企業の採用方針に見る働き方の変化とは?
5月になりましたね。皆さまいかがお過ごしですか? 新年度の緊張感がほぐれて疲れが出たり眠気が強くなったりすることを「5月病」と言うこともありますが、ある種の安定を指す言葉なのかも知れませんね。
さて、今回は私の遠縁の親戚の話です。この親戚は代々、その地域でそれなりの規模の事業を営んできました。だからと言うべきか、現在の経営者である親戚のおじさんは、親族が集まる宴席でよくこんなことを話していました。「ここには何でもある。気の置けない友達もいるし美味しい食べ物もある。ごみごみした東京に行きたがる奴の気が知れない」
そんなおじさん、娘さんが恋人を紹介するために家に招いたときに、恋人の経歴を聞いてこんなことを言ったそうです。
「君は転職経験があるのか? そんな人生、失敗じゃないか」
高度経済成長期に働いていた人の多くは終身雇用制度を経験しています。高校や大学を卒業して最初に就職した会社に定年まで在籍するのが当たり前。40年間とりあえず在籍しておけば(働けば、とはあえて言いません)、8桁の退職金をもらって潤沢な年金で優雅な老後を過ごせる。それが「成功」の雛形だった時代は過去には確かにありました。しかし時代は変わります。
いかがでしょうか? 中途採用、キャリア採用、ジョブ型雇用など、いくつかの分類や呼び方はありますが、新卒一括採用で入社した社員を長期的に企業が育てていくのではなく、既に経験のある人、即戦力になる人を、企業戦略として雇い入れることが当たり前になりつつあることが分かります。アメリカ系企業などでは、転職回数が少ないと却って「他社に引き抜かれるほどの能力がない人」という判断をされることもあるそうです。
しかし転職すればするほどよい、というわけでもありません。記事によると、まだ半数の企業では積極的な中途採用を行っていませんし、そのノウハウも少ないのが現状です。そして企業からすれば、中途採用の人に求めるのはスキルや経験。スキルも経験もなくただただ転職を繰り返す人は、企業にとってはむしろリスクになります。
また、昨今は柔軟な働き方や休み方を希望する人も増えています。制度はあるけど実際は使えない、ではなく、フルリモート勤務や男性の育児休業の取得推進、副業の解禁など、企業も働き方を変化させて優秀な人材を確保しようとしています。「今までこれでやってきたから」といった漫然とした慣習的な働き方ではなく、より生産性の高い、より時代に適応した働き方と成果を出そうとしています。
こうした記事を読む度に思い出すのが、冒頭の親戚のおじさんの話です。ご本人には他人の人生に「失敗」と言えるほどの成功体験があるのでしょう。しかしそれは時代や地域、人との相性の結果です。「今は時代が違う」「他人にとっての幸福の形は自分のそれとは違う」というシンプルな事情を飲み込めるかどうかで、ご本人だけでなく、周囲の人の豊かさも変わってくるはずです。
と言うのも、娘さんはおじさんに紹介した恋人と結婚し、海外の某有名企業に就職して、現地で子どもを育てながら働き、数年に一度しか日本に帰って来ないからです。東京どころか海を渡ってしまったんですね。そしておじさんは怒り心頭と同時に、孫に会いたいと度々愚痴をこぼすのです。
おじさんの愚痴を聞く度に私が「世界を股にかけてバリバリ働くなんてカッコいいじゃないですか! あの世界的企業で働いてダブルインカムなんて、世帯収入も高いからお孫さんへの教育費もがっつり掛けられますし。お孫さんがそのまま現地の有名大学に進学して、ノーベル賞候補の若手研究者にでもなったら、おじさんの会社にも取材が来ますよ! 今のうちにスーツを新調しておいたらどうですか?」と言うと苦虫を嚙み潰したような顔になるまでが、もはやお約束です。
私たちは常に新しい時代へのバージョンアップを求められます。むしろ自ら求める必要もあります。過去の成功体験に浸るのではなく、未来の豊かさを築くために、プリンセススクゥエアーは皆さまに役立つ情報を発信して参ります。今後もお楽しみに!