16歳の愛犬がリンパ腫になりました①~発見から診断まで~
愛犬の名前は「れお」。そのダンディな佇まいから愛称は「れお氏」。茶色と黒色の混じった胡麻柴でした。
生後数か月で後ろ足3箇所を骨折した状態で公園に捨てられていた元保護犬。同居人が管理センターのHPを見て一目惚れし、我が家にやって来た犬です。
これは、れお氏がリンパ腫と診断されて亡くなるまでの僅か1ヶ月間の介護記録です。
介護福祉士の資格を持つ介護のプロである私が、経験をフルに生かして介護にあたりました。少しでも、リンパ腫を発症した愛犬を持つ方の手助けになれば良いと思っています。
ある日、小さなしこりが…
シニアになって便秘がちだったれおのお腹をマッサージするのが、同居人の日課でした。
そうじゃなくても、同居人は暇さえあれば溺愛する犬の体を撫で回しこねくり回し、完全にれお氏の体を知り尽くす女(笑)
ある日、いつものように腹部をマッサージしていた同居人は、陰茎の下部に小さなしこりがあるのに気付きました。
「あれ?数日前はなかったよね?」
その言葉に私も触ってみましたが、確かにコリッとした1㎝弱の何かが触れます。
「うーん…」
「とりあえず2,3日様子を見てみようか」
犬も人間と同じで、年を取ると変な所にデキモノが出来たりするんです。血が出ているとか異常に腫れているなど、緊急性がなければまずは様子観察。
そして、数日が経過…。
わずか数日のうちに、そのしこりは確実に大きくなっていました。
これまで何匹も動物を飼ってきましが、脂肪腫はこんなに早く大きくならないし、触った感じもコリコリしててはっきりとした異物感があります。
(これは嫌な感じがする…)
そう思った私達は週末の土曜日にかかりつけの病院へと急ぎました。
獣医さんに行った日
我が家は今住む家に越してから、もう10年近く同じ獣医さんにお世話になっています。
2020年にれお氏の妹分である「くるみ」という雑種犬が腎臓病で亡くなった時も、随分とお世話になりました。
れお氏も半年くらい前まで隔週でオゾン療法やレーザー療法もしてもらっていたので、すっかり顔なじみです。ハイシニアになってからは治療を受けるがしんどくなり、自然に任せて生きていました。
非常に腕が良く、いつも動物の気持ちを一番に考えてくれる信頼できる獣医さんです。
「いやー、何かしこりがあるんですよねー」
ほぼ近所の知り合いノリの同居人。この人は何かあるとすぐに動物病院に電話して、先生に直接聞いちゃう強者なのです。
「ホントだ。あれ?れお君は去勢はしてるよね?」
しこりの場所が、ソケイというよりは睾丸のあるべき場所の少し上だったんです。
「もしかして、一部だけ残っているとか取り切れてないとか?」
と言う私の質問に答えたのは同居人でした。
「私、取った時私確認したよ。きちんと2つあったよ」
すごいね、取った時目視して確認してるんだ…。さすがれおマニア。
「うーん…。これ、何だろうね?」
獣医さんも首を傾げながら、とりあえずその日は注射器で細胞を取って検査へ回すことに…。
この時は、まだ誰もこれがリンパ腫だとは思っていませんでした。
何故なら、場所的にソケイのリンパと言うには体の真ん中すぎたし、他に何の徴候もなかったからです。
私も同居人もそんなに悲観する事なく、「何かのデキモノならサクッと取れればいいけど…」くらいのノリでした。
れお氏も普段と全く変わらず。
マイペースでご飯を食べ、マイペースに外で排泄し、マイペースに夜中にウロウロ歩き回る。
ここ1年ほどですっかりハイシニアになったれお氏、とにかくマイペースな毎日です。
れお氏が色々と衰えて日々の生活に不安が出始めてから、私は介護の仕事を辞めて在宅ワークに切り替えました。
24時間召使いの居る生活に慣れ切ったれお氏、すっかり王様な日々を送っています。
「俺、れお。この家の王様だぜ」
そんな感じ(笑)
話は逸れましたが、そうこうするうちに2,3日が経過。
次に気付いたのは顎の下、両側のリンパ節のしこりでした。
(これは…リンパ腫?)
この時初めて、れお氏がリンパ腫である可能性に気付きました。
シニア犬の死亡原因のトップ3に入るリンパ腫。でも、まさかれお氏がなるとは考えていなかったんですね。
リンパ腫の成長はものすごい速さです。
先週の水曜日に気付いたソケイのしこりは既にまた大きくなっていましたし、下顎のしこりも日々成長していました。
私と同居人は相談し、「これはリンパ腫に違いない」という結論に至りました。
検査結果まで待てない
金曜日の検査結果まで居ても経ってもいられず、祝日だった水曜日に再び動物病院を訪れました。
「いやー、結果が出ないと何も言えないけどねー」
と先生。そりゃそーだ(笑)
でも、下顎のしこりとソケイのしこりの成長を見た先生もリンパ腫の可能性大との見立て。
「この間は下顎の部分には無かったけど、すぐに大きくなってきたんだね」
わずか3日間で、触ってすぐにわかる大きさのしこりが喉の両側に出来ていました。
発見して1週間で、ソケイ部のしこりもあっという間に大きくなっています。
この時点で、私と同居人はもう99%リンパ腫に違いないと確信し腹をくくっていました。
悲しいけれど、病気ってヤツは本当に仕方ないんですよね。
私と同居人はいつも「れお氏には最期までれお氏らしく過ごして欲しい。そして、なるべくツラいとか痛い思いをさせたくない」で意見が一致。
最期までれお氏らしく生きるために、全力でサポートしようと心を決めていました。
めちゃくちゃ悲しかったけど、泣いている時間があったられお氏の側で笑顔で過ごしたいと思いました。
そんな私達が先生に聞いたいくつかの質問です。検査結果が出る前だったけど(笑)
①リンパ腫って痛いの?苦しいの?
A.痛みはそんなにない。怠くてしんどくなってくるだろうけど、激痛とかはなし。最期が近づいた時に発作があるかもしれないけれど…
②腫瘍はこのまま大きくなって中で破裂しないの?
A.しません。かなり大きくなる事もあるけど、破裂はしない
③腫瘍が大きくなって呼吸障害や排尿障害が出る?
A.出ません。ものが食べづらくなるとかはあり得るけれど、息が出来なくなったり、オシッコが出ない事はなし
④今後考えられる症状は?
A.ひたすら弱って来ます。ご飯もあまり食べられなくなって、歩けなくなって…という感じ
⑤治療の選択肢は?
A.抗がん剤を使う人はいます。そして、症状を楽にするのにステロイドの使用もあり
⑥余命はどれくらい?
A.平均値は3ヵ月。でも、それぞれなので何とも言えない
リンパ腫と思った時点で、ネットなどで調べていたら余命は1ヵ月とも書かれていました。
実はれお氏、3ヵ月前の16歳の誕生日直前に前庭疾患の発作を起こしました。
ここ1年ほどは食欲も落ちて体重が減って来ていたところに、1週間ほどまともに食べられずすっかり体重が減少。最盛期に11㎏超えだった体重は8㎏台まで落ちました。
それでも、何とか復活を遂げて徐々に体重が戻っていたのですが、ここ数か月でまた減りはじめていたのです。
しこりが表に出て来る前から、体内ではリンパ腫が悪さをし始めていたのかな…と思いました。
そう考えると、余命はどこを基準に考えたら良いものか…?もしかして、残された時間は本当に短いのかもしれません。
でも、痛みや苦しみがあまりないと聞いて少しほっとしました。
病院から帰り、同居人と「穏やかに過ごせるといいね」と話していました。
16歳まで生きると思わなかったよ
柴犬の平均寿命は12~15歳と言われています。
れおより1つ年下の雑種のくるみは14歳で亡くなりました。
私達もまさかれお氏がこんなに長生きするとは思っていませんでした。初めて見た時、下半身を引きずっていて「この子は一生歩けないかもしれない」と言われていたれお氏ですが、見事に予想を裏切って、歩いて走って普通の犬と変わらない生活を送ってくれました。
さすがに15歳を超えたあたりから大人の階段を上り始め、歩くのもゆっくり、食べるのもゆっくり。耳も遠くなって、目もかなり悪くなり…。
それでも、朝夕晩と散歩をして、トイレは絶対に外でしかせず(吹雪の日も豪雨の日も飼い主はがんばりました)、和犬らしい俺様。
れお氏はとにかく性格が良くて、今まで犬にも猫にも人間にも、一度も牙を向いて怒った事がありません。近所を散歩していると小型犬にモテモテなおじさんでした。
私達はこんなれお氏が愛おしくて、可愛くて、大好きで、毎日幸せに過ごしていました。
前庭疾患発症後はかなり足腰も弱り、散歩もほんの少ししか歩けず、食事も完全介助じゃないと食べられなくなりました。それでもれお氏自身はマイペースに日々を楽しんでいたようです。
私達もそんな毎日をありがたく感じ、れお氏との残された時間を大切に生きていこうと決めていました。
だから、この先何があっても、れお氏ファーストで彼が心地良く過ごせるように全力でサポートしていこうと誓っていたのです。
そして、検査結果が…
検査結果は金曜日に出るとの事でしたが、木曜日の朝に同居人の携帯に先生から電話が入りました。
「やはり、リンパ腫でした」
すぐに私にもLINEが来ました。
(そっかー、やっぱり…)
覚悟はしていたけれど、ショックでした。
あーーー、16年も頑張って生きて来てやっぱり最期は癌なのかーーー。
老衰は無理なのかーーー。
仕事柄、老衰で亡くなる人間なんてほとんどいないってわかっているけど、犬もそうだってわかっているけど…。
れお氏には病気になってもらいたくなかったな。