【PR NOW#16】PR発想のパーパス・ブランディング
はじめまして、プラチナムの浜木です。
今回は全てのコミュニケーション、経営と切っても切り離せない重要な要素であり、近年トレンドワードになっている「パーパス」について取り上げたいと思います。
個人的に、ここ数年外資系企業を担当することも多く、早くからパーパスを軸としたブランディング「パーパス・ブランディング」に携わってきました。
全てのコミュニケーションを考えるにあたってまず目先の売上よりも何よりも「パーパス」が起点となります。
実施する施策においてもパーパスから逸脱するものは認められません。
パーパスの実現を目指し、その先に販促やPRの最大化、そして売上貢献に繋げるという考え方です。
スターバックスであれば、「人々の心を豊かで活力あるものにするために──ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」。
パタゴニアであれば、「故郷である地球を救うためにビジネスを営む」。
ユニリーバであれば、「サステナビリティを暮らしの“あたりまえ”に」。
みな、パーパスの実現ありきでビジネスを営んでいます。
パーパスは「今現在の社会軸での存在理由」
そもそもパーパスとは何なのでしょうか?
よくパーパスは「存在意義」と訳されることが多いですが、「企業やブランドが何のために存在するのか?」という問いへの答えがパーパスです。
よくミッションやビジョンと何が違うのかを聞かれますが、
ミッションは「私たちは何をすべきなのか」という「What」を語っているのに対して、パーパスは「なぜ私たちが存在するのか」という「Why」。
ビジョンは企業が目指す理想的な「将来像」を語っているのに対して、パーパスは「今現在」での企業が存在している理由。
そして、ミッションやビジョンは「企業軸」の目的や目指すべき指針とされることが多い中で、パーパスは「社会軸」でみた存在理由のことです。
まとめると、「今現時点において、その企業・ブランドが社会から必要とされる存在理由」ということです。
より本質的に、今の時代性を捉えた企業・ブランドの根幹を明確かつシンプルにまとめたものになります。
パーパス・ブランディング=PR?
パーパス・ブランディングとは、企業やブランドの根幹であり拠り所になるパーパスを軸に、アウター・インナー問わず様々なコミュニケーションを一貫させること。
そしてその先に、世の中やステークホルダーからの企業・ブランドの評判を形成することです。
私は様々なパーパス・ブランディング施策に携わってきましたが、パーパスという明確に言語化された軸ができただけで、コミュニケーション方法は「PR(Public Relations)」の考え方に非常に近しいと感じていました。
そもそもPRは広告とは違いすべて「社会起点」で語るコミュニケーションです。
社会、そして様々なステークホルダーと良好な関係性を築くために、社会が良くなり、ステークホルダーも喜び、企業の評判形成や利益にもつながる、まさに「三方良し」を目指す考え方と捉えています。
これは、パーパス=社会的な存在理由を確立することと同義ではないかと思っています。
パーパス・ブランディングにおける施策を成功に導くポイントは、まさにこのPR発想の3つのポイントを抑えることが重要になってくると考えています。
ここからは、企業・ブランドのパーパスを軸に社会・ステークホルダー・企業が三方良しの結果を得られた、弊社が手がけた事例をご紹介します。
リプトン:「大切な人との確かなつながり」を実現するコロナ禍のキャンペーン
世界的紅茶ブランド「リプトン」は、数年前からパーパスを軸としたコミュニケーションにシフトしていました。
あらゆるもののコモディティ化が進む中で、日本でもたくさんの紅茶の選択肢があります。
ユーザーが紅茶コーナーで単純に価格やパッケージの印象だけで選ぶのではなく、「やっぱりリプトンを選ぼう」と思ってもらうために、パーパスを通じたお客様との関係構築に力を入れていました。
リプトンのブランドパーパスは「Be awake to quality connections(大切な人との確かなつながり)」。紅茶を飲むことで生まれるちょっとした心の余裕から、大切な人とのつながりに気づいて欲しいという願いをもっているブランドです。
そんなリプトンにおいてパーパス軸の様々な施策を行ってきましたが、このコロナ禍で手がけた2つのキャンペーンをご紹介します。
2020年4-5月、まさにコロナによるパンデミックが広がり1回目の緊急事態宣言下の世の中。
当初企画していた施策を取りやめ、まさに今の世の中だからこそ、ステークホルダーである顧客にとって「大切な人と人とのつながり」を支援できる方法はないかと考えました。
STAY HOMEを掛け声になかなか人とは会えない状況が続く中でも、大切な人とのつながりは大事にしたい。
そんなインサイトを捉えて、「つながろう、心と心で。STAY HOME, STAY CONNECTED. 」をテーマに、大切な人に紅茶と一緒にメッセージを送る「リプトン茶中見舞い」というSNSキャンペーンを企画しました。
リリースしてすぐに、企画の口コミがSNSやWebを中心に広がり、リプトンに対する好意的なコメントも増えました。
大切な人と会えていない時期だからこそ、リプトンのパーパスにも共感し、心に響く人が多かったのかなと思っています。
続いては、2021年の4月。まさにwithコロナ時代でリモート生活も当たり前になり、多くの企業ではまだ在宅ワークが続いている状況でした。
そんな社会背景の中で、多くの人が週で一番憂うつに感じてしまう月曜日「ブルーマンデー」に着目。
コロナ禍において在宅ワークが浸透し、会社への移動時間もなくなり同僚との雑談も減り、仕事を開始するまでに気持ちの切り替えができない人が増えているのではないか。より一層「ブルーマンデー」を感じる人が増えているのではないか。
その仮説の元、もっと“大切な人たちとのつながり”を大事にし、雑談などポジティブなアクションを増やすことで、憂うつに感じる月曜日をハッピーでイエローな1日にぬりかえるプロジェクト「YELLOW MONDAY ~イエローマンデー~」を開始しました。
まずは社内で、毎週月曜日の午前中、紅茶を飲みながらオンライン上で雑談をする「YELLOW MONDAY TIME」を導入。
同時に、毎週月曜日に嬉しいプレゼントがもらえるSNS上でのキャンペーンを実施し生活者も巻き込みました。
さらに徐々に賛同企業も増え、様々な企業で「YELLOW MONDAY」に関連した取り組みが実現していきました。
ブランドパーパスとしての“大切な人とのつながり”を軸に、社会性を捉えて、ステークホルダーのニーズを掴み、ブランドの提供価値で課題解決に繋げていく、まさにリプトンが実現するパーパス・ブランディング施策です。
ヴァセリン:「誰かのために頑張るあなたの手を守りたい」を実現するエッセンシャルワーカーへの寄付プロジェクト
ユニリーバのスキンケアブランド「ヴァセリン」は、ブランドパーパスである「全ての肌を癒し健康に、全ての人が積極的に人生を楽しめるように」という考え方のもと、2015年より「ヴァセリン・ヒーリング・プロジェクト」をグローバルで展開しています。貧困・災害・紛争など様々な困難を理由に、肌の健康を維持することが難しい人々の肌の健康を取り戻すことのサポートを目的に、医療が届きにくいインドの農村部などへピュアスキンジェリーや医療品を届けるなどの活動を行い、2020年5月時点では世界で500万人以上の方をサポートしています。
日本でも2020年から本プロジェクトがスタートし、「誰かのために頑張るあなたの手を守りたい」という独自の想いを掲げ、ステークホルダーの医療従事者・福祉事業者へヴァセリン商品の寄付を実施しています。
2021年の本プロジェクトでは、より多くの医療従事者・福祉事業者の方々をサポートするために、エッセンシャルワーカーが困っている実態をより多くの方々に知ってもらい、プロジェクトが広く認知される仕組みをご提案しました。
社会背景としてエッセンシャルワーカーの「アルコール消毒の回数」と「手荒れ」の関係性に着目。
コロナ禍に前線で働く医療従事者や多くのエッセンシャルワーカーにとって、患者やお客様と接する度にアルコール消毒の回数が増え、必然的に手荒れリスクが高まっているのではないかという仮説を立てました。
実際に知人の医療従事者にヒアリングを行っても、現場でアルコール消毒のルールが徹底されており必然的に回数は増加、それに比例して手荒れに悩んでいる方も増加しているという実態も明らかになりました。
そこでエッセンシャルワーカーのアルコール消毒の平均回数を調査。
看護師にいたっては1日平均84回という衝撃の結果が浮き彫りになりました。
そのリアルの数字を元に、「ヴァセリン・ヒーリング・プロジェクト」の取り組みを伝える動画を制作。
SNSを中心に公開し、生活者の共感と拡散につながり、多くの医療従事者・福祉関係者の方に情報が届くことになりました。
結果、全国の医療・介護・保育施設など、延べ53団体からご応募をいただき、約4,000個のピュアスキンジェリーを寄付することに成功。
まさに、「誰かのために頑張っているエッセンシャルワーカーの手を守る」というパーパスの実現につながった事例となりました。
パーパスの実現は一日にして成らず
以上、2ブランドの事例をご紹介しました。
繰り返しになりますが、
パーパス・ブランディングにおける施策を成功に導くポイントは、
の3つを抑えることです。
まさにPR(Public Relations)の発想を以てして取り組めば、自ずとステークホルダー間で共感が生まれ、情報の拡散を生み、パーパスの実現に近づきやすくなると考えています。
ただ、最後に1つだけ。
成功事例としていくつかの施策をご紹介しましたが、これはパーパス実現に向けたプロセスの一部です。
1回の施策で大きくパーパス実現に向けて前進することはあっても、達成するまでは長い道のりです。
稀にパーパスをつくること自体が目的になり、パーパスを掲げるだけで何も変化が生まれない企業やブランドも存在します。
パーパスが社内外に浸透するためには、パーパスに紐づいたアクションをし続け、成功体験を重ねる必要があります。
「パーパスの実現は一日にして成らず」
全てのコミュニケーションをパーパス軸で実行し、本当の意味でのパーパス・ブランディングを実現しましょう。
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