「日本の家計が値上げを受け容れている」理由

日本銀行の黒田総裁の「日本の家計が値上げを受け容れている」は、

東京大学の渡辺努教授のサーベイ👇を基にしている。

「馴染みの店で馴染みの商品の値段が10%上がったときにどうするか」 という問いに対する家計の回答

p.9

この4月に実施した調査では、日本の回答結果に変化がみられています。すなわち、値上げに対し、「他店に移る」との回答が大きく減少し、「値上げを受け容れ、その店でそのまま買う」との回答が、欧米のように半数以上を占めるようになっているのです。この結果自体は、相当の幅を持ってみる必要はありますが、ひとつの仮説としては、コロナ禍における行動制限下で蓄積した「強制貯蓄」が、家計の値上げ許容度の改善に繋がっている可能性があります。いずれにせよ、強制貯蓄の存在等により、日本の家計が値上げを受け容れている間に、良好なマクロ経済環境を出来るだけ維持し、これを来年度以降のベースアップを含めた賃金の本格上昇にいかに繋げていけるかが、当面のポイントであると考えています。

p.10

だが、おそらくこの仮説は外れている。家計は「コロナ禍のために消費が減った→結果的に貯蓄が増えた→値上げに寛容になった」よりも、値上げの主な理由が原材料の国際価格の高騰&円安だと知ったために、「値上げ圧力は全国に行き渡っている→他店も値上がりしている可能性大→他店に移っても骨折り損のくたびれ儲けになる→その店でそのまま買う」となったと考えられる。

仮説の妥当性は別として、「ひとつの仮説」として言及しただけでヒステリックに批判されるのはおかしい。悪い前例になってしまうので、黒田総裁も撤回するべきではなかった。

オリックスの宮内シニア・チェアマンが1994年に言った通りで、賃上げは株主に対する裏切り行為なのだから、コストプッシュインフレになっても企業には賃上げをする理由はない。👇は1994年2月の「舞浜会議」における宮内(オリックス社長)・今井(新日本製鉄社長)論争。

「企業は、株主にどれだけ報いるかだ。雇用や国のあり方まで経営者が考える必要はない」
「それはあなた、国賊だ。我々はそんな気持ちで経営をやってきたんじゃない」

失われた〈20年〉

宮内論が極めて左派的/リベラルなことにも注目(例:国家社会よりも個人の自由が大事)。その後の構造改革は従来の革新勢力も支持したから成功した。

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