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人生の全てを賭ける(致知2023年8月号)
対談『偉大な父の志を継いで』より
事故で両腕を失った創業者によって立ち上げられ、北海道有数の企業グループへと成長した北海道光生舎と、17年続く赤字を乗り越え、健康と環境に安心な無添加石けんへの初志を貫いたシャボン玉石けん。髙江智和理氏と森田隼人氏は、それぞれに父親の志を継いで両社の経営に邁進している。人生の悲愁を味わい尽くした先代の破格の生き方から、お二人は何を学んだのか。そしていかにして事業の継承を成し遂げたのかーー。
北海道光生舎理事長 髙江千和理氏とシャボン玉石けん社長 森田隼人氏は、それぞれが多大な困難に立ち向かい、それを乗り越えて大成功を収めた傑物を父に持つ、二代目の経営者である。
本対談では、それぞれが父親から受け継いだ志を、各種のエピソードを交えながら互いに語り合った。
事故により障碍を得ながらも0から事業を起こした髙江氏の父、髙江常男氏。
売り上げが百分の一まで下がり、百人いた従業員が五人まで減ってまでも無添加石けんにこだわった森田氏の父、森田光徳氏。
一見、何の接点もない両者の間には一つの共通点があった。
それは『自分が本当にやりたいと思ったことを、命懸けでやり抜いた信念』だ。
光徳氏のエピソードの一つに次のようなものがある。
資金に窮した時、自ら筆を執り『自然流「せっけん」読本』を出版し、それがベストセラーになったことで、十七年間続いた赤字が、ついに黒字転換を果たした。
今でこそ動画配信などによる自社のPR活動などは普通に行われているものの、当時のことを考えると、通常の営業活動とは全く違うと言ってもいいアプローチの方法だが、それでも自らの信念にこだわり、世間に発信する姿勢が成功を導いたことは間違いない。
『天は自ら助くる者を助く』とはこのことを言うに違いない。
そして、それが成り立つ条件もまた、対談の中から浮かんでくる。
それは『今世における自分の使命を正しく理解し、それを成し遂げるために生きる』ことである。
最近聞いたとある歌の歌詞に、こんなフレーズがあった。
「掛け替えのない人生なんだ。賭けないともったいないだろう?」
未だ私自身の使命は、それがどんな形なのかすら見えていないが、いつかそれを捉えることができたのなら、その時は迷わず自分の残りの人生の全てを賭けることができるよう、覚悟を決めて生きようと思うのである。