父 その先へ
父は私が小学生時分、何か自分探しをしていたのだと思います
幾つかこちらに父の記事を書かさせて頂いてますが
無口な父が私を誘い、海釣りに挑戦したり
はたまた日曜大工をしてみたり・・・
父は自分自身の事は一切話さない為、謎が多かったのですが
母の話によれば若い頃ギリシャに暮らすことが夢だったとか、
父が小学生の時 親戚の高校生の論文を代筆してそれが賞を獲ったとか
父のイメージにそぐわない逸話ばかり
そして母が「極めつけよ♡」と言って見せてきた白黒写真には
志茂田景樹氏と見紛う白いぴちぴちのタイツを履いた父が
舞台の端に立っています
「バレエダンサーを目指した時もあったのよ」
「・・・・・・・・」
通常”笑点”か”能”のテレビをつけっぱなしで
夕寝している非アクティブな父
色々手を出してはやめ、出してはやめを繰り返してきたんですね
マラソンはかなり続き、約”5年と6か月ボウズ”位でしょうか
山登りも数回母と行ってました
小学生の私と二人で登ったのが最後でした
ある日父が山登りに行こうと急に私を誘って来ました
私も子供ながらに”父と過ごす時間は何かが起こる”
経験上解りかけてきていましたが 断れません
その週末 私はいかにも”登山”って格好にされて山へ連れていかれました
季節は秋口 標高は低い山でした
しかし もくもくどんどんと頂上を目指す父の後を
急ぎ足で追っかけて行くのは大変です
途中下山してくる方々に挨拶をしながら
ようやくてっぺんらしきところに登頂成功 登山客もちらほらいました
解説もなく父はその場を通過
持参した弁当も食べません
「え~~~!!??」私の事などお構いなしに
その先の峰に向かって歩いていきます
昼を大分過ぎて他の登山客も皆無になった峰の途中でようやく昼飯です
父は遠くを見ていて殆ど話しません
食事が済むと 父は更に先に進みます
登山初心者の私ですら 夕方が迫っている空の様子と
”引き返せなくなる”という予感が働いています
しかし父は前進あるのみ
すると急に人気もない山道で立ち止まり
道でもない藪の方を黙って見ています
で、黙ったまま藪に直進 前進あるのみです
藪は竹藪で物凄い急斜面ですがどんどんもくもくと下っていきます
途中 解説はありません
私は不安です
空を見上げると
赤紫色です・・・
小声で父が何か独り言を言いました
「道に迷った」
!!!!~とっくに解っとるわ~い!!!!~
真っ暗な藪を下っていたら山道を走る車のライトを見つけ
ようやっと舗装道に出る事が出来 何とか助かりました
父はその件に関しても私に謝罪、解説、感想を話す事はありませんでした
嫌な予感はあたったのでした
当時何かを探していたんだろうなぁ~目指す物か何か
その冬、父は一人でスキーに出掛け自身の運転する車が
スリップして畑に落ちてしまった