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第5章〜病舎看護係編 第2犯〜川越刑務所内を縦横無尽に飛び回る看護係

皆さんこんにちは。
元川越少年刑務所 病舎看護係 1434番だったムショくんと申します。
お読み頂きありがとうございます。

前回に引き続き、川越少年刑務所で看護係として配属し、色んな初めてを体験する実話でございます。
3年間ある川越を余すことなく書いていきますので今回もお楽しみください。

配役後一日経って思ったのは筋肉痛の酷さだ。あと足の裏も痛い
過酷な運動に加えて、刑務所からお借りしている靴がぺったんこで、しかも久々に立ち仕事なんてやってたものだから歩行機能障害になってしまった。
早く起きてそんな痛みを堪能していると早朝のチャイム前にオヤジに起こされる。出勤の時間だ。
手早く着替えてパジャマと布団を畳む。もちろん部屋長の分も丁寧に畳まないといけない。むしろそっちが先だ。
間髪入れずオヤジが部屋から出るように指示を飛ばす。
順次出房し、検身所にて工場衣に着替えて朝食の準備開始だ。
俺は前日教えてもらった通り、届いた分量が記載してある運搬ボードと病舎人員や制限食などの照らし合わせを済まし、オヤジに報告する。
「●月▲日 病舎朝食人数間違いありません!」

そうこうしていると一般受刑者用の「点検用意!」の号令が飛ぶ。
俺らは早く起きて出勤しているから普通の点検時間には舎房にいない。
この間は物音を立てると最悪殺されかねないから静止すること。一回音を立てて知らない刑務官に点検簿で頭を引っ叩かれたことがある。
そんな感じだ。

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点検終了の号令と共に俺は「お茶配当!」と怒鳴り声をあげる。
そして各舎房に手際よくお茶を入れていく。追っかけで飯や味噌汁の配当が回ってくる。非常に手際が良く、とても完成された流れだった。
きっと何十年もかけてブラッシュアップしてきたんだと思うと歴史の重みを感じる。

全員分の配当が終わったら俺らもパパッと朝食を済ます。
ちょっとお茶をすすったくらいにして食器の回収に向かう。
回収後から俺のオンステージだ。まず各部屋の食器口から部屋に色とりどりの洗濯ネットを放り込んでいく。入れ終わったら
「洗濯物回収!」
と怒鳴り、各舎房を回ってネットに入った洗濯物を回収していく。
平日洗濯物に出していいのはパンツ・シャツ・靴下各一点までなので、手早く各部屋分の洗濯物をチェックして記録する。
洗濯台帳に日付・ネット数などを記録したら、特大の洗濯カゴに台帳ごとぶち込んで指定の場所に置く。

ここでNさんに着替えるように指示を受け、白衣を受け取る
まさかの白衣だ。何に使うのかと思ったら、今から行う医務回診の同伴時に着用すべき衣装なんだとか。
全員が同じものを着ていて見分けがつかない刑務所で、こういった感じで他の者と違う衣装を纏うのは受刑者にとってステータスなんだとか。
そんなことを知らない新米受刑者のムショくんは白衣に袖を通し、Nさんと共に医療棟に向かう。そこにある診察室にAOKI先生という刑務官がいた。
手早く自己紹介を済ませ振り返ると、Nさんは勝手に戸棚を開けまくって回診で必要な分の医薬品をオカモチにガンガン詰め込んでいた。
(ちょっと待て、Nさんオヤジの許可なしに医薬品の棚とか開けちゃってんだけど大丈夫なんすか?)
不思議そうな顔をしていた俺にAOKI先生は、「いちいち許可待ってたら何もできないんだから俺ん時はパッパとやっちゃって〜」と言ってきた。
なんて心の広い先生だ。こんなオヤジもいるのかと驚いた。
そして出発時間になったらミスターAOKIがドアを開け放った。そして今から【第4工場】に行くのだと教えてくれた。
4工場は木工生産とネジ生産みたいなのを生業としている生産工場だ。AOKIが入ると工場長みたいな受刑者が仮設の担当台を設置する。
そこにオカモチを起き、セッティングを終える。
俺の左隣にはAOKIがいる。AOKIが列をなしている受刑者の症状を片っ端から聞き、俺に渡す医薬品を伝える。俺は間違えないように受刑者に指示された通りに医薬品を渡していく
看護助手みたいじゃねーか!と思う役割で、なおかつAOKIの気分次第でスピードアップしまくる。渡し間違いに注意しつつ、4工場を終わらせ、5工場に向かう。ここでも同じように医薬品をバラまき7工場、8工場、9工場、10工場、11工場を片付けていく。
この間に新入訓練工場の同期10人に遭遇した。印象深いのは8工場だ。
川越の8工場は「少年工場」と呼ばれ、20歳に満たない男子がお務めしている。俺は新入訓練の時に8工場に落ちる奴と同期だったから、8工場に行った際に目があってお互いクスッとしたものだ。
俺の倍くらいの刑期と言っていた。頑張って欲しいと思った。

そうして最後の6工場に行き同じように仮説台にオカモチを置くと、年季の入った受刑者が隣に来た。Tさんという。
この方には色々とお世話になったがそれは別の話で。
このかた6工場の顔役的存在で、人数の多い6工場をオヤジと共にまとめているんだとか。しかしあれだ、すっごい感じのいい人だぞ。
6工場は鉄クズをなんか色々したり、トナーカートリッジの再利用のために汚れ落としみたいなことをしている工場だ。昭和の映画で見かける鉄工所ってきっとこんな感じだったんだと思った。
受刑者間の仲も良く、表面的な感じでは刑務所特有のギスギス感が感じられなかった。
オヤジもなんかふざけた感じのオヤジだ。何年の刑期か聞かれ、7年と言ったら爆笑して「御愁傷様」と言われた。

そんな工場でサポートに付いてくれるTさんがずっと話しかけてくれるのだが、おしゃべりは懲罰と言われているだけに気が気ではなかった汗
またもやAOKIはそんな不安を感じ取ったのか、「ここは例外特区」みたいなことを言った。どうやらTさんとのトークは公認らしい。
Tさんは栃木の黒羽刑務所という施設にいて、職業訓練で川越に来たそうだ。そして訓練後も技術指導員として残ってここで出所を迎えるんだとか。
よく分からんがそういうことなのだろう。
あとTさんは刑期の長い人を対象に【ブラスバンドクラブ】の勧誘をしていた。どうやらキャプテンをしているらしく、仮釈審査にめっちゃいい評価が付くからやってみようと誘われた。
(サラが勝手なことしたらUが、、、)と思ったので、一旦話を持ち帰ることにして6工場を後にした。

そんなこんなで午前中いっぱいかかって本日の工場回診を終わらせることができた。
インフルエンザの時期などは診察人数が多く、午後も使って回診するらしい。

受刑者が医務診察を受けられるのは週2回だけだ。
しかも流れ作業で薬や軟膏をもらって終わりというスタイル。
こんな回診に納得する奴ばかりじゃないからオヤジと揉める受刑者もいたり、イベントには事欠かない。
ちなみに言うと俺らはいつでも診察を受けられたし、なんなら通常待ちが一ヶ月くらいかかる歯科治療とかその日の内に受けられる。
超VIP待遇です。

受刑者が申し出る症状の多い順に書いていくと
・インキン
・風邪
・ノド
・肌アレ
・アレルギー(鼻炎、かゆみなど)

と言った感じだ。
インキンは環境的にしかたないと思う。
あんまり大きな声じゃ言えないが、サムライ工場のしんどい部屋って普通にフェ○チオさせてます。ました。今は知らんけど。
だからインキンとかなんかもう、うん、そんな感じっす笑 

こんな感じで刑務所内を回って10人くらいの同期とも会えたし、色んな所を回れて退屈しなさそうだし、刑務所内の地図でも書けるなと当時本気で思っていたのでちゃんと記録してます
清書したらアップしますのでお楽しみに。

今回も最後までお読み頂きありがとうございました!
次回は後輩くんが入ってきたあたりの話を書いてみようと思います。
また宜しくお願い致します。

川越少年刑務所 病舎看護係 1434番 ムショくん

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