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ずっとくっついていたい。濃いオレンジ色の想い。

それは地球という星。広い宇宙の多くの星々の中にあって、そのひとつの太陽系の中に存在している「感情」というものを体験する極めてめずらしい星。これは地球の地上にある、とある場所の森と街のその境目に静かに存在している「七色書房」でのお話。

「いらっしゃいませ。ようこそ。」

「当店では、本はお求めいただけませんが…、あなただけの特別な物語をご案内させていただきます。」

店主は、七(なな)さんとか七色(なないろ)さんと呼ばれていますが、誰も本当の名前を知る人はいません。店主は、この書房を訪れる様々な人たちとのひとときの時間を一緒に過ごします。

そこで起きるのは、訪れた人の中にひっそりと沈んでいる過去の記憶と感情と、そして色彩との出会いです。それは時を超えて起きる解放の時間。ほんの少し色彩の力を借りて、本来の自分自身へと繋がっていく。店主の案内によって体験するあなただけの物語との出会い。それが七色書房の七色処方です。

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一人暮らしをしているKさんは生物学的には女性です。お母さんを許せずにいます。そんな自分に気が付いたのは最近になってのことでした。最初は恨んでいるという自覚は全くありませんでした。ただこの社会の中で出会う人には、片っ端から自分の面倒を手取り足取りとことん見させようとしてしまいます。とことん相手を困らせていくということを起こして、それは特に他人である女性、一対一で関わることになった相手に対して強く表現されていました。実際はどこまでも自分の面倒見てくれるような人はなかなかに現れません。

そしてKさんのお母さんは、もう20年ほど前に旅立たれています。

目の前に現れるその時のその人に無自覚に多くを求めてしまうという症状が止まることは無く、むしろその要求は激しさを増し、結果的に与えてくれないという現実に失望、落胆、そして怒り、さらにまた目の前に現れる人に即座に期待しては破れるという、そんな連続の日々を生きていました。最初近寄って来た人も、あまりにも縛りの強い要求にやがて静かにいなくなっていきました。会社では普通に働いているのに、私生活ではいつも気が付くとひとりぼっちの自分がいました。

例えば、人の後を付いて歩くようなところがある割には、近付いたその人を馬鹿にしたり、さらに気心が知れてより近寄くなると今度はその人に対してまるで真逆の遠慮の無さや横暴さも発揮して、それも当たり前のこととして相手に受止めて欲しいという姿勢や言動がありました。他の人とじゃなく、いつでも自分とだけ一緒に居て欲しい…という自覚もありました。かといって親友が欲しいという感覚ではありませんでした。

恋愛関係に発展していく段階での性的な接触の場面において常に問題が起きました。決断するという自己責任から常に逃げ出していました。強烈に欲しがりつつ、常に女性に対しての怒りを持っていました。

Kさんは、突然いなくなってしまった人が帰って来るのを無自覚なままずっと待っていました。幼少時から忙しい仕事をしていたため、普段から関わることが極端に少なかった上に、ある時あっという間に自分を置いていなくなってしまったことを、もう目の前に戻っては来ないのだということを受け入れられずにいました。怒りと恨みの元にあるのは、ひとりぼっちにされてしまったKさんの悲しみ。その人が愛用していた花柄の折り畳みの傘を、破れてもほつれても不器用に縫い止めて、カバンの中にいつも持ち歩き続けていました。まるで、ぎゅうっと力を入れて握りしめ続けてるみたいに。

自分には何かあるのかもしれない…。そう思えた時がチャンスです。
まず、立ち止まりましょう。気になった時が始まる時です。それはこれまでの何かが終わっていく時、整理できる時がようやくやって来たというタイミングなのかもしれません。

Kさんにもいつか、旅立った人を見送ることが出来る、そんな日が来るかもしれません。思いっきり涙することが出来る日もやってくるかもしれません。

end

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●色彩とその場所からわかること  

このお話が一番気になるという時のあなたへ。あるいは「濃いオレンジ」を9つの枠の中で、今はこの場所に置きたい、というあなたへ。

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あなたへの七色処方

特定の人にくっついていたい。自分にとって一番気になる存在との交流を熱く望んでいるよ、というのが親密さを求めるオレンジ色です。

赤色に黄色が入っているというのがオレンジ色ですが、その分量によって赤寄りの濃いオレンジだったり黄色寄りの明るいオレンジ色だったりと変化します。赤が強いほど狭い範囲に集中する思いが強くなるので、親密になりたい対象は一人、個人ということになりやすいでしょうし、執着と呼ぶような状態になることもあります。

黄色の配合が多くなるほどより外向きの広い範囲への欲求になります。仲間を求めるというような。明るいオレンジはスポーツや同好会的な集まりのイメージカラーになったりユニフォームの色になったりもしやすいでしょう。

自分で自分のことを小さく実践し始めましょう。小さく一日の計画を立てて実行しましょう。アップダウンの気分だけで生活し続けることを変えていくことからが改善の方法のひとつです。

誰かにくっつきたくて執着してしまっている時、オレンジ色を画用紙に塗りたくるのもいいでしょう。何枚も何枚もすっきりしたという実感がやって来るまで塗りましょう。濃いオレンジから始まってやがて明るいオレンジへ。気持ちが変化していくのを感じるでしょう。

時々は顔を上げて空を見上げ、両手両足を伸ばして全身に新しい酸素を送り込むように、大きな青を視界に入れてのびのびと深呼吸しましょう。べったりと特定の人に張り付こうとする状態や、してもらうことばかりを期待する依存性の強い状態を緩和してくれるでしょう。それを思い出す、意識するということにも繋がりますから、青色の小物など持ち物や服にも取り入れてみましょう。濃い青色になると知的なことに向かってぎゅっと集中していくということになるので、今はどこまでも広がっていくような空の色の青さに助けてもらいましょう。

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色彩×9分割の7の場所。例えば今回の物語は「濃いオレンジ色」×「他者や感覚への依存と期待」のお話のひとつの風景です。

一緒に居る時間がもともと無かった母親を失った人が、その後の人生で同性に愛情を求めては期待を裏切られるという繰り返しの中で、恋愛に求めている自分の愛情欲求に「母」という存在が強く関わっていたということを改めて知って、自らの内側にある寂しさの本当の理由と少しずつ出会っていく、そんな感情体験とそれに寄り添うような色彩のお話です。

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9分割(絵画療法)という理論を基盤に色彩のお話を制作しています。ひとつの色にも、3×3の9つのマスの位置によって多数の色彩感情が存在しています。「七色書房の小さな色彩の物語 七色処方 」

7-9 orange story

写真と文 sanae mizuno

https://twitter.com/SanaeMizuno



※9分割(絵画療法)理論は、松村潔氏により研究開発されたものです。

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