「絵の世界を散歩する」-エッセイ-
今日は何だか少し疲れ気味。
……という訳で(?)、一緒に絵でも眺めませんか?
「何か難しそう」なんて心配はご無用!
私も別に詳しくはないです。
批評とかじゃないし、ゆるっと思い入れのある絵の話でもしたいと思います。
そもそも、今回ご紹介する絵は……。
デッサンとか遠近法とか分からないけど自己流で描いていたという、極めて珍しいタイプの画家アンリ•ルソーさんの作品ですからね!
彼は、デッサンはめちゃくちゃだし遠近法とか何ソレ?って感じで、絵画の技術や知識はほとんどありませんでした。
例えばこれ、彼の自画像です。
「風景の中の自画像」(1890年)
彼は、足を描くのが苦手だったようで、晩年は特に描くのを避ける感じでした。草むらなんかに隠れるように描いて誤魔化したり。
この自画像とかでも、少し足が浮いてる感じになってしまってるんですよね。
でも、そこがまた何というか不思議な世界観を醸し出してたりします。
後ろの人が小さすぎるのはね、何でしょうね。遠近感……?
アンリ•ルソーは24歳からパリの税関で25年間働き続けていて、税関を辞めるまでは「日曜画家」として絵を描き続けていたのです。
画家デビューした時の彼の作品の評価は散々でした。
が、それにもめげずに、画家としての活動に専念するために税関を退職して、本格的に絵を描き続けていました。
他の画家のように絵画の知識もなく、デッサンの技術、遠近法や明暗法な情報は、ルーヴル美術館での模写、パリの植物園での写生、子ども用の図鑑などをとおして、独学で学んだそうです。
彼は、行ったことのないジャングルを、想像で描いたりもしてます。
本人が言うには「ナポレオン3世と共にメキシコ従軍したときの思い出を元に描いた」そうですが、そんな事実はありませんでした。
実際には、パリの植物園でスケッチしたり、写真や雑誌の挿絵を元に描いていたそうです。
何でそんな事言っちゃったんでしょうね。
……って思ったのですが、まあまあ虚言というか、よく見栄を張る人だったそうです。
「馬を襲うジャガー」(1910年)
私が初めて見たルソーの絵は、これでした。
何回見てもジャガーが馬にハグしてるようにしか見えないし、馬も何か虚無な目をしてるし。
でも、なんか妙に記憶に残る。
他の絵画にはあまり無い感覚です。
そんな彼の作品は、発表するたび「まるで子どもが描いた絵のようだ」と酷評され「美術史上これだけ欠点の多い画家はいない」とまで、当時の評論家に言われたりなんかもしたくらい。
故郷に作品を売りつけようとして断られたことも……。
ピカソやアポリネール(詩人)らの一部の芸術家には認められたものの、彼の作品は生涯、世間に認められることはありませんでした。
それでも彼自身は、自分の絵を大変素晴らしいと思ってたし、才能を信じていたし、何よりもめちゃくちゃ絵を描くのが好きだったんですよ。
そして彼の死後。
何十年も経てから彼の作品が認められるようになりました。構図とか、色彩感覚とか。
彼の絵の良さが色々と評価されるようになりました。
作品自体は、過去も現在も変わらないのに。
時代によって評価が変化するあたり、芸術って面白いなと思います。
「こう有るべき」みたいな型にハマらず、周りの評価なんて気にせず、常に自分らしくあろうとする事。
それもまた、一つの才能ですね。