幾何学を讃嘆する歌

 万象の微を極むれば
 点とこそなれ此の点ぞ
 我が幾何学の始源なる
 それ一点の行くところ
 一たび動けば線となり
 二たび動けば面となり
 三たび動けば体となる

 見よ幾何学の微妙空
 平行線か天の川
 同心円の月の輪に
 流るる星の軌跡しも
 推理し来れば幾十線
 幾個の角の去来みな
 自然の法を示現して

 不尽の鉱の金砕く
 鶴嘴とめて思ふかな
 真理は不磨の山を成し
 巧致は不羈の雲となり
 妙興尽きぬ大海に
 ああ何人か棹して
 千里の帰路を思はんや

 若しピタゴラスの定理得ず
 相似の理論なかりせば
 何の科学か世にあらむ
 至妙至真の幾何学を
 至純至巧の幾何学を
 ああ如何にして我は讃嘆へむ
 ああ如何にして我は讃嘆へむ


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