大学教授になって英語を教えよう:なぜ英語なのか
大学教授になるための分野選びについて
大学教授になるには、どのような分野の人が専任職を得やすいのでしょうか。この点は、大学教授や専任職を目指す上で非常に重要なファクターとなります。大学教員の場合、「自分にしかできないユニークな研究」があることが強みになります。しかし、就職の際には、需要と供給のバランスが非常に重要です。たとえ誰も取り組んでいない珍しい分野の研究をしていたとしても、その分野に合致するポジションが大学に存在しない場合、就職の可能性は極めて低くなります。
私の知り合いに、コプト語や古代の消滅した言語を研究してきた方がいます。この方はドイツの大学院で博士号を取得しました。幸運なことに、その方を必要とする研究機関があり、無事に大学の専任職を得ることができました。しかし、このようなケースは非常に稀であり、誰もが特殊な分野の研究で成功するわけではありません。なお、この方はITやAIの活用ということにも優れており、これも就職において大きな強みとなったと考えられます。
経営学部などの教授職ならばどうか
経営学部の教授を目指す場合、門戸が広く感じられるかもしれませんが、実際には専門分野ごとに教員が割り当てられています。そのため、経営学の専門家であっても、誰もが経営学部の教員採用に応募できるわけではありません。例えば、経営学部では、ミクロ経済学、国際貿易論、マーケティング、経営データ分析、税務会計論、人的資源管理、広告コミュニケーション、消費者行動論など、それぞれの科目に専門の教員が割り当てられています。大学のカリキュラムは簡単には変更できず、特定の教員が退職したとしても、その方が担当されていた科目をすぐに廃止することはできません。そのため、教員の募集においては、求められている科目に合致する専門性を持った人でないと採用されることは難しいのです。この点を考えると、経営学部の教授になるのは意外と狭き門といえるでしょう。このことは他の学部、たとえば経済学部、理学部、工学部、あるいは文学部などについてもいえます。
ではなぜ英語なのか
どの大学にも比較的多くのポジションがあるのが、英語教員の職です。文学部英文学科や外国語学部の英語系の学科、または教育学部の教員養成課程など、英語を専門とする教員が必要な組織は多くあります。ただしこれらの学部、組織ではやはり専門科目があり、それぞれの科目に対して教員が割り当てられています。このため、その時その時の教員募集内容は大きく異なりますので、英語関係の研究を実施している者が誰でも気楽に応募するというわけにはいきません。ところが、これらの学部、学科、あるいは課程での英語教員の数はそれほど多くありません。一方、多くの大学には「共通教育センター」などリベラルアーツを教える教員が集まる組織があります。この中には、外国語を教える教員も含まれており、これら教員の役割は基礎的な英語を教えることになります。このようなポジションでは、あまり高度な専門性は求められません。また、教員募集にあたっては専門分野が狭く限定されておらず、かなり幅があるケースが多いです。なお、この共通教育センターのような組織には、かつては英語以外の外国語教員も多く在籍していましたが、現在では英語教員が中心となっていることが多く、ドイツ語やフランス語、中国語などの教員は非常勤講師で補う大学が増えているようです。
独立した外国語関係のセンターがある大学も
共通教育センターのような組織とは別に、独立した外国語教育だけを管轄するセンターを持つ大学もあります。こういったセンターには複数の英語教員が配置されるのが一般的です。これらのセンターは学部ではありませんが、大学によっては学部に準じた扱いを受けることがあります。センターには代表となる教授が配置され、学部長のような役割を担います。センターの運営に必要な予算は大学から与えられ、事業内容や人事、予算配分などはセンター内の教授会で決定されます。
学部所属の英語教員
共通教育センターや外国語教育センターのような全学に対応する組織だけではなく、それぞれの学部に英語教員が若干名ずつ配置されているケースも少なくありません。例えば、経済学部、工学部、経営学部、法学部、理学部などに少人数の英語教員が所属していることがあります。これらの教員は、その学部の英語教育を担当しますが、英語教員が不足する場合には、外国語教育センターからの応援や非常勤講師に頼ることもあります。英語を専門とする人の中には、文学部の英文学科などや外国語学部の英語学科などでのポジションを希望する人が多いのですが、実はむしろ共通教育センターや外国語教育センターのような全学対応の組織、あるいは工学部や経済学部などの学部所属のポジションを考える方がよいかもしれません。これらのセンターや学部での英語教員が「身分が低い」と思い込んでいる人もいますが、実際にはそういった組織で働く方がハッピーな場合もあります。この件については今後別の記事で書かせていただくようにします。
入試問題作成には英語教員が必要
近年、大学経営の方針としては人員削減が進められており、外国語教員の数は減少傾向にあります。英語教員も例外ではなく、英語教員が退職しても補充されない大学も多くあります。例えば、ある大学では以前は英語が必修科目でしたが、現在では必修ではなくなり、英語を学ばなくても卒業できるようになっています。ただし、英語教員の需要がなくなるわけではありません。その理由の一つに、大学の入試問題作成があります。
どこの大学でも入試問題はその大学の教員が作成します。別の所でも書きましたが、さまざまな入試形態、さまざまな学部があっても、必ず英語の入試問題が必要になります。たとえば、人文系あるいは社会科学系の学部では、ほとんどのところで、数学は必修ではなくなっています。推薦入試などある特定の形態の入試では、学部によっては数学は選択科目ですらなくなってしまったというケースもあります。するとその場合には数学の問題は作成しなくてもよいということになります。しかし、英語の場合はそうはいかないのです。公募制の推薦入試をとってみても、たとえ入試科目が2科目になってしまったとしても、必ず「英語」と「国語」、あるいは「英語」と「国語・社会・数学から選択した1科目」などという方式になっていて、英語は常に入試科目になっています。かといって、予備校に問題作成を依頼することはできませんので、当然、大学としては自分の大学の教員に入試問題の作成を依頼しなければならなくなるわけです。その意味で現在のように英語がメジャーな入試科目であり続ける限りは、英語教員の需要がなくなることはないと考えられます。
国際化と英語教員の役割
文部科学省は、日本の大学生の海外の大学への留学の促進だけでなく、日本の大学にやって来る留学生の受け入れ促進も行っています。そのため、ある程度英語ができる教職員が必要です。しかし、実務を担当できる職員は多くないため、英語教員がサポートすることが多いのが現状です。また、オンラインで海外の大学と連携する「COIL (Collaborative Online International Learning)」などのプログラムも推進されており、こちらでも英語教員の協力が不可欠です。このような理由からも、大学で英語教員が不要になることは考えにくいでしょう。もちろん、教員ポストの需要が多いのに対して、応募者数も多い分野です。ただ、努力して実績をしっかり作ることで夢が叶いやすい分野ではないかと思います。
それでは、また次回の記事で。
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