大学教授になって英語を教えよう!:授業以外の業務
はじめに
大学教員の一番重要な職務は、授業を行うということですが、正直なところ自分が担当している授業以外では、ほとんど教育に関する義務はありません。高校までの校種では、生徒指導や進路指導、保護者面談などさまざまな教育的な職務があります。クラブ顧問も実質的には義務かもしれません。大学にもよって差異はありますが、そのような授業以外での仕事は大学ではほとんどありません。もちろんほとんどの大学教員は、質問対応や、自分のゼミ生に対する個人的な指導も行うのですが、これらはあくまで個人個人の学生に対応する業務であって、負担になるというよりも、むしろ楽しい仕事になるのではないかと考えます。これについてはまた別の記事でふれたいと思います。
会議への出席
さて、肝心の授業以外の業務としてですが、まず会議への参加があります。大学によりさまざまですが、まず教授会という会議に参加することになると思います。大学によっては、本当の教授のみが教授会に参加し、準教授、あるいは助教などの下位の教員は参加しなくてよいというケースもあります。ただ、大抵の私立大学の場合、専任の教員全員が教授会を構成するということが多いように思います。教授会は1ヶ月の間に1回あるいは2回程度しかありません。毎日集まって何かを議論するということはまずないと考えてください。次に学部内、そして、全学の委員会に所属することがあります。大学では例えば、教務委員会、学生委員会、広報委員会、賞罰委員会、研究支援委員会、国際交流委員会等さまざまな委員会が設置されています。こういった委員会に参加することも職務上の義務になります。これら委員会も、せいぜい1ヶ月に1回程度の開催となりますし、場合によれば、オンラインで開催というケースもあります。また、委員会によっては年に2〜3回しか会議が開催されないという場合もあります。1人の教員が複数の委員会に属するということもありますが、通常はそれほど大きな負担になるものでもないと考えられます。委員の職務上の負担の軽重についてはまた別の記事でふれたいと思います。
会議プラスアルファの仕事
もちろん、会議に出席しているだけ、必要に応じてその場で意見を述べる程度であればさほど負担にはならないのですが、時には会議で「宿題」が出ることがあります。これは大学全体の会議に学部代表として出席する場合に生じる問題です。時に、委員会の会議で、あることについての原案が提案され、その提案を学部に持ち帰るよう言われることがあるのです。この場合、学部長と話をして、次の教授会でこの提案を議論してもらう依頼をします。教授会ではこの委員会で提案された事項を報告し、教授会としての意見を聴取します。その後ですが、単に意見を集約して次回の全学の委員会で報告するだけでよい場合もあります。ただ、委員会提案に対して教授会の賛否をとってほしいと依頼されることもあります。この場合には教授会で賛否をとり、その結果を次回の全学の委員会で報告しなければなりません。なお、時には教授会の意思にかかわらず全学の委員会が強引に案件を学部教授会で承認させてほしいと要請してくることもあります。たいていの場合、このような厄介な場合には学部長があらかじめこのことを上層部から依頼されており、教授会でリーダーシップを発揮してまとめるように努力をします。ただ、その場合の主旨説明などのサポートは委員となった教員が行うことになります。学部としてはその案に反対である場合も、委員としてはその案を通すという立場で動かなければなりませんので、時に矢面にたつ必要があり、つらい立場になります。また、学部長がしっかりと教授会で議論をさばいてくれない場合には、さらにつらい立場になります。
入試問題作成業務
教員の義務として、さらに入試問題作成の業務があります。昔とは異なり、現在の大学入試の制度はかなり複雑になっています。つまり、1年に1回だけ普通の、いわば現在でいう一般入試の形の入試を実施して学生を選考するというだけでは、学生の確保ができないのです。そのような状況では、他大学の入試日程と重複していれば、当然受験可能な学生の数が減りますので、他大学の入試日程の状況をよく考えながら、自分の大学の入試日程を組まなければなりません。しかしながら、どうしてもバッティングはあり得ます。
多様な入試への対応
さて、上記のようなこともあり、現在の入試制度では、特定の高等学校を指定して推薦入試を実施する、いわゆる指定校推薦入試を実施することがあります。これは大学が過去の入学実績を見ながら良い学生を送ってくれる高等学校に対して、それぞれの学部に対して、2名とか4名といった定員枠を割り当てて、その枠内で高等学校に選抜した受験生を送ってくれるよう依頼するというものです。この場合、高等学校での選考がしっかりと行われているという前提のもと、入試そのものはせいぜい面接と簡単なエッセイを課すという程度になります。また、原則としてこの指定校推薦入試においては、受験生は原則として全員合格させることになっています。ひどい受験生がいた場合、不合格とすることも可能ではありますが、契約上それもなかなかできませんので、大学としては次年度には推薦枠を取り消すといった形での対抗措置が取られます。これとは別に公募制の推薦入試というものがあります。公募制の推薦入試というのは、高等学校の担任の教員、あるいは校長が推薦書を記載し、推薦書を添付して受験生が出願するというものであって、これは受験してきた受験生全員を合格させる必要はありません。一般入試と異なる点は、受験科目数が少ないといったくらいでしょうか。なお、これら推薦入試とは別にいわゆるAO入試という入試も行われることが多いでしょう。これは面接とエッセイなどの筆記試験のみで試験が実施されるものであり、例えば英語や国語、あるいは数学などの教科科目の試験はありません。ただ、この入試形態は総合型選抜という名前に変更している大学が多く、英語や国語などの科目の試験、ひいては大学入学共通テストも併用できるように変化してきつつあります。通常、私立大学においては、AO入試(総合型選抜)、指定校推薦入試、公募制推薦入試などは年内に行われます。これは受験生が早期に進学先を決めたいという希望にもマッチしているものです。年が明けると、1月の後半あたりから一般入試が始まります。ただし、一般入試についても一度きりではリスクがあるので、前期、中期、後期のようにたいていの場合3回に分けて実施されます。なお、これ以外に編入学、転入学入試、そして留学生入試なども実施されます。
こう考えるとかなりの種類の入試があるわけですが、それに対応してペーパーベースの入試があるとすれば、かなりの種類の入学試験問題を作る必要があります。特に英語については、どの種類の一般入試についても問題作成が必要になります。また、公募制推薦入試についても英語の出題はありますので、英語教員の入試問題作成の負担は一番多いといえるでしょう。入試監督など入試に関するさまざまな業務、そして入試問題作成業務については差し支えのない範囲で別の記事でまた詳述しますが、入試問題作成の作業はかなり負担になるのは事実です。ただし入試問題作成、あるいは入試監督については、給与とは別に入試問題作成手当、あるいは入試監督手当が支給されますので、その点他の委員会出席のための負担とは性質上異なってきます。
広報に関する業務など
各種委員の業務、そして入試業務以外に、最近では広報に関する業務がますます増えてきつつあります。これはオープンキャンパスやその他広報活動の行事に参加することです。広報関係の委員であるなしに関わらず、私立大学ではこういった広報活動への参加要請が増えてきています。18歳人口の減少にともない、学生の確保がますます困難になってきているため、私立大学だけではなく、国公立大学でもこのようなオープンキャンパス、あるいはそれに準じる行事は徐々に増加してきています。
これら以外にも授業以外の業務はあるのですが、ほとんどの場合は学部、あるいは全学の各種委員の業務に集約されると考えられます。代表的な委員の活動内容については、また別の記事で書いてみたいと思います。また、もう1つ重要な大学教員としての業務には研究活動がありますが、これについてはここでは割愛し、別の記事でふれたいと思います。
それでは、また次回の記事で。
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