【Startup Career Pitch】 HRのプロが選ぶ、有望スタートアップはココだ!③株式会社RABO
すべては、猫様のために。
市川:では伊豫さん、お願いします。
伊豫:我々はCatlog®(キャトログ)という猫様専用のIOTサービスを展開しています。我々にとっては猫がお客様ですので、呼び捨てにしないで「猫様」と呼んでいます。プロダクトの詳細は後ほどお話させていただきます。
簡単に自己紹介をしますと、もともと大学院でバイオロギングを研究していました。小型のセンサーを動物の体につけて、動物の行動データを人間が解析するという研究手法でして、このバイオロギングを事業に応用しているわけです。
研究自体、非常に楽しかったのでそのまま博士課程に進むか迷ったのですが、一度社会に出て研究の対象種を人間に切り替えてみるのもいいか、とリクルートに入社。10年間でプロダクト開発、新規事業開発、ホールディングスの広報などに従事しました。その後、2018年2月22日の猫の日に起業しました。
私も愛猫家の1人であり、30年近くずっと猫様と一緒に暮らしています。
弊社にはブリ丸というCCO(Chief Cat Officer)がおりましてブリ丸は今日も実際に午後ずっと取材対応に同席するなど業務をこなしてくれています。
もう1匹はアシスタントのおでんで、この2匹と一緒に暮らしております。
調達の状況としては、直近のラウンドが今年の春のシリーズBで13億円調達しており、累計で20億円ほど調達しています。この額は日本のペットテックでは現時点では最高の調達額です。
調達額が大きければ偉い、というわけではないのですが、非常に経験豊かな株主様に恵まれていて、シリーズBでは猫様のシステムトイレのシェアトップのユニ・チャームさんにも株主に入ってもらっています。
メディアへの露出では、ありがたいことにいろいろと取り上げていただいています。最近ではAmazonのテレビCMに私とブリ丸とメンバーが出演しています。AmazonさんのCMで猫が出てきたと思ったら弊社ですので、ご認識いただけるとうれしいです。
Catlog®について
次にプロダクトについてお話します。1つ目のプロダクトがCatlog®という首輪型デバイスです。こちらが私の研究してきたバイオロギング技術を応用していて、AIで猫様の首につけたデバイスより取得した行動を計測、アプリで見ることができるというものです。
現在7種類の行動を取得していて、寝る、くつろぐ、水を飲むなどですね。
体調に変化がないかを見れるようになっています。
アプリの画面を見ていただくとわかるのですが、アニメーションで表現しています。弊社では、デザインを創業初期から重要視しておりまして。デザインといっても見た目だけでなく体験まで含めたビジュアルコミュニケーションですね。
アニメーションで見せたり、一日の流れをタイムラインに表示したり、データで推移が定量で図ることができたり、家族はもちろん獣医師も同じデータが見れるような工夫を施しています。健康管理にも使えますし、何かあった時や病気の予兆についてお知らせする機能もあります。
Catlog Boardについて
2つ目のプロダクトがCatlog Boardという、トイレの下に敷くボード型デバイスになります。これで体重、おしっこやうんちの量、回数、トイレに入った時間など全てのデータをアプリで確認できるものです。
Catlog®とCatlog Boardはそれぞれ単体でも使えますが、両方を使うことでかなりの量のデータが取得できるようになります。現在、ほぼ完璧といっていいほどの猫様に関するデータが計測できていて、最近だとアップルウオッチもかなりヘルスケアに寄せてきていますが、人間よりも猫のほうが先に行っているということで、ほとんどのデータをCatlog®で取得できるということになっています。
このデータは飼い主さんだけでなくて獣医師さんからも関心が高い情報で、当然のことながら動物は自分の意志で病院にいくことはできませんよね。人間が目に見えて気づいたときにはもう手遅れということも少なくないわけです。
Catlog®側では家族よりも先に、ゆらぎをキャッチしてそれを獣医師さんに連れて行くべきかどうかの判断にも使えるようになっています。
実際にSNSには利用者様の声がたくさんあがっていて、飼い主さんの早期発見事例はどんどん積み上がって来ている状況です。獣医療との連携もデータを使って続けています。
ビジネスモデルについて
デバイス販売料金と月額ご利用料金のサブスクリプションというIoTのSaaS型ビジネスモデルです。特徴としては非常にファンの方が多く、一度使い始めるとやめない方がほとんどです。ですので年々利用者が積み上がっているサービスとなっています。
また、データベースの件数は世界一といっても過言ではないのですが、Catlog®で取得している猫様の行動データは60億件を超えています。このデータベースを使ってさらなる事業展開を手掛けているところです。
グローバル展開も創業当初から狙っています。猫様の行動は世界共通ですし、人間のようにローカライズの必要もありません。
今年、CESという世界最大の家電や自動車など電子機器関連のカンファレンスに出展し、来年も出展が決まっています。このあたりから具体的なグローバル展開を進めていく予定になっています。
メンバーについて
デザインを主軸にしていると先ほどお伝えしたんですが、VPの2人がデザイナーだったり、獣医師でBizDevまわりをやっているメンバーなどバラエティ豊かなのですが、プロダクト開発に長けたメンバーが多いのが特徴です。
猫様と暮らしていなければウチの会社には入れないのかというとそんなことはないのですが、ただ飼っている人、好きな人が多いのは事実です。現在合計猫様30匹ですね。社員は現在23名で、CCO配下に私も含めて猫様のために働いているという人間組織となっています。
現在の募集に関しては職種で括るのではなく、常にいくつかの経営issueがテーマとしてあるので、そのissueに興味がある人をお迎えするスタイルをとっています。
直近では、たとえば社内のエンゲージメント向上、リスクマネジメントだったり、CS組織設計、ESG経営・推進などもグローバル経営には必須だったりしますし、こういったことも進めていきたいと思っています。
駆け足でのプレゼンとなりましたが、我々の上位概念として「すべては、猫様のために。」というところでやらせていただいております。
ありがとうございました。
驚異のクラファン達成率5000%!
市川:ありがとうございました。RABOさんが手掛けられているのはソフト・ハードを両輪で手掛けるという、かなり立ち上げ難易度の高い事業だと認識しているのですが、このような事業をやってみようと思った背景、創業の背景をお聞かせ頂けませんか?
伊豫:それはもう私がずっと猫様と暮らしてきたのが大きいですね。どれだけ一緒にいても日々の体調変化に気づきにくいんです。昨日、先週、先月、去年…飼い主が見てもわからないのはなんでだろう、という素朴な課題感が根底にありました。
で、そういえば自分は動物の見えない時間を見えるような研究をやっていたじゃないか、と。そこにリクルートで培ってきたプロダクト開発やマーケティングを組み合わせることでこれは事業可能性があるんじゃないかというのが起業の背景になります。
市川:ハードって最初の資金調達にまわるとき、実際のモノが見せられない難しさがありますよね。立ち上げ期はどうやって資金調達し、サービスをローンチしたのですか?
伊豫:最初は自己資金と、あとはおっしゃる通りモノがないのでイメージを絵にしたり、100均で買ってきた粘土で作ったものをブリ丸の首に付けて大きさを確かめたり。あとは海外ではペット向けのウェアラブルデバイスも多いのですが、それを参考にしたり。できるだけイメージがつくような形で進めていきました。
市川:あとクラウドファンディングがものすごくバズっていましたが、あれもひとつの転機になったりしましたか?
伊豫:そうですね、クラファンは資金調達やいろんな目的でお使いになる方がいらっしゃいますけど、ウチの場合は認知の拡大でしたね。まったく新しい概念のプロダクトで、これまでにないものだったので。
クラファンはマクアケを利用したのですが、マクアケの広報さんにもご協力いただいてメディアへの露出を仕掛けたりしました。あとはPMFの確認ですね。市場、ニーズが果たしてあるのかどうかの最終確認でもありましたね。
市川:クラファンは達成率もすごい数字だったような気がしますが…
伊豫:最初のCatlog®が1500%超え、2回目のCatlogBoardが5000%超えでしたね。資金調達が目的ではなかったので目標金額の設定が低めということもありましたが、2回目は特に集まり方がすごくて、私たちも驚きました。
プロダクトも組織もさらなる洗練を
市川:初期のプロトタイプはできたとして、その後の事業の立ち上げ、これをどうくぐり抜けたのでしょうか。ソフトもハードも、となると組織づくりも結構いろんな人を集めないといけないですよね。
伊豫:ソフトに関しては私をはじめ、経験があるメンバーが多いので心配ないのですが、ソフトとハードと機械学習の3つを開発する必要があったので大変ではありましたね。
ハードについてはアドバイザーに意見を聞いたり工場で質問を重ねるなど、外部の力をお借りしながら進めていきました。
機械学習に関しては蓋然性は最後作ってみるまでわからなかったんですが、私がバイオロギングの研究をしていたので解析の現実味にはある程度の見立てがありました。
ただ海洋動物で進めていたのを陸上動物の、しかも猫様はジャンプしたり3Dで動くので、解析かつ商用リリース基準を満たすかどうかはリリース直前まで調整していましたね。
西村:プレゼンを聴きながら難しい事業をしっかり立ち上げられていて、今後かなり順風満帆にいくんじゃないか、と感じました。課題や壁に対して前向きにチャレンジしようとする人が応募してくるのではないかと思いますが、今後の組織づくりの方針について教えて頂けませんか?
伊豫:ここからさらにユーザーの裾野が広がっていくことで、これまで以上にきちんとしたプロダクトのクオリティが求められるようになると思っています。さらに企業としても2桁億円以上の資金調達をして、お客様も増えている中で、ガバナンス含めた会社としての強い体制構築は私の中でのマインドシェアが高いテーマとなっています。
もうひとつはグローバル展開ですね。プロダクトとしてはやりやすいけど、とはいえグローバル基準で見ても新規性高いプロダクトなのでどこの国からやるのか。go or no goのジャッジポイントはどこに置くのか。論点整理からやる必要がありますね。経営チームには経験豊富なメンバーが揃っているとはいえ、まだ足りていないピースがあると感じています。
西村:メンバーのラインナップを見るとパートナー含めて相当優秀な方が入っていますが、みなさんどんなモチベーションで働いていらっしゃるんですか?
伊豫:事業自体の面白さ、新しさがあり、さらに手前味噌なんですが、成功しそうだなと思っていただける事業内容でもありますので、やはりそこに強く惹かれて集まっているメンバーで構成されています。
あと、このフェーズのスタートアップにしてはシニアなメンバーが多いので、自立自走していますね。採用プロセスにワークキャンプといって、トライアルを挟んでいるんです。Slackに入ってもらって実際の業務をやってもらう。これが会社の雰囲気や実際の働き方の理解が進む、と好評です。トライアルの時に、こんなに色々なものを一気に作っているんだ、と面白さを感じていただけているようです。
西村:伊豫さんはリクルートのご出身です。リクルートと言えば組織づくりが上手い企業という認識なのですが、伊豫さん自身に組織づくりのポリシーってあったりしますか?
伊豫:私は逆にリクルートではピープルマネジメントの経験がほとんどないんです。ただひとついえるのは私ができないことはできない、と明言すること。人を頼りまくるスタイルといいますか。もう、みんな仲間だと思っていて、VCキャピタリストさんにも困ったことがあると、すぐにメッセンジャーで相談するんですよ。周囲を巻き込んで組織を作ってきたのが強みかなと思いますね。
最後の巨大マーケット、ペット市場
市川:伊豫さんから見てペット市場は今後どうなっていくと思われていますか?
伊豫:家族という概念が強くなってきていますね。家族の一員として、人間の市場と同じような市場規模になってくるんだろうなと思います。
その中でのヘルスケアはますます重要になるでしょう。大事な家族なのでどうでもいいと思っている人はいないと信じたいのですが、家族の一員としてやってあげたいことにお金を払うのは数も額も増えてくるはず。実際に海外でも相当な市場規模になってきています。投資家の中には最後に残された巨大マーケットという人もいるぐらいです。
市川:そういった中でRABOさんの今後の事業展開を教えてください
伊豫:国内だけでも60億件の膨大でユニークなデータがあります。どこの猫様がどこで何をどれぐらい食べて、どんな運動でカロリーを消費して、どれぐらい寝ていて…というデータを持っているのは世界を見回してもウチしかない。そこにユニ・チャームさんも興味を持って株主になっていただきました。
この膨大なデータを元にした新規事業を考えていて、より体調管理やヘルスケアに特化した事業展開を考えています。
市川:最後に、具体的にこういう人を採用したいという人物像があれば教えて下さい
伊豫:シンプルにいえば何らかのプロフェッショナルな強みがあって、猫様が嫌いでなければ一度、弊社を見ていただきたいです。
弊社のカルチャーの1つとして、社員に業務の染み出しを推奨しています。
エンジニアでいうとバックエンドをやってた人がSREやインフラも手掛けたり、デザイナーもアプリ画面設計だけでなくパッケージやベルトのデザインを手掛けたり、マーケもデジタルだけでなくオフラインにもチャレンジする、などなど。
とにかく「Catlog®を世界中の猫様に広める」というアジェンダですので、何かの分野のプロで弊社の事業に興味がある方はぜひお話してみたいです。
市川:本日は貴重なお話をありがとうございました!
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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