションは原則教務担当者を経由して文書で行います。場合によっては単に教員側のミスであったというケースもあるのですが、いわば理不尽な学生からの主張に対して合理的に成績算出の経緯を報告せねばならないこともあり、これには結構時間がとられます。なお最近では、疑義照会ではなく、むしろ単に「単位をください」といった懇願型の要求があったりして教員にとっては頭が痛い作業になりつつあります。
春休みについて
春休みも長い休みになります。春休みに多い学生の教育関係以外の業務としては、入試業務があります。主には入試の監督業務になりますが、大学入試センターの大学入学共通テストも含め、複数の入試の監督が割り当てられます。何時何分に監督する教室に入室して、何時何分にアナウンスのどの部分を読み上げるのかなど事細かな指示があり、間違いがあることは許されませんので、大変緊張する業務です。
教授会開催頻度は多い
教授会などの、各種会議もかなり入ってきます。特に教授会については、複数回行われる入試の判定の議論が教授会で行われます。入学試験の点数を見て、どこでボーダーラインを引くのか、そのことでどの程度の実施的な入学者が見込まれるのかといったこともを議論することになります。複数の入試がありますから、それぞれの入試に対して、この判定のための教授会が実施されなければなりません。
教授会では次の年度の役割分担や新たな事業の計画立案なども議論する必要があります。このため、夏休みとは違って、教授会の開催頻度は多くなるようです。また、進級のや卒業の判定も教授会で行われます。各種委員会の開催頻度は少ないかもしれませんが、教授会は勝手に欠席することはできませんので、遠隔地に住んでいる人であっても、必ず出席する必要があります。
その他の業務
なお、大学によって違うと考えられますが、もう春休みからオープンキャンパス、あるいは、オープンキャンパスに類した学生募集・広報のための行事が開催されることもあります。
これは先生次第ですが、やはり春休みにゼミ合宿などゼミのための特別な行事を行うことも多いようです。
研究活動は長期休暇中に
夏休みや、春休みはかなり期間的にも長いので、研究活動をするには最適な時期になります。国内でのさまざまな研究会や学会の全国大会などは、やはりこういった長期期間中に実施されることが多いものです。また、論文を執筆したり、時間のかかるデータ処理をしたりするのにも、長期休暇はうってつけの時になるでしょう。
なお、私の知っている先生で、1年間の授業の準備を春休みに全てやってしまうという人がいます。なぜかというと、まとめて授業の準備をすることで、学期中の時間を有効に研究に使いたいということだそうです。もちろん長期期間中にもある程度研究はされるのですが、そこである程度1年間、あるいは学期全体の授業準備をしておくことで、前期、後期の授業中であっても、多少の研究のための時間は確保したいというのがその方の考え方です。このあたりは、先生方によってそれぞれ考え方は異なることでしょう。
自分の将来設計を考えるための時間
いくつか上に書きましたが、少なくとも長期休暇があるということは大学教員にとっての大きな特権になると思いますし、会社員や公務員の方には想像できない特典です。
なお、長期休暇中に自分自身の将来設計についてじっくり考えて、具体的な計画を練ることももちろん可能です。現在勤務中の大学に魅力が感じられず、さらに別の大学に移りたいという場合のさまざまな準備、さらには定年退職後にさらに自分で挑戦したビジネスの計画策定なども長期休暇中に行うことができます。また、将来計画に必要と思われる人的ネットワークを作ることも長期休暇中に行うことができますね。このような意味でも大学の専任教員のポジションは魅力的です。
それではまた次回の記事で。