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「ルーブル美術館展 愛を描く」を観てポイントをわかりやすく5分で解説!!

こんにちは。

先日、六本木の国立新美術館で「ルーブル美術館展 愛を描く」を観てきました。今回はその美術レポをわかりやすく解説したいと思います。
これから観に行こうという方の理解の参考になれば幸いです。
また既に見に行かれた方も頭の整理になると思います。

展示されている絵画は、ご存知、パリのルーブル美術館収蔵品の中から「愛」をテーマにした作品を73点出展しています。「愛」というベタなテーマですが、なかなか面白い企画と思います。

「ギリシア、ローマ神話を題材とする神話画、現実の人間の日常生活を描く風俗画には、特別な誰かに恋焦がれる神々、人々の情熱や欲望、官能的な悦び、あるいは苦悩や悲しみがさまざまな形で描かれています」
(展覧会ウェブサイトより)

要はルーブルの著名な絵画を紹介しながら、合わせて、さまざまな「愛」の概念について感じましょう、という展覧会なんですね。

展覧会場は5つの「愛」の種類に作品が分類されています。
1. 愛の発明
2.ギリシャ、ローマといった古代神話における愛
3. キリスト教の教えの中で語られた愛
4. 現実世界の人々が織りなす愛
5. 19世紀フランスに流行した牧歌的な愛やロマン主義における悲劇


1. 愛の発明

アドリアーン・ファン・デル・ウェルフの「善悪の知識の木のそばのアダムとエバ」から始まり、恋のキューピットの神である、フランソワ・ブーシェの「アモルの標的」など愛の誕生する姿が描かれています。



2.ギリシャ、ローマといった古代神話における愛

ここではギリシア、ローマ神話に出てくる、様々な神々の愛が語られています。神といっても、人間臭い略奪愛や恋人の死などの物語です。

「略奪愛」の作品は結構多く、男神は神話では、よく人間の娘を略奪していたようです。作品としては
アントワーヌ・ヴァトーの「ニンフとサテュロス」


セバスティアーノ・コンカの「オレイテュイアを略奪するボレアス」


ピエール・ミニャールの「パンとシュリンクス」
ミシェル・ドリニーの「パンとシュリンクス」



ルイ=ジャン=フランソワ・ラグルネの「デイアネイラを略奪するケンタウロスのネッソス」


などが展示されています。

また、よく描かれる「愛」の神話題材として、「恋の神アモルとギリシャの王女の関係」があります。
この章での作品としては、
ルイ=ジャン=フランソワ・ラグルネの「眠るアモルを見つめるプシュケ」


その他にフランソワ・ブーシェの「プシュケとアモルの結婚」
を見ることができます。

そして、「恋人の死」や「死の結末」というテーマもよく描かれていたようです。
作者不明の「アドニスの死」


その他にレオナールト・ブラーメルの「ビュラモスとティスベの遺骸を発見した両親たち」や
ダフィット・テニールスの「溺れたレアンドロスを発見するネレイデス」
などが展示されています。


3. キリスト教の教えの中で語られた愛

キリスト教の中での母子愛として、聖母マリアと幼子イエスを描いたサッソフェラートの「眠る幼子イエス」は非常に癒される作品です。


それから、こちらはキリストとは関係なくローマ時代の逸話のようですが、父キモンと娘ペロの愛を描いたシャルル・メランの「ローマの慈愛」。牢屋の中で何も与えられなかった父に娘が母乳を吸わせているという、驚きのシーンを描いたものです。



また聖書に出てくる「放蕩息子」の例え話もよく絵画に描かれているようです。
リオネッロ・スパーダの「放蕩息子の帰宅」


ドメニコ・マリア・ヴィアーニの「放蕩息子の帰宅」

そして、イエス・キリストに従った女性「マグダラのマリア」のイエスへの想い(愛)もよく描かれています。
ピーテル・コルネリスゾーン・ファン・スリヘラントの「悔悛するマグダラのマリア」



ベネデット・ルティの「キリスト磔刑像の付いた十字架を手に、瞑想するマグダラのマリア」


などを見ることができます。


4. 現実世界の人々が織りなす愛

さて、人間たちの愛はさまざまなバリエーションがあります。特にこの展覧会全体の中でも、見どころとしてはジャン・オノレ・フラゴナール、いわゆるフラゴナールの代表作「かんぬき」があります。
男性が女性の寝室でドアに「かんぬき」をかけているシーンなのですが、その時の女性の顔から拒絶と受入の両方が微妙に感じられるということで有名な作品です。結構、なまなましいですよね。



あと、この章で、加えて注目すべきはサミュエル・ファン・ホーホストラーテンの「部屋履き」です。オランダ市民の室内の風景を描写したこの作品が何故「愛」なのか。「床にあるサンダル(部屋履き)が散らばっており、ドアに鍵が刺さりっぱなしになっている」状況から、この部屋の女主人が「どこかで不謹慎な愛に耽っている」ことを推測するという、結構、上級者向けの愛の作品です。

当時のオランダ絵画は情景描写の中に、ひっそりと、そうした暗示をしのばせる手法があったようです。難易度高いですね。



それ以外に、人間の愛でよく描かれているのが「金銭で買える愛」のテーマです。
ヘラルト・テル・ボルフの「男性から金を渡される若い女性」
ミハエル・スウェールツの「若者と取り持ち女」
などを見ることができます。

また、この章では男が普通に女を誘惑しようとしている描写もよく描かれています。
ダフィット・テニールスの「内緒話の盗み聞き」
コルネリス・ピーテルスゾーン・ベーハの「田舎家の室内で若い女性をからかう老人」
などなど、俗人ぽい絵が意外と多いですね。


5. 19世紀フランスに流行した牧歌的な愛やロマン主義における悲劇

この章でひときわ光るのが先ほども出てきた「アモルとプシュケの愛」です。
フランソワ・ジェラールの「アモルから最初のキスを受けるプシュケ」
ここでは最初にアモンがあどけないプシュケにキスをするシーンが描かれています。
美しいですね。



それから、ギリシャの神アポロンと美少年キュパリッソスの愛の神話を描いた「アポロンとキュパリッソス」なども思わず目がいく作品ですね。この絵の中では可愛がっていた牝鹿をうっかり、誤って投げやりで殺してしまい、生きる気力を失った美少年と手を差し伸べるアポロンが描かれています。



ここまで、いくつか作品を紹介してきたように、この展覧会で描かれる「愛」は我々が通常考える男女の愛を超越したもの、または複雑な深読みが必要なものが多く「当時の西洋絵画における愛」について、とても勉強になりました。特に一つ一つの絵画の背景となる物語を知ると面白いですよね。

ということで、興味がある方はぜひ六本木の国立新美術館に足をお運びください。
一応、ネット予約制となっています。
https://www.ntv.co.jp/love_louvre/ticket/

それでは。

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