七色書房 はじまり①
七色書房は、とある山と街との間にある、どうも本屋らしいところです。ご縁した人に特別な物語のご案内をしていますが、本はどこにもありません。
店主らしき人は、「七(なな)さん」「七色(なないろ)さん」と呼ばれていますが、本当の名前を知る人はいません。おそらくは女性ですが、例えば女性のような見せ方をしている人(存在)、と言った方がよさそうな感じがします。会う人によって「頼れる男の人みたいだったような気がする」という人もいますし「まるで無邪気でおしゃまな子供だった」と言う人もいます。時には「お婆さんみたいだったんじゃないかしら」という人もいますし、「おとなしくてもの静かな人だった」という人もいるのです。
いつからここに七色書房はあるのでしょう?
七色書房に行ったことがある人はこう言います。
「ずうっとあるような気もするし、最近出来たような気もします。いつも行っていた気もするし、初めて行くような気もします。なぜかしら?」
街や森の住人達ともっと遠くの住人達、さらに旅の途中の人がここに立ち寄ります。そしてひと時の時間ここに集まり、また帰っていきます。ほんの少しの間ここにいて、店主とお茶を飲んだりお喋りをしたりして、いつの間にか眠ってしまったり、そんなひと時を過ごすようです。
「たったひとつの…、なのね」
「長い間このページが私を待っていてくれたのかしら…」
今日初めて訪れたというご婦人はそう言って胸に両手をそっと重ねて、すこし上気した顔で微笑んで、何かを切り替えるみたいに一回こくりと頷いてから扉を開けて出て行きました。静かに扉を閉めて街の方へと帰って行きました。
「いってらっしゃいませ。またお待ちしております。」
店主は静かに店の窓から、帰って行くその背中が見えなくなるまで見送っていました。
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それは地球という星。広い宇宙の多くの星々の中にあって、そのひとつの太陽系の中に存在している「感情」というものを体験する極めてめずらしい星。これは地球の地上にある、とある場所の森と街のその境目に静かに存在している「七色書房」でのお話。
「いらっしゃいませ。ようこそ。」
「当店では、本はお求めいただけませんが…、あなただけの特別な物語をご案内させていただきます。」
店主は、七(なな)さんとか七色(なないろ)さんと呼ばれていますが、誰も本当の名前を知る人はいません。店主は、この書房を訪れる様々な人たちとのひとときの時間を一緒に過ごします。
そこで起きるのは、訪れた人の中にひっそりと沈んでいる過去の記憶と感情と、そして色彩との出会いです。それは時を超えて起きる解放の時間。ほんの少し色彩の力を借りて、本来の自分自身へと繋がっていく。店主の案内によって体験するあなただけの物語との出会い。それが七色書房の七色処方です。
これは、そんな七色書房での四季折々のお話です。
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これまでのお話&七色処方はこちらです。2020/07現在は全部で3つですが、少しずつ増やしていく予定です。本日、全記事の表現表示等を変更しています。「読む&使う」ことができるものにしています。
よろしければ、感想やコメントなどお気軽に入れてください。おそらくずい分と今後の制作の参考になったり励みになったりするでしょう。ご存じの方はメールでくださっても。
色彩ごとのひとつずつのお話を「七色書房の色彩の小さな物語 七色処方」のマガジンに集めて行く予定です。
9分割(絵画療法)という理論を基盤に色彩のお話を制作しています。ひとつの色にも、3×3の9つのマスの位置によって多数の色彩感情が存在しています。「七色書房の小さな色彩の物語 七色処方 」
写真と文 sanae mizuno
https://twitter.com/SanaeMizuno
※9分割(絵画療法)理論は、松村潔氏により研究開発されたものです。