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うさぎと亀 ~うさぎの鬱憤~ 超短編

 俺はいつも損ばかりしている。
 俺はお調子者で、さぼり癖があるとか言われがちだが、そんなことは無い。それは作られたイメージだ。

 例の競走だって周りの奴らが必要以上に騒ぎ立てるから渋々引き受けてやっただけだ。

 まともに勝負すれば逆立ちしたって俺が負ける訳はない。俺は言わば小動物界のチャンピオンだ。
 それに比べて亀の野郎は断トツでワーストワンだ。

 そんなこんなで大袈裟な舞台まで組まれちまって、引き返せなくなっちまった。
 こんな競争なんて早々に終わらせちまって、月でかぐや姫と一杯やりたいってなもんだ。

 でも、みんな知っての通り勝負はまさかの結果に終わった。
 
 俺は競争の途中に昼寝をして、その間にコツコツ、もといノロノロと歩き続けた亀の野郎が先にゴールした事になっている。

 全然違う。
 
 そんな話を本当に信用するのか?
 大事な競争の途中で誰が寝るかよ

 俺は罠に嵌められたんだ。

 スタートからずっと全力で俺は走っていた。亀の野郎との差は歴然だ。
 俺は世間に、そして亀の野郎に実力の差ってのを見せつけてやろうと躍起になって飛ばしていた。

 いよいよゴールが見えて来た、その時だよ突然横から撃たれたんだ。

 信じられるか?
 競争の最中に麻酔銃で撃たれるなんて。

 そのまま俺は亀の野郎がゴールするまで気を失っていたんだ。

 もちろん競争が終わった後にその事を大会委員会に訴えた。
 でも、奴ら全然俺の言い分を聞き入れてくれ無い。
 要するに初めから、この大会そのものが仕組まれてた訳だ。

 亀は大会委員会を買収していた。だからこんな馬鹿げたカードが実現した訳だ。

 何故かって?そんなのは「縁起物総裁選」の為に決まっている。

 選挙はどちらかと言うと、鶴の旦那の方が優勢だったと思う。
 亀の野郎が選挙に勝つには決め手に欠ける。そこで亀は俺を選挙活動に利用した。ウサギ相手に競走で勝つことで一気にイメージアップを図ったわけだ。
 俺はとんだ当てウサギにされちまったわけだ。
 亀陣営は

「努力すれば必ず叶う」「為せば成る、為さねば成らぬ何事も」と

 あんなクソみたいな出来レースを美談として広めやがった。
 おかげで俺の評価は地に落ちた。

 そんなこんだで、縁起界で亀の一党独裁政権が築かれたって訳さ。
 だから、みんな未だに亀は縁起が良いって崇めるだろ?

 あいつの腹黒さも知らないくせに。 
 
 浦島太郎も不憫なやつさ。
 アイツなんて正に踊らされた代表みたいな奴だよ。お土産の玉手箱開けてすぐ死んじゃっただろ?
 要は寿命を亀の野郎に吸い上げられたって訳だ。
 奴ら長生きだろ。

 そうそう、話はちょっとそれるけど

 俺の親父もそうだ、若いころは悪いタヌキを退治したりで一時期は大分評判も上がってたのに、ある日、湖でサメたちに全身の皮を剥がされてしまう事件に見舞われた。

 親父は親切心でサメの数を数えてあげた、それなのに数え終わると親父は全身の皮を剥がされた。
 全く意味が分からない事件だ。
 裁判でも親父にも非があった事にされて、鮫は執行猶予付きの判決で罰金も無し。理不尽すぎやしないか?

 俺達うさぎはいつも嫌でも目立っちまう。だからやたらと周りに疎まれるのか?
まったく嫌になっちまう。

 じゃあなんで、ひっそり暮らさないのかってか?

 確かにそうだ。この都会から人里離れた田舎に引っ込んで暮らせば、まぁ穏やかな生活は送れるだろうな。

 でも、そんなことしたら俺たちは寂しさで死んじまうんだよ。

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