<ものづくりの話 天才的プロダクトライン>
<ものづくりの話 008>
みそ入大垣せんべいには厚焼、二ッ折、四ッ折と3種類ある。
元々は同じお煎餅で、丸のままアーチをつけたものが厚焼、
それを半分に折った半円型の二ッ折、
それをまた半分に折って1/4にしたのが四ッ折である。
サイズは段々に小さくなって見た目可愛らしくなっていくのだが、
厚みと固さは倍々に増していく。
四ッ折は日本一固い煎餅と呼ばれている。
なぜこんなものを作ったのかはまたまた謎である。
個人的な予測では甘さが貴重というか神であった時代の食べ物ですから
より甘みを感じたい、甘みを長持ちさせたいという気持ちは絶対あったはず。
今みたいに甘すぎる〜とか後味スッキリ〜とか太る〜とか贅沢すぎる時代の価値判断で測れるものではない。
「お米を30回噛んだら甘くなる理論」で当然咀嚼で小麦も甘くなる。
固くてたくさん噛まなきゃ食べられない四ッ折は一番甘みを強く感じるのだ。
そんな願いを叶えるためのデザインがあの形状だったのではなかろうか。
NYの有名アートディレクター曰く、「天才的プロダクトライン」
言われて初めて気づいたんだけど、ホントにその通りやなと。
全く同じものをただ単に折り曲げただけで3種類の商品を作ってしまった。
なんたるクリエイティブ!
こういう発想がしたいと思って商品開発だけでなく、いろんなことを見ている。
ただ悲しいことに、地元では固くて食べられないゲテモノ扱いされることも多い。
(買ってネタに楽しんでいただけるのは有難いけど、買わない理由にされると泣けてくる)
これだけがんばってやってても、この印象を覆すことはまだまだ難しい。
取材も日本一固いお煎餅をフォーカスされての方が多い。
15年程前、朝の情報番組で空手家が来て四ッ折を手刀で割る演出?をされ
食べ物として扱ってもらえない事態が発生して(不在時に直前で知らされた)ブチ切れたこともある。
ホントに悔しかった。
やっぱり美味しさで評価されたい。
道は険しい。