フィリップ・モリスの「煙のない社会を目指す」は、マーケティング史に残る事件ではないか。

フィリップ・モリス社のマーケティングはとてつもなく優秀だと思う。

このフィリップ・モリスの「煙のない社会を目指す」という、天才的なストーリーテリングを考案し、実行した欧米人ってすごいなと思ったので、NOTEにまとめておく。

煙のない社会を目指すとは、言い換えれば、「もう手遅れなほど有害なProductを浸透させた世の中における社会的責任」ということだと思う。

つまり、人体に有害なタバコを売りまくって、とてつもない利益をあげ、有害性が認知された後は、今までよりはベターな電子タバコを売る。そして、すでに紙巻タバコを愛用している人(ターゲット)に対して、電子タバコを売ることが、世の中のためになるという話。
(ちなみに紙巻タバコの世界市場規模は約100兆円。加熱式(電子)タバコ市場は11兆円くらいです。)

この壮大なポジショントークというか、矛盾というか、自身の棚上げというか、とにかくこの壮大すぎるマーケティング戦略について、個人的に会社のビジョンが気になって色々と考えたのだが、結論、これは真実なんだろうと思った。

タバコ自体が有害だからといってフィリップ・モリスが事業をやめれば、他の会社がさらにタバコを売って儲けるという社会構造になっているので、事業徹底は解決酒にならない。

新規ユーザーにタバコを勧めない(未成年ということでなく、未喫煙者全体に対して)で、既存ユーザーにHarmlessなほうを勧める、というのはとても合理的なアプローチに思える。世の中からタバコはなくせないので、より健康的なタバコを作ろうという考え方は、気持ち的には嫌だけど、論理的には筋が通っているように思える。(さらに、例えばヘビースモーカーの人にとっては明らかにプラスだし、昔、居酒屋とかで煙をあびていた自分にとって、煙を出さないタバコになっただけでもだいぶストレスフリーにはなっている)

サステナブルな社会を目指すとか、ESG投資、多様性を尊重する企業とか、世の中にはいろいろなメッセージを発信する会社があるが、フィリップ・モリスは明らかに格が違う。壮大なスペルタクルでポジショントークをして社会実験、社会実装をやりとげている。

他の「リブランディングしました事例」が生ぬるすぎるほどに、フィリップ・モリスは成功していると思う。

「煙のない社会を目指す」という表現(自社の既存商品を悪とは言ってない一方で、敵は煙ということにしている)も絶妙だし、この矛盾を自信をもって、言い切れる欧米的な合理的なプレゼンテーション力。これは日本人にはできないし芸当と思う。(一方でフィリップ・モリスの電子タバコは日本でめちゃくちゃというか、最も売れている・・・!涙)

さらに、同社の組織内にも想像を膨らませて踏み込んでみると、ベーシックなマーケティングの現場では、商品の良さを伝えることを重視しているが、フィリップ・モリスはそんなことはしていない(と思う)。

なぜならタバコの味を知らない新規ユーザーは相手にしていない(ということになっている)から。ターゲットは既に喫煙ユーザーOnlyであって、(健康含めて)彼らに煙のない社会に共感してもらい、利便性を感じて乗り換えてもらい、ロイヤリティを高めていくことが優先される。

同社の「中の人」にも少し聞いたけど、マーケティング部で喫煙者は少ないし、そもそも喫煙者の求職者を全く求めていないらしい。このあたりの採用メッセージングもうまいなぁと思う。

以上、フィリップ・モリスは、大々的にアピールせずに、ひっそりとこういったマーケティングを実行し続けると思うので、忘れずにキャッチアップしていきたいと思う。ちなみに、これらは全て僕の想像で書いているので、もし間違っていたらフィードバックください。

参考)フィリップ・モリス:「煙のない社会」 を目指して
https://www.pmi.com/markets/japan/ja/smoke-free-future

参考)JT:こころの豊かさを、もっと。
https://www.jti.co.jp/corporate/mission/index.html

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