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アカデミー賞で視覚効果賞を受賞した「ゴジラ-1.0」を見て思う日本のVFXものづくりの凄さ!!

こんにちは。

先日、遅まきながら「ゴジラ-1.0」見てきました。
見たい映画だったのですが、しばらく躊躇しているうちにロードショー期間が終わってしまいました。しかし、今回アカデミー賞の受賞を祝して、近くの映画館でリバイバル上映しておりましたので、ようやく見ることができました。

結構、ストーリーは戦後日本の人間ドラマの部分も多く、最後にサプライズ感動もあり、大変良くできた脚本だったと思います。
また、賞をとった視覚効果については驚嘆の一言ですね。ものすごくリアルにゴジラの怖さを表現していました。サイズは違いますが、「ジョーズ」を最初に見た時のような、あの得体のしれないものが突然現れる怖さです。その意味では、映像と合わせて、音響、音楽も良いシナジーを出していたと思います。

今回はアカデミー賞で受賞した視覚効果賞に関連して、「ゴジラ-1.0」におけるVFX制作の裏側などについて調べてみました。そして、最後に、ビジネスとしての成功についても数字を集めてみました。
その中で、特に制作の裏側で驚きの事実もあったので、その内容をみなさんと是非シェアしたいと思います。

まず、アカデミー賞ですね。
今回「ゴジラ-1.0」は視覚効果賞(Academy Award for Best Visual Effects)を受賞しました。
今年、この賞のノミネートに挙がっていたのは次の作品です。
「ナポレオン」
「ザ・クリエイター」
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME 3」
「ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART 1」

これらの大作の中で「ゴジラ-1.0」が受賞したことは本当に素晴らしいと思います。

さて、それでは、何故「ゴジラ-1.0」が今回「視覚効果賞」を受賞できたのか、まずはこのノミネート作品の制作費をみてみましょう。
「ナポレオン」(2億ドル)
「ザ・クリエイター」(8000万ドル)
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME 3」(2億5000万ドル)
「ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART 1」(2億9100万ドル)
「ゴジラ-1.0」(1500万ドル)


なんと制作費の桁が一つ違うのですね。ガーディアンズとミッション:インポッシブルは、さすが超大作だけあって、2億ドル(300億円)超えですね。
ただ、制作費、すなわちVFX予算が安くて受賞したわけではなく、VFXのクオリティが、今回「ゴジラ-1.0」が最も優れていたということなので、これは本当にすごいことです。

現在、ハリウッドで「大規模なコストのかかるVFX」には課題があると思っている人が多いそうで、それが、この受賞に追い風となったと言えるでしょう。特にコロナ禍やハリウッドストが続いたことから、映画業界では大人数がスタジオに集まることが難しい時期が続き、そのため、少ない人数でVFXが開発できる「Scanline VFX」のような技術がハリウッドでも普及し始めています。

こうした、「少人数でクオリティの高いVFXを作るにはどうしたらよいか」という問いに対して、一定の答えを示したのが今回の「ゴジラ-1.0」だったわけです。

「ゴジラ-1.0」では「プロジェクト全体のコントロール」が上手く回りました。つまり、VFXの使い方をコントロールして、強弱をつける方法がとられたのです。
例えば、ゴジラが大暴れするようなシーンの量を絞り、撮影が難しいシーンをどうVFXでカバーするかをコントロールしています。

すなわち、全編あらゆる場所にVFX予算を使うことはできないため、作品全体をどう構成し、どこにVFXを使うかのかという点を、制作の初期から監督とチームが検討する時間をとってから始めたということのようです。

アカデミー賞で言うと、同じような効率的なVFX制作をした作品がもう一つありました。
それが「ザ・クリエイター」です。予算は8000万ドルと抑えています。それでも「ゴジラ-1.0」の5倍以上ですが。

そして、何より、今回「ゴジラ-1.0」のVFXを担当したチームが優秀だったでしょうね。
「ゴジラ-1.0」のVFXを担当したのは、山崎監督自身も所属する「VFXスタジオ 株式会社白組」です。「VFXスタジオ白組」1974年から現在まで、日本におけるVFXを制作し続けてきた会社のようです。創業者は島村達雄さん、現在は会長を務めていらっしゃいます。

そして、この白組に1986年に入社したのが「ゴジラ-1.0」の山崎貴監督でした。ちなみに今回の「ゴジラ-1.0」のVFXディレクターの渋谷紀世子さんも1989年に入社されています。
つまり、今回の視覚効果賞の受賞は、これまで半世紀もの間、日本のVFXをリードしてきた、この「株式会社白組」が評価されたことでもあるのですね。

余談ですが、この「株式会社白組」が最初に手がけた作品は、故大林亘彦監督の1977年の作品「HOUSEハウス」ということでした。実は、結構、私がリアルで好きだった作品なのですよね。

山崎監督や渋谷さんなどのメンバーが「株式会社白組」の映像制作について振り返っている座談会の記事がありました。
これを拝見すると、「株式会社白組」は、フィルムの時代から、伊丹十三監督の作品などを中心に映像制作を行っており、そして、映画自体もフィルムからデジタルに移行するタイミングで、山崎監督が制作した「ALWAYS 三丁目の夕日’64」(2012)が完全デジタルのVFX制作になった、という話が、かなりマニアックに語られておりました。

日本人は、アニメ制作もそうですが、映像制作やVFX制作についても、マニアックな少人数チームで、世界が驚くようなクオリティの作品を作ってしまう風土があるのでは、と感じてしまいますね。
つまり、ハリウッドなどでは作品ごとにスーパーな個々のクリエーターが集まって、すごいものを作るイメージであることに対して、日本では「株式会社白組」のような、何十年も一緒に飯を食ってきて、気心の知れたスーパーチームがこうしたすごい作品を生み出しているのでは、とも思ってしまいました。

さて、そんな「ゴジラ-1.0」ですが、現在の興行収入を見ていきましょう。
先月3月3日の公式発表では以下のようでした。
公開122日間で観客動員数399万人
興行収入60.1億円


この情報はアカデミー賞発表前の数字ですから、アカデミー賞を受賞した後にさらに伸びてきているはずです。
ちなみに前作「シン・ゴジラ」は観客動員数569万人、興行収入82.5億円(これもすごい数字です)ですから、アカデミー賞効果とグローバル興行展開により、この数字を抜くのではないでしょうか。

山崎監督はアカデミー賞受賞の際にこうコメントしていました。
「日本の映画が海外でもある程度興行できれば、日本の映画の環境は変わっていくし、私たちで変えていかないといけない。」

日本映画のマーケットが増えれば、今後、制作費をもっとかけられるかもしれませんね。

それでは。

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