見出し画像

物理イマーシブオーディオ環境を DIY してみたメモ

そろそろ仕事で必要そうだったので、イマーシブなオーディオ環境を構築してみました。これから構築しようという人も多いと思うので、メモを整理して公開してみます!

目指したところは、インタラクティブなイマーシブオーディオの確認や実装をするにあたって筆者基準での必要最低限の環境という感じです。事情によって異なる箇所も多く今後大きく変化していく可能性も高い所だと思うので、参考程度に見ていただければと思います〜。

ところで「イマーシブオーディオ」というと、概ね高さ方向の表現を含めたスピーカー配置やオーディオフォーマットを表すということにはなっていると思うのですが、ヘッドホンや 2 ~ 4 個程度のスピーカーを使用したヴァーチャルなものも同じように呼んでしまう場合が多いので区別するため「物理」を付けてみました……。

そういった用語の統一的な意味も含めてイマーシブオーディオの現状には言いたいことが山程あるのですが……、そのあたりは別の機会に譲って本稿では環境構築に関することだけに触れていきます!


構成の検討

最初に触れましたが、今回はインタラクティブなイマーシブオーディオの確認や制作をするにあたっての最低限な環境構築を目指します。

AVアンプ

まず、AVアンプ (AVレシーバーとも呼ばれる) が必要です。

5.1ch/7.1ch などのサラウンド環境はオーディオインターフェースだけでも構築できますが、Dolby Atmos などのイマーシブオーディオ形式に対応したインタラクティブコンテンツは AVアンプが無いと確認ができないという早速の罠があるためです。

対応チャンネル数は 11.1ch (7.1.4ch) 以上が望ましいのですが、場所や予算の都合などで厳しい場合は 9.1ch (7.1.2ch or 5.1.4ch) でもなんとかなるかな?という印象です。Dolby Atmos としては 7.1.2ch が一般的なのですが、上側で音源を大きく動かすようなコンテンツ制作を考慮するなら Height 4ch は死守したいので、5.1.4ch という選択肢が出てくる形です。

また、各チャンネルの有効/無効切り替えや各種 DSP の有効/無効切り替えなどの機能が付いていて、色々な条件下での確認ができるものが望ましいです。

今回は YAMAHA RX-A6A を選択して、5.1.4ch を構築することにしました。

スピーカー

AVアンプはパワーアンプが付いているので、シンプルに構築するならパッシブスピーカーを用意します。

モニターコントローラーを通すなどアクティブスピーカーで構築したい場合は AVアンプのプリアウト端子を使用して接続することになるのですが、プリアウト端子から出せるチャンネルに制限がある場合も多いため AV アンプの選択に気をつける必要がありそうです。

今回はコスパを重視して ECLIPSE TD307MK3 (パッシブ) で組むことにしたので、そのまま AVアンプに接続します。

ECLIPSE TD307MK3 は既に使っていたりしてイマーシブに使うのも割といいなぁと思っていました。最低限欲しかったクオリティを満たしつつも値段は抑えめになって (いるつもりで) いますね……!

スピーカー設置

スピーカーの設置方法は、壁際に 2x4 材の柱を突っ張りアジャスターを使用して建てて、そこに取り付ける方法を取ることにしました。

設置難度が比較的低いのと、下地材の場所への依存が少ないこと、微調整やいざというときの引っ越しなどに対応できることが理由です。

2x4 柱は 5 本建てて Center 以外は 2 段にすることで少ない部材で 5.1.4ch を構築、背面側はクローゼットとドアがある影響で柱を置けないので、Rear Height は Surround の上で我慢します。

窓側の Surround Left 柱はクローゼットが開く範囲で下地材があるポイントを磁石で探して位置決めして、そこを基準に全体の配置を決めました。

準備したもの

PC 、周辺機器などを除く、今回の設営のために用意したものを列挙してみます。

もちろん実際は設営しながら準備しているものも多いです……。準備物が完璧に揃うならその時点でもう完成したようなものですよね(?)。

  • AVアンプ (YAMAHA RX-A6A)

  • スピーカー x 9 (ECLIPSE TD307MK3)

  • サブウーファー (ECLIPSE TD316SWMK2)

  • スピーカーケーブル (QED Profile 79 Strand 100m)

  • サブウーファー接続 RCA ケーブル

  • HDMIケーブル x 2 (HDMI 2.1 とか 48Gbps とかのものを選ぶほうが良さそうです)

  • 電源タップ

  • AV ラック

  • 塗装済み 2x4 材 x 5

  • 2x4 材用突っ張りアジャスター x 5 (強力タイプ 2×4アジャスター ラブリコ)

  • 金具留め用の木ネジ x いっぱい (4.2mm x 25mm)

  • ゴムクッション x 18 (2mm x 10mm)

  • 脚立

  • ワイヤーストリッパー

  • +2ドライバー

  • ドライバーセット (キリ、6角レンチ)

  • 水平器

  • ピンバイスドリル

  • メジャー

  • マスキングテープ

  • 結束バンド

  • 結束バンド台座

  • 磁石

  • はさみ

  • カッター

  • 乾いた柔らかい布

いざ設営

筆者は「オーディオ技術に関わる広い分野に取り組む」と自称していて、要は「フルスタックテクニカルオーディオデザイナー(笑)」なので、こんな設営作業程度ラクショーにできるわけです。

……って嘘ですごめんなさい!!めっちゃ試行錯誤の連続で疲労が凄いです!!

そんな疲れもあって分かりやすくまとめるのはしんどいので、とりとめのない感じで設営のメモを書いていきます。

2x4 柱建てと TD307MK3 の取り付け

スピーカーのベース部分の取り付けは 2x4 柱を建てる前に行えるので助かります。まずは一旦数本軽く建ててみて床からの高さなどをじっくり確認して取り付け位置を決めていきます。

床側の Center 以外の 4ch は座った時の耳の高さに大体合わせて、Height 4ch はなるべく上側に寄せます。Center はモニターを正面に置くのを優先して少し上に配置することにしました。

TD307MK3 はベースから割と自由に角度を付けられるので、2x4 柱自体は壁と平行に置く形にできました。

TD307MK3 の横幅は 2x4 材より若干広く少しはみ出ます。ネジ用のスリットは問題なく使用できるのですが、足が半分はみ出てそのままでは潰れてしまうので元の足の内側に別のゴム足を追加して対処しました。

あとはキリで目安をつけてドリルで下穴を開けてからスピーカーのベースをネジ止めして、柱を建てていきます。

2x4 柱を建てたあとはベースにスピーカー本体を接続して、向きの確認などを行います。今回のように壁掛けの場合はベースのアームの上にスピーカーが乗る形で設置するので比較的楽に作業できます。天吊りはやりたくない……笑

(軽く書いてますが、ここまでの作業で全体の半分以上かかってます、笑)

建てた 2x4 柱を軽く叩くと突っ張り部分からカタカタ音が出るので不安になりましたが、スピーカーの振動程度 (TD307MK3 はそんなに低音出ないしね……助かった……笑) では多分問題なさそうだったのでヨシとします。

配線

配線作業の殆どがスピーカーケーブルです。基本は露出配線ではありますが、2x4 柱の裏を通したり沿わせたりできるので比較的すっきりしたのではないかと思います。

ケーブル長は色々配置してから実際にケーブルを伝わせながら測っていきました。必要な余裕の確認が正確にできたのでこれはやって良かったです。

左右のケーブル長は一応揃えることにしました。やるメリットは小さいながらもはっきりしていてデメリットは大したことないのでまぁ揃えます。(スピーカー接続はかなりのローインピーダンスでケーブル自体の抵抗値の違いの影響が大きいのはシンプルに物理に則っています)

ケーブル長を決めた後はカットしていきます。そんな長いケーブルどうやって測るんだろ?と悩んで廊下に 1m 毎にマステを貼って床で測る作戦でやっていました。それでも合計 60m 近い 9 本のケーブルを作るのは大変でしたね……。

そして撚り線剥き作業はやっぱつれぇです。ワイヤーストリッパーで 1〜2 本くらいなら切れてもいーやってノリでなんとか乗り切っていきます、笑。

更に今回は裸線ネジ締めが待ってます!チャンネル数の多い AVアンプはスピーカー端子の溝がナナメに付いているので苦手です……。最初は緩んでくるので時間をおいて何回か締めます。

配線の後は軽くケーブルをまとめていきます。こういうとき再利用性のあるバンドを選びがちだったのですが、そんな頻繁にセッティング変更するんでなければ結束バンド使っていったほうがローコストなことに気がついてしまったので (でも若干抵抗はある、笑) 結束バンドで整理します。結束バンド台座便利です。

ひとまず完成

こうして完成したのがこちらです。

本格的なスタジオのような雰囲気を醸し出していなくもないですよね?笑

PC から鳴らしてみる

AVアンプの設定画面で全部のスピーカーが正しく鳴ることを確認した後は、本来の目的であるインタラクティブオーディオ制作に使用するために Windows PC から鳴らせるようにします。

PC と AVアンプを接続

PC と AVアンプを HDMI ケーブルで接続します。AVアンプは基本 HDMI 入力だと思うので入力端子に、PC 側はグラフィックボードなどに付いている HDMI 端子に接続します。

AVアンプは HDMI 入力で音声を受けつつ、映像をスルーして HDMI 出力から出すようになっているので、PC からはモニターとしても認識されます。設定画面を見る時にも画面は使うので、AVアンプの HDMI 出力を手頃なモニターに繋いでおくと良さそうです。

Dolby Access を設定

Windows の「サウンド詳細設定」で「再生」タブから今回接続したモニター(モニターを接続していない場合は AVアンプ名) を探して、右クリックメニューから「スピーカーの設定」を選びます。

「Dolby Atmos for Home Theater」を選択すると Dolby Access のインストールへ進むことができるようになるのでインストールします。

Dolby Access で「Dolby Atmos for Home Theater」を設定します。「Dolby Atmos for Headphones」は今回は無関係なのでスキップで大丈夫です。設定したあと Dolby Access 上でデモコンテンツも見れるので確認します。

苦戦

PC から鳴らす設定作業ですが、いろいろと苦戦しました(まだしてます)。

まず 、既定のデバイスでしか Dolby Access の設定ができないところから始まり、「Dolby Access からのセットアップ」「サウンド詳細設定のスピーカー設定」「サウンドプロパティからの出力形式の設定」「サウンドプロパティからの立体音響の設定」と 4 箇所も設定項目ができてしまうので、デバイスを切り替えたときや出力形式を切り替えたい時などにどうしたもんか混乱します。(連動の仕方についてもまだちゃんと解明できていません、笑)

また、Dolby Access のデモコンテンツが視聴できても、ゲームなどのインタラクティブコンテンツで正しく動くとは限りません。これはコーデックが異なるためです。(RX-A6A の表示ではデモは「Atmos/DD+」、ゲームは「Atmos/PCM」の表示でした)

この辺は様々な落とし穴があるようで、検索すると無数のトラブル報告が観測でき、全然全貌が掴めないので困っています……。

  • グラフィックボードと AVアンプの相性問題もあるらしいとか…… (基盤交換対応になったケースもあるとか……)

  • HDMIケーブルを HDMI2.1 対応のものに変更したら一部改善したとか……

  • 音が途切れるようになったらキーボードのミュート/アンミュート操作を行うと改善するとか……

ぬか喜びコーナー

YAMAHA RX-A6A はパワーアンプとしては 9ch なので 5.1.4ch が限界なのですが、11.2ch のプリアウト端子を装備しているため、外部にパワーアンプ (と追加のスピーカー) を 2ch 分用意すれば 7.1.4 ch まで組むことができます。

ほ〜〜。アレ?あるじゃん追加のスピーカー。

というわけで Surround Back のプリアウトに以前からあるほうの ECLIPSE TD307MK3(BK) を繋いでみたのですが、外部パワーアンプ使用で 11.2ch を実現する場合、外部パワーアンプを使用する 2ch は Rear Height か Front に限られるらしく上手くいきませんでした、、世の中そう甘くはないですね……。(もしソフトウェアアップデートとかでなんとかなるなら対応してくれたら嬉しいなぁ……なんて……)

こういった制限も AVアンプの種類によって異なるので、いろいろと調べておいたりするのは重要ですね!

おわりに

今回インタラクティブオーディオ制作向きの物理イマーシブオーディオ環境の構築をしてみましたが、設置スペースや費用の問題はもちろん、様々な落とし穴があることがわかりました……。

制作向きはともかく、ゲーム向きだとしてもかなり苦戦しそうなので、なんとか状況が改善するといいなと思います……!

この記事がほんの少しでも、環境構築の助けになればと思いますが、「ちゃんと作るのであればスタジオ設営の専門家にお願いしたほうがいい」ということも強調しておきます!

それではみなさま、よい物理イマーシブオーディオライフを!笑

参考

下記、リンク切れのようです……


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?