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インチキ占い師 超短編
新庄サトシは今日も仕事探しに街を出歩いていた。午前中に行った会社の面接は暖簾のように手応えが無かった。
職が決まることを心待ちにしている妻の元にそのまま帰るわけにもいかず何をするわけでも無くただプラプラと街を彷徨っていた。
吸い込まれるように入ったパチンコ屋で五千円札を失ったところで我に返った。
慌て店を出て、何かこの街に仕事は残されて無いのか?と再び彷徨いを始めた。
小雨が降り出しアーケードのある場所まで引き返した。サトシは殺されたまま街を彷徨う様はゾンビと大差無いなと自嘲してみた。
その時、路地裏に向かう道の手前に占い師の姿を見つけた。
いっそこの占い師に仕事を選んでもらおうかと思ったが、先程パチンコ屋で五千円札をシュレッダーにかけたばかりなので踏み止まった。
同時にサトシは閃いた。
サトシのアイディアはこうだった。
自分自身が占い師になれば良い。とりあえず資格が無くても大丈夫そうだし。口から出まかせを言うのは得意な方だ。
15分で3000円貰えば1時間で12000円か。
よし、20分で5000円にしよう。と皮算用まで始めてしまった。
そうと決まれば場所からだ。
場所は路地裏前のばあさんの様に路上で始めれば良いと、机と布と蝋燭。後は、掌サイズのガラス玉と字の多い本を適当に揃えた。
サトシは早速翌日の午前中に道具を全て揃えその日の午後から占い師として路上デビューを果たした。
昨夜のうちにサトシは妻に仕事が決まったと報告した。
オンラインの訪問販売という得体の知れない会社を説明したが世間知らずの妻は大概の事を信じてくれる。
インチキ占い師としての第一歩は成功だった。
そしてサトシは道行く物好きな人たちに次々とある事ない事、適当な事を吐き出し、まくし立てた。
そしてサトシは占い師として成功した。まさかの事態に本人も困惑したが思いのほか評判が上がり売り上げも上々と言えた。
その勢い相まってSNSでも話題となり、インチキ占いに長蛇の列が出来た。
事態の滑稽さを目の当たりにしてサトシは思った。
資金も充分に貯まったので、馬鹿馬鹿しいついでにインチキ占い師の館を作ってやろうと。
インチキ占い師の館にぴったりの物件も見つかりすぐに契約した。
元来面倒臭がりのサトシは客との間に薄い布を垂らしバイトスタッフに代役をさせたりもした。
バイトの子には、でまかせよろしくで簡単に作ったマニュアルを渡しただけだが、そもそもがインチキなので何の問題も起こらなかった。
ただ日によって、でまかせを言う人間が変わっただけだった。
サトシの快進撃は止まらなかった。
これだけ手を抜くと流石にすぐ口コミやらでダメになるかなと思ったが売り上げは鰻登りにあがっていった。
そんな自堕落な考えと共に2年が過ぎたある日。
刑事がサトシの館を訪れた。
「新庄サトシだな?なぜ私たちがここに来たか分かっているな?」
「はい。すいません。無免許で占いをしていたから、ですよね。」
「いや、それは全然。そもそも占いに免許なんているのか?」
「え、じゃあ口から出まかせばかり言っていたので、詐欺罪的な事ですか?」
「いや、それも全然。なんで占いで出まかせを言ったらダメなんだ?そもそもがそんなものだろ?」
「あ、じゃあ刑事さん評判聞いてうちに占いに来たんでしょ?」
「馬鹿野郎!そんな訳あるか!俺たちが仕事以外でこんなところ来る訳ないだろ。」
確かにそうだ。いよいよ年貢の納め時なのか、、年貢。
「あっ。」
刑事は逮捕状をサトシに見せつけ言い放った。「新庄サトシ。脱税の容疑で連行する。」
そう、サトシは想定外に稼ぎ過ぎていた。
サトシはインチキがバレないかの事ばかりに考えがいって、税金の事なんて微塵も頭に無かった。
「まぁ続きは署で聞こう。
それにしても、お前相当儲けていたみたいだな、
お前くらいになると、その水晶玉でちょっと占えばこの未来が見えたんじゃないのか?」
「まあね。僕は占い師ですから。」
「そうか。大したものだな。」
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