オクラとパセリ、黄緑の願い
それは地球という星。広い宇宙の多くの星々の中にあって、そのひとつの太陽系の中に存在している「感情」というものを体験する極めてめずらしい星。これは地球の地上にある、とある場所の森と街のその境目に静かに存在している「七色書房」でのお話。
「いらっしゃいませ。ようこそ。」
「当店では、本はお求めいただけませんが…、あなただけの特別な物語をご案内させていただきます。」
店主は、七(なな)さんとか七色(なないろ)さんと呼ばれていますが、誰も本当の名前を知る人はいません。店主は、この書房を訪れる様々な人たちとのひとときの時間を一緒に過ごします。
そこで起きるのは、訪れた人の中にひっそりと沈んでいる過去の記憶と感情と、そして色彩との出会いです。それは時を超えて起きる解放の時間。ほんの少し色彩の力を借りて、本来の自分自身へと繋がっていく。店主の案内によって体験するあなただけの物語との出会い。それが七色書房の七色処方です。
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確か彼女はここでお茶を飲みながら店主と話をしていたはずでした。少しの間夢を見ていたような気がします。
そしてハッと思い付いて話し始めました。
「ふとそう思ったので、いつもになくそう思ったので、でもそれは強烈に感じたことなんかじゃなくて。でも採用してみようかなって、そう思ったから口に出してみたんです」
彼女はそう言いながら、その時のことを思い出すように斜め上を見上げながら話し始めました。
「初めての家庭菜園をしたいと思って」
実家で両親がゴーヤなど野菜を育てていたことがあるのを思いだした彼女は、電話してそれを伝えたのです。詳しい人に相談した方がいいかだろうと思って、電話をしたのでした。
数日後、オクラとパセリが植えられたプランターをそんなに遠く離れていない実家から彼女は受け取ります。そんな風に用意されているとは想像していなかった彼女は、受け取った瞬間に「とってもがっかり」している自分に気が付いていました。さらにそのままなぜか気持ちが落ちていって…、そんな自分を発見していました。
翌日、あっという間にしおれて元気が無くなってしまっているプランターの葉を見て「ああ、またダメだ」と感じ、どうしていいかも思い浮かばないし、やる気も失せていきます。手を出さずに放置して、どうも枯らすことになりそうでした。何をしてもすぐに失敗して二度と手を出さなくなる、そんなことをたくさん繰り返してきました。
そんな時、たまたまブログで菜園チャレンジしている人の記事を見て、多くの失敗と、何度にも渡る挑戦でうまく育ったというような体験にハッとさせられました。
彼女がしたかったことが「それ」ではなかったということに気が付いたのです。したかったことは別にありました。もちろん自分で気が付いてもいなかったので、まだそれを家族に伝えてはいません。
彼女は、ゆっくりと言葉を選んで言いました。
「父や母がよく水をあげているのを見てました。手伝うなんてしませんでした。何がわかっていないのかもわからない。だから…本当にゼロから教えて欲しいと思って。」 「今までそうしたいなんて一度も思ったことは無いのに、一緒にどれがいいかねって言いながらホームセンターで苗を見たりプランターや土を見て歩きながらたくさん聞きたいって思ってるんだなって。」
「今から電話します」
「またダメだ、と思ったこと、勘違いしていたことがわかりました」
そう言う彼女には笑顔が戻っていました。
end
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●色彩とその場所からのヒント
このお話が一番気になるという時のあなたへ。あるいは「黄緑色」を9つの枠の中で、今はこの場所に置きたい、というあなたへ。
あなたへの七色処方
私たちが足元にしているのは、地球という大地です。人間はこの大地力によって大きく守られて日々を生きています。この足元にある大地の土の力に支えられ、天から降り注ぐ太陽の光を浴びて、すくすくと育っていきます。種から発芽して育ち始めたばかりの植物の黄緑の新芽は、やがて育って緑色へと色を濃くしていくでしょう。
その過程には、晴れの日も、雨の日も、風の強い日もあるでしょう。寒い日も暑すぎる日もあるでしょう。その中でより強く根を張り、太陽にに向かってどんどん増えていく葉を伸ばし、ゆっくりと強くたくましく育っていくのです。
華美ではなくシンプルで、それでいてかつ規則的な日常生活を続けることは、生活や健康の基礎的な部分を強くしていってくれます。今は無理して多くを自分に求めることなく、ほんの小さく規則的な繰り返しの日常の中で、自然と自分の中に力が少しずつ満ちてくるのを待ちましょう。起きる時間が毎日同じであることとか、朝食の時間、掃除や片付けの時間帯、お散歩に行く時間、仕事、お買い物の場所と行く時間帯、料理と夕ご飯の時間、お風呂、など自分の生活の中にある決まっていることを簡単な時間割にしてみたりするのもいいでしょう。
部屋の中には、観葉植物などを置いて植物の生命力の力を借りましょう。緑色を自分の日常のすぐ近くに置くのも助けになります。日差しが強くなくても育つような、世話やお手入れが簡単な植物がいいでしょう。
焦らずに、心身ともにゆっくりとエネルギー補給を。
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色彩×9分割の9の場所。例えば今回の物語は「黄緑色」×「暮らし・居場所」のお話のひとつの風景です。
大人になっても残ったままの子供のころからの欲求と向き合うきっかけが訪れた人の日常のお話です。普段から挑戦が苦手で何事にも億劫だった人が、弱気ながらもほんの少し歩き出してみようとし始めている、そんな感情体験とそれに寄り添うような色彩のお話です。
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9分割(絵画療法)という理論を基盤に色彩のお話を制作しています。ひとつの色にも、3×3の9つのマスの位置によって多数の色彩感情が存在しています。「七色書房の小さな色彩の物語 七色処方」
9-9 yellow-green story
写真と文 sanae mizuno
※9分割(絵画療法)理論は、松村潔氏により研究開発されたものです。
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