「This is America」

20歳の頃親友K峯と米国を旅した事がありました

グレイハウンドという長距離バスにて移動しました

ちょっと危険ではないか、とも思いましたが

若いうちだけしかできない、と踏み切りました

バスの乗り心地は悪くなく「これなら大丈夫」一安心でした

他の乗客もおかしな様子もなく道中

”これがアメリカなんだな”と興奮しました

K峯も遠足気分で浮かれていました

われわれがバスに乗り込んだの米国の南部、メキシコに近く

とても暑い所です 

我々の服装も当然T-シャツにジーンズ

・・・乗り込んで5時間位過ぎたでしょうか

K峯の様子がおかしいのです

「どうした?K峯」

「・・・寒い」

「だな」

南部を走るバスの為か車内の空調が低めに設定されているようです

「きっと乗り込んだ場所が暑かったから設定そのままだ

しばらくしたら少しずつ冷房弱めるはずだ」

        👇

     弱めませんでした

しばらくすると私も寒くなり始めました

     もう遠足ではない

       拷問です

「おかしい この室温で 人間が普通でいられるはずがない

クレームいれるのが当たり前のこの国で 何故運転手に

誰も何もいわないんだ!!」

私は次第に腹立たしくなってきていました

寒くて眠れないのです

「K峯 ちょっと運転手の所にいってくるよ!」

するとK峯が「待て 事を荒立てるな」

小声で話しかけました

時刻はもう夜中

「なんでだよ 何かおかしいだろ!言ってくるよ 運転手に」

K峯は隣の座席を指さしました

「何だよ?」

「よく見ろ」

横には超薄手のタンクトップに超薄手の短めの短パンを履いた

白人男性が身体を開いた、リラックスした状態でいびきをかいて

寝ていました

「ま、まさか・・・この室温であの薄着・・・」

K峯の顔を見ると

「This is America」

冗談ともつかない顔でつぶやきました

米国の方々の体質は我々日本人のそれとはくらべものにならないくらい

っ よ い

我々にとって危険だったのは犯罪ではなく空調だったのです・・・

こうして二人の二十歳の若造は

また一つ大人になったのでした

目的地についたのはそれから20時間以上たった後でした・・・


死にませんでした



 






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