マーケッターが広告代理店を選定(ピッチ)するときにやること。そして、そのテクニック。
企業のマーケティング部やデジタル、広報等の部署に配属になると、社外に非常に重要なパートナーが存在します。それは広告(or PR)代理店やクリエイティブエージェンシーと言われる人たちですね。
彼ら彼女らに活躍してもらうことがあなたの事業の成否だったり、個人的な会社での評価に関与することになるので、マーケッターのスキルの一つとして代理店との付き合い方および、マネジメント手法はとても重要です。
本ノートでは、そのエージェンシーを選定する際のノウハウについて書きたいと思います。
会社によって、エージェンシーを選定するタイミングはそれぞれです。例えば、外資系企業であれば1~3年に一度、エージェンシーを決める大規模なコンペをすることが多いし、新規事業や会社立ち上げ時であれば思い立ったらすぐに実施、ということもあるし、Time is moneyのベンチャーであれば、思った通りの成果が見込めないと判断したら即解約(および変更)する、といったケースもある。また、わりと大きめの予算のある企業であれば、キャンペーンごとに、エージェンシーピッチ(コンペ)をしたり、ということもあります。
私も何度もピッチをやって、評価して、実行して、再評価して改善して、、というのを繰り返してきたので、勝ちパターンは何となく熟知しているつもりです。
その中で、特に意識しているのがマーケティングのパートナー選びは、
「あなたの事業およびマーケティング戦略を、あなたが思いつかない戦術をもって実行してくれる人が探すこと。」
だと思っています。
前半の「あなたの事業およびマーケティング戦略を」については、まず、自分でちゃんとマーケティング戦略を策定し、資料にも落としているか、というのが重要。当然、自分の事業については自分が最も詳しいのと、誰よりも強いオーナーシップをもっているはずなので、自分で戦略を描けているかが重要。
「僕は広告はまだ初心者なので・・・」とか「SNS詳しくなくて・・・」といって、オリエンする領域のKPIとは縁遠い、会社から与えられた事業KPIだけを提示して、あとは専門家として考えてください、というのでは良いパートナーを見つけることはできない。(当然、ピッチに出てくるエージェンシーの方は超優秀な方々なので、確実に見透かされています。)
さらに、後半の「あなたが思いつかない戦術をもって実行してくれる人」については、スキルが高く経験の豊富なマーケッターの人は結構やりがちなのですが、全てを自分で考えてしまい、代理店を手足として使うだけになっている人がいます。結果的にこうなってしまう気持ちもわからなくはないですが、これでは仕事をスケールできないです。専門家のクリエイティブなアイデアを引き出し、彼らとともに誰も到達していないところにもっていくのがマーケッターの超重要なスキルです。
よく、エージェンシー選定後の実行フェーズになって、プレゼン時とは違って実行力がなかった、とか、実際はダメだった、という話はこの業界ではあるあるですが、それは自分の頭で必死に戦略を練って、エージェンシーに本当にやってほしいことをリクエストし続けることで、よいものができるし、プロフェッショナルで素晴らしい信頼関係が築けると思います。(こだわって、それをやり続けている企業マーケッターの人は意外と少ない、というかほとんどいない。)
あと、個人的に一つ、これはわかりやすい小技を紹介しておくと、
私は、エージェンシーピッチのプレゼン時には必ず、レポートを提出してもらうようにしています。
パワポで作られたキレイなレポートではなく、生々しいExcelの運用レポート。
それは例えば、大規模広告(マス+デジタル)で認知・興味を獲得していくようなキャンペーンであれば、広告主から提示している主要KPIに対し、それを日々あるいは週次でどのように達成していくかをトラッキングしていくレポートです。
このExcelを見ると、その人が何をどうやって実現しようとしているのか、考えが手に取るようにわかります。この人はコンセプトを語るのは得意だけど、実際ロジカルに数字には落とせていない。どうやってコンセプトを具現化し、KPIを達成していくかという論理構造はまったく持ち合わせていないとか。あるいは、この人は広告やデジタルの知識は豊富だけど、高速にPDCAを回してゴールに迫っていくような設計およびチームマネジメントはできそうにない、とか。それが日次or週次レポートを見ると想像できるのです。
結構厳し目のことを書いてしまったかもしれませんが、ここまでやることは自分の首を絞めることでもあるわけで、代理店様との緊張感のある信頼関係を築くために、マーケッターがクリエイティブな思考とロジカルな実行力を身に着けることは重要なのです、と自戒を込めて。