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僕の恋愛小説【第20章 恋愛の楽しみ方①】


二回目のデート

職場の同僚マリコとの最初のデートからしばらくして、飲みにまた誘ってみた。

「先日はありがとう。お酒の美味しいお店を教えてくれるって言ってたけど、今週とかどうかな?」
「そう言えば、そんな話したわね。今週は飲み会とかでもう一杯なので、来週の木曜日とかどうかしら?」
「さすが、人気者だね。来週の木曜日大丈夫だよ。予約お願いして良いかな?」
「人気者って訳じゃないけど。分かったわ、予約入れとくわね」

女友達や職場の飲み会によく誘われる彼女だったので、すぐにとはいかなかったが、次の週に約束する事が出来た。

関東に独り身で移ってきた事で、女性と出会うために色々出かけられるものと思っていたが、土地勘を付けるというか、住んでいる環境に慣れるのにも時間が必要で、休日には家の周りを歩き回ってみたり、職場とは反対方向の街へ行ってみたり、一人で出かけてる事の方が多かった。

そうやって色々出かけてみると、それぞれの街にも個性があり、そこに集う人の年齢やタイプなどが違っているのが分かってきた。よく言われる、若者の集まる街とか、ファミリー層が多い街とか、そんなのが感覚で分かるようになってきた。

僕やマリコが住んでいる周辺には、そういう街で見られる大型のショッピングモールはなく、いわゆるベッドタウンになっていて、駅前にスーパーなどの食料品店があるくらいで、少し離れると、落ち着いた戸建て住宅や低層マンションの街並みが続いていた。そういう場所だと、チェーン店のレストランや居酒屋などの見慣れた店構えは駅前にあるくらいで、家への帰り道の途中に落ち着いた外観の年齢層高め向けのところの方が多かった。マリコはそんな中の一つ、日本酒とお惣菜の美味しいお店の予約をしてくれていた。

高まる恋心

約束の日、就業時間の終わり頃にたまたまエレベーターで一緒になったと言う感じでマリコと落ち合い、お店のある駅まで電車に乗って行った。その日は終業後にすぐ帰る人は少なく知っている人には出会わなかったが、もし出くわした時に備えて、帰る方向が同じで、たまたま帰る時間も同じだったので一緒になったという事にし、変に勘繰られないようにしておいた。マリコの提案だった。

「今日のお店はどんな感じ?」
「お魚料理の美味しい店で、それに合う日本酒もたくさんあるわよ」
「それは、楽しみだね。日本酒もいけるんだね。どんな日本酒が好きなの?」
「そうね。あまり甘くなく口当たりのいいのが好きかしら」

ネットサイトで知り合った女友達は、あらかじめプロフィールなどから相手の恋愛対象や恋愛状況が把握できたので、相手を知るための会話にそれほど時間をかける必要はなかった。

今回は事前にそういう情報を得る事なく職場での対面から始まっているので、相手の気持ちや恋愛状況など分かるはずもなく、恋愛感情を最初から出さずに、段々と相手の恋愛状況を探るような感じで会話をしていた。今日は二回目のデートなので、少し踏み込んでみようと思っていた。

「僕もそう言う味わいの日本酒が好きだよ」

マリコは飲み会にもよく誘われていて男友達も多く足らい方がうまそうだったので、まずは、当たり障りのない所からと言うことで、共通の話題であるお酒の話から始めた。興味を引くためには共感するのが良いので、マリコの好みに合わせて返答しておいた。もちろん、日本酒も好きなのは嘘ではない。

「あら、それは良かったわ。他にも味わいの違うのが何種類かあるわよ」
「他にお勧めのがあれば、それも飲んでみるよ」

店に着くとカウンターに案内され、並んで座った。
マリコがメニューや店に貼ってある「今日のおすすめ」を見ながら、料理とお酒を注文してくれた。生ビールで乾杯をし、お店おすすめのお造りや煮付けなどどれも美味しい料理ばかりで、日本酒の量も自ずと増えていった。

「この魚料理に、この日本酒ってすごく合うわよね」
「ほんとだね。飲みなれてるよね」
「いやだ。私の事じゃなくて、お酒の話をしてるのよ」
「選び方が慣れてるなって思って」

酔いも回り始め会話が成り立ってない部分もあったが、料理と酒の組み合わせに舌鼓を打ちつつ、隣の席から眺める日本酒を飲んでいるマリコの横顔にも見惚れていた。それとなく胸の膨らみを注視したり、ほんのり赤らんだ顔を見ているのは、心地よかった。

「もう新しい職場には慣れたのかしら?」
「職場はもう大丈夫かな。この辺はあまり知らないので、住環境に慣れるのにもう少し時間かかるかも」
「それに時間がかかるのはしょうがないわね。慣れるしかないもの」
「色々教えてくれる?」
「そうね。私もこっちに来てまだ2年くらいだし、知らない事も多いけど。飲むお店なら任せておいて」

マリコは赤らめた顔でこちらを見つめながら、そう言ってくれた。マリコも異動組みだったので、親切に対応してくれたのだった。

ドキドキ感満載の何となくな感じで始まった恋愛感情は、マリコとのこういう会話を通して段々と高まっていった。ただ会って話すだけの関係から、相手に信頼を寄せつつ頼れる関係になっていくと、恋愛感情が高まる感じがする。その分、うまくくっつけず離れる事になった時の不安感も覚えるようになるが、この高まる感じが恋愛の醍醐味なんだと知るようになった。

初めてのキス

一通り食べて、飲んで満足したので、お店を後にする事にした。マリコの家はそのお店のある駅と同じだったので、家まで送ることにして、内心家の様子も見せてもらおうと思っていた。今日の料理とお酒の感想を言い合いながら歩いているうちに、家の前まで着いた。

「送ってくれてありがとう。また、明日ね」
「さっき話してたけど、どんな間取りか興味あるんで、見せてもらってもいい?」
「少しだけなら・・・」

会っている時間を引き伸ばすための時間稼ぎのような感じに、要件を伝えてお願いしたら、何とか引き延ばせた。僕は高まった恋心を叶えるために、マリコともっと近づいておきたいと思っていた。部屋の玄関に着いたとき。

「散らかっているから、玄関までね」

マリコはそう言って部屋の鍵を使って、ドアを開けた。玄関まで入れてもらうと、僕の部屋と同じ1LDKの間取りで、玄関から見渡せるくらいの広さだった。

「参考になるかしら。どこも同じなんじゃない?」

部屋の中に入って灯りをつけて戻ってきたマリコは、そう言って僕の方に寄って来たので、思わず抱きしめてしまった。少し戸惑いがちなマリコの顔をそっと持ち上げ、唇を奪った。

「今日は酔っ払ったちゃたし、ここまでにしといて」

キスをしながら抱きしめて、背中から腰の辺りまで手の先でツーッとなぞって、お尻に右の手の平を載せて柔らかく掴んで、左手で胸の膨らみを下からそっと持ち上げた時、こう言われた。

「急過ぎた?」
「・・・。まだ、ヒデさんの事よく分からないし」

この先、手がどう動くか予想して、先に進む前に止めておきたかったのだろう。

恋心を抱いたら、相手を抱きたくなるのは自然な本能である。恋愛を進めるのに、デートの度に段階を踏見ながら進めた方が良いのはあるとして、こういう状況は久しぶりのことだった。マリコに対する恋のドキドキ感は、会う度に段々と高まってきているので、この後の展開は、次の楽しみとして取っておくことにした。

「また、会ってくれるよね?」
「ええ・・・、美味しいお酒を飲みに行きましょう」

マリコが僕にどういう感情を持っているのかは分からなかったが、この後もデートを重ねてくれると言うことなので、マリコの気持ちを確かめながら恋愛の段階を踏むことにした。
とは考えみたものの、次の段階は何だろうと言う疑問が段々と湧いてきて、次は僕の部屋に来てもらうことかなと考えて、マリコの家を後にした。

異性に対する憧れというものが、恋愛という形を取って、お互いに好きになり身体を重ねる。そういう過程についてこれまで何となく流れに任せて辿っていたのだが、今回あらためてその過程の進め方について考えさせられる事になった。

これまでも、相手の事が好きになり、身体を重ねた後もモヤモヤ感が続く事はあったが、マリコとの恋愛は、どうも様子が違いそうな事に気がついた。身体を重ねることよりも、「好き」の方により大きな期待があるのではないかと思い始めていた。

会うたびに僕の中の好きという気持ちが段々と高まるにつれ、マリコにももっと僕の事を好きになってもらいたいと考えるようになっていた。これは、「好き」になることに伴う独占欲なのだろうか。この時はまだそういう感情に対して冷静になれない僕がいた。

実は、マリコの慎重さには理由があったのだが、それはこの後、恋愛の段階を重ねる事により知る事になる。

この恋愛の物語は、まだまだ続く事になる。

心に響いたBGM:ORIGINAL LOVE(オリジナル・ラブ)/接吻-kiss-

#セクシャルなひらめきで潤いのある生活を
#僕の恋愛小説

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