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【プリズンライターズ】Salty Dog - 刑事施設でつぶやいてみた -

 ある休日の午後、何気なく観ていたTVに見覚えのある人が映っていて驚いた。
ドキュメンタリー番組で、スタッフのインタビューに淡々と答えるその人は紛れもなく汪さんだった、、、。
私は2015年まで岐阜刑で10年服役し、汪さんとは途中で工場、舎房共に一緒になった。

 初めて出会った印象としては、マジメで物静かな人といった感じで、実際、周りの老人や障害のある懲役には献身的でとにかく優しかった。
その点、私は若く、生意気盛りだったので文句ばかり言う他囚に腹を立てることも多く、その度に汪さんが上手く収めてくれました。

私が短気を起こそうとする度に、普段、温厚な汪さんからは想像もできないような壮絶な生い立ちを話してくれました。
だからといって高圧的な振る舞いは一切しなかったし、人からの信頼は絶大でした。

 免業日、TVを観てバカ騒ぎする人が居ても、汪さんはどこかで線引きをして、独特な雰囲気がありました。
常に本を読み、ノートに何か書き込んでいました。私も影響を受け、ノートに将来の生活設計など色々書きましたが、その内容はグルメ雑誌で見つけた食べたいものや、行きたい店ばかり、、、(苦笑)
結局その後、受刑者が職員を買収する事件があり、我々の舎房も解体されてしまいました、、、。
 
 あれから歳月は過ぎ、年を重ねても理想を失わない汪さんには本当に頭が下がります。
それなのに私はといえば、再び世間と隔絶された世界の住人になろうとしています、、、。
神が人に重荷を背負わせるのは風に飛ばされないようにする為”と以前読んだ本にありました。
しかし私は、今回の事件で仕事も家庭も財産も失い、身軽になった今は微風でどこへでも飛んで行ける気がします、、、(泣)

 「もし、あの時・・・だったら」と空想の中に生きているうちは何も変わらないですよね。
世間からは置き去りにされてしまうけど、かえるPJ・汪さんをはじめ、スタッフさん達との接点が私を人間にしてくれます。
最終的に自分を変えることができるのは自分しか居ないと言うこと。
自分が自分のために人生を生きないのであれば、一体誰が自分の為に生きてくれるのだろうか、、、。
そんなことをつぶやいていたら、そろそろ点検なので今回はこの辺にて失礼します。

2023年1月11日


Salty Dog - 人生の味とは -

 社会に居るとき仕事で多忙が続き、ファストフードやコンビニ弁当で何日も過ごすことがあった。
よく栄養が偏るというが、それ以前に精神が病んでくる。
そういうときは有給をとり、奮発していい肉や、お寿司を食べに行く。
すると効果はてき面で、頭は冴え、心身共に甦ってくるし、次の日の目覚めもシャキっとする。

 そして、塀の中で肉やお寿司はないけど、格別なものといえば、ぜんざいだと思う。
食事の自由もない刑務所で甘味品は貴重品そのもので、炊事工場では砂糖が盗まれないよう、金庫保管で厳重に管理されているとか。(笑)
とにかく百戦錬磨のコワモテたちも、ぜんざいの日は朝から恵比寿顔で機嫌がいい。
又、過酷な環境の中、肩を寄せ合い生活する他の受刑者に親切心で食べものを分け与えても、見つかれば反則行為で懲罰である。
それこそ後味が悪い。

 食べもので上下関係を築いたり、イジメに発展するのを防ぐ為だと思うが、パンの大きさや、おかず量で受刑者同士が言い争い、傷害事件へと勃発する場面を見た時は驚愕した。
そうした出来事を社会の人に話しても「終戦直後の食糧配給じゃないんだから」と全く信じてもらえない、、、(苦笑)
刑務所で噛みしめる人生の味はとにかく苦い。
自身にしる粉が降り掛かっても、火の粉が降り掛からないようにはしたいものです。
 
 余談ですがプリズンライターズ・リポート第2号で、官本を粗末に扱う一部のバカ者、という内容の投稿文を見ました。
本に犯人の名前を落書きしたり、クライマックスを破り捨てたり、やることが幼稚だなぁと思いながら読んでいたのですが、島耕作が鼻毛で仙人は、さすがに吹きました(笑)
私も、そういった類の官本に出会ったことがあり、本当に不快だし、やめてほしいですよね。
「そしてバトンは渡された」は私も読みましたが久々に泣けました。
人生の味付けは人によって様々だけど、愛する人が握ってくれた、おにぎりより旨いものはないのです。
素敵な短歌や書評にも触れ、栄養の込もった活字は私の心に染み渡ります。

2023年1月12日


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プリズンライターズ / ほんにかえるプロジェクト
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