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地方政府による土地売却額(p.195)の推移

中国でのマンション開発需要の減退を物語るものです。データの出元が政府統計ですから、実態はさらに悪いと見る必要があります(その理由については本書p.191参照)。20年から変調をきたし始め、秋に開発最大手の恒大集団が行き詰まった21年以降に、決定的に需要が消失したことを示しています
本書p.195では、この需要減退をマンションの販売価格が下落に転じた地域の数の推移で説明していますが、こちらの方がより直接的でしょう。
これに先立つ期間については、同じ日経の1年半ほど前の記事中の、下記を参照してください。なお以下の画像で藍色の棒グラフで描かれた推移と、冒頭の画像の赤線の折れ線グラフを対比してください。

先行する期間の推移を示すグラフ(藍色の棒グラフ)

中国の経済成長とは、その多くを不動産開発に負うものであって、経済発展の結果として地価が上昇するという通常のメカニズムによるものではないという点に関する指摘は、いうまでもなく本書の主要なテーマです。
社会主義市場経済の下で、いわば「自己目的化した経済成長」もしくは「不動産開発としての経済発展」という歪な発展メカニズムが20年かそれ以上も続いていて、事態は誰にも止められなくなっています
習体制が二期で終わっていれば、後継者がコロナ対応を軌道修正すれば済んだ話だったのですが、ロシアのプーチン体制と同様に、「終わらない強権政治」ないしは「権力から降りられない独裁者」(p.55参照)と化していますので、このまま破滅まで突き進むほかありません。このメカニズムの詳細については本書第10章を、中でも破滅に至るシナリオについてはp.198以下をご覧ください。
もともと禁じ手だった腐敗摘発運動の旗を振って敵を作りすぎ、権力から降りるに降りられなくなっていたところへ新型コロナが蔓延し、それがアメリカに飛び火して凄まじい死者が出ていた時分に、発生地でのロックダウンが功を奏して中国は一時的なコロナの抑え込みに成功します。ところがこれを国内的にアメリカとの体制間競争の優位性を示すものとして宣伝材料に使ってしまったがために、ロックダウンが止められなくなってしまっているのです(p.48参照)。中国製のワクチンは効きが悪いことに加えて、ロックダウンに頼りすぎたために高齢者への接種が進んでおらず、これを止めれば死者が抑えられなくなって、体制転覆につながるという自縄自縛です
ここへきて季節性のインフルエンザのように、上海や鄭州でオミクロン株の感染が広まりつつあり、これに対してその都度いつまで経っても都市封鎖を再開して対応するものですから、腰が折れてしまった景気も人口減少も止まりません。上海ディズニーランドも、10月31日に4ヶ月ぶりに再び閉鎖されています。

なお冒頭の画像(13-22年の推移)の元の記事は以下です。

また中段の画像(10-20年の推移)の元の記事は、以下です。

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政治経済学綜合note: 有賀敏之(福山大学教授/大阪公立大学名誉教授)公式I
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