【プリズンライターズ】女子刑務所あるある情報笠松編:心の雫Vol.13
拝啓
新年が明けたと思いましたら能登半島大地震、翌日は自衛隊機と日航機との衝突事故など、大きな出来事があり、激動の幕開けとなりました。
私たちの施設もグラグラと揺れ、これはすごいと部屋の中で大騒ぎをしました。それでも震度は4くらいです。震度7である能登半島は相当な揺れだったのでしょう。亡くなった方は200名以上だとか、心からご冥福をお祈り申し上げます。
さて、今回は女子刑務所あるある情報笠松編としまして、年末年始の食事やお菓子、クリスマスケーキのことについて書いてみます。
今年の年末年始は非常に寂しい食糧事情でした。
クリスマスケーキが無くなったのに驚き、危機感を持ちましたが、案の定お菓子が酷いことになっていました。
通常ならば悪くなったとはいえ、12/29・12/30・12/31と3日間でポテトチップス等が3袋出ます。
ところが、今年はコメッコ33g(小)が1袋のみです。
年始のお菓子も、通常はしみチョコなどの袋菓子が1/1・1/2・1/3分として3袋出ました。
しかし、今年はオレオ(65g)の小袋が1袋のみです。舎房の全室がシーンと静まり返っていました。あまりの情況に全員が白けてしまったのでしょう。
1/1のおせちに至っては、別注という但し書きがあり、野菜しか入っていませんでした。以前に比べると内容は年々悪くなっていましたが、それでも海老のボイルしたものとか、焼魚とか、数の子やイクラなどは入っていました。 しかし、野菜のみのおせちとは、発想がすごいと敵ながら天晴と感心しました。ただもう少し企業努力ができたのでは?とも思いますが、もちろんお餅はありません。
しかし、私たちにも朗報がありました。今まで、豚肉といえば恐ろしくて口に出来ないような代物が出ていましたが、所長面接や意見提案用紙で再々訴えた結果、やっと豚肉と認識できる肉が出るようになりました。
今までの肉の商品名は一応袋に豚肉の小間切れと書いて貼ってあるとのことですが、野生動物の臭みがあり脂身もヒモ状で、猪の足をこそげ取った捨てるような肉、という形容で少しはイメージができるでしょうか、そんな肉が出ていましたが、11月から無くなりました。
鶏肉も、パサパサの固いムネ肉を1センチくらいに切り刻んだものでしたが、一応モモ肉に替わり、安心して食べています。
まだ畑のお肉という得体のしれない(大豆ミートでしょうが)ぷにょぷにょしたものが出ていますが、とりあえずは、ほっとしています。
世界で起きている戦禍の中の子どもたちの飢餓に比べれば、ご飯やおかずを残飯にするには心が痛みますが、出された主食を全部食べるとカロリー消費が少ない私たちはどんどん太っていきます。
その辺のことは、裏であれこれ決めている偉い人たちにはわからない事情なのでしょう。
プリズンライターズVol.4の刑務所の「THE無駄使い」のアイスノンの話ですが、冷蔵庫もないのにアイスノンを配られた、という話ですが…???
…という感じです。
でも私たちにも似たような話があります。エアコンを付けるまでの1年間、つまりひと夏だけのためにアイスノンを凍らせるための冷凍庫を少なくても10台くらいは購入し、設置しましたがひと夏だけ使ってあとは設置されたまま放置されています。
冷蔵庫もないのに配られ、翌年はカビて捨ててしまう無駄使いと、ひと夏は一応使用したけどそれ以後は必要のない冷凍庫の放置と、どちらも似たり寄ったりの無駄使いですね。
そんなお金があるのなら、食糧事情を何とかしてほしいと全員が思っていることでしょう。
メニュー表の名前はとてもいいのですが、質や量、味付けが年々悪くなっていく感じです。
最後に、現在犯罪に手を染めようか悩んでいる方へ、まだ間に合うなら絶対に止めた方がいいです。人生何歳になってもやり直しはできますが、犯罪は自分の心の中を壊していきます。
自暴自棄にならず、自分を大事にしてください。自分を守れるのは自分だけです。寒さ厳しさ折、どうかお体をご自愛ください。
令和6年1月31日
短歌15首です
「横向くな!」そんな命令されたって薄紫の空が呼ぶんだ
犯罪のメニュー多才な女(ひと)のいて芸人並みの笑いふりまく
霜焼けの指より滴る赤き血を服に散らせて受刑の席へ
年頭の賀状受け取り本年もつつがなきかな地震の報まで
トランプの札を配れば鮮やかな血の音聞こゆババ抜きなれど
カフェオレがやけにおいしい塀の中ビールの味など忘れるほどに
何とまあ商売上手のCMかうっとり顔の猫のパレード
特注のおせちと書かれ開けやればほのぼのぬくし野菜のおせち
子を待ちておやつを作る幸せに気づかぬままの昔のわたし
大豆にて朝昼夜と育てられ清浄なるかな我の心身
初夢に富士の山見る幸運をはるか彼方の吾娘(あこ)に届けと
百歳で没する義母(はは)の報受けて大往生とは悲しき言葉
―DV被害の頃のことです―
暴力の嵐過ぎ去り見上げれば月晧晧と我を照らせり
シェルターがもっと早くに出来てれば今も生きてるあなたと私
咳き込みて肺に入り来る酸素にて鼓動再び蘇る音
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