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【独立・起業のリアル】<破の章 No.02>自らの夢と志を持って、独立・起業を目指す
筆者が半世紀にわたって事業経営に関わってきて、今改めて振り返ってみますと、自分の一貫した思いが浮き上がってきます。
若い頃には「脱サラ」や「独立・起業」という意識も薄く、ただ自分の若さと挑戦魂をよりどころに、自分の考えや発想が世の中に通じるか否かを試してみたい「事業」というものの実態を経験してみたい、と思ってのスタートでした。
そのころから筆者には大きな野心や他の人より良い生活をしたいという気持ちは少なく、ただ自分の気持ちに正直に志をもって挑む精神で、精一杯努めてきました。その愚直ともいえるまっすぐな気持ちが、こうした事業のフェードアウトに入った現在、次に続く若者に対して、自らの夢と志を持って生きてほしい、活躍してほしいとの強い思いにつながっているのだと思います。
筆者は、群馬県前橋市に生まれ、一九六二(昭和三十七)年に商業高校を卒業、すぐに上京して大手証券会社の営業職を経て、紆余曲折を経て一九七一(昭和四十六)年東京都千代田区神田にコミュニケーション・メディア事業会社を創業しました。その後、数多くの事業を展開する一方で、立志の若手起業家を「生み・育てる」活動をライフワークとして、物心ともに支援を継続してきました。二〇二〇(令和二)年、創立五十周年を機に事業のフェードアウトに入ってからは、若者たちへの一層の支援の方法を探りながら日々を過ごしています(※)。
筆者は、独立・起業することは「自己表現・自己実現」のための行為だと思っております。単に金儲けのためだけに仕事をする、事業を興すのではなく、自らの夢と志を確固たる信念のもとにした考え、そのために先ず行動することが大切だと思ってのスタートでした。即ち、自らの人生を悔いなく生きるための手段として熟慮した上での独立・起業だったのです。
大手企業・中小企業のサラリーマン生活を経て、共同経営のかたちで起業をしました。しかし、それも早期に解消して、その反省のもとに他の力を頼らず、他に影響されず、他から束縛されない、即ち独立不羈(どくりつふき)の精神で、完全なる創業を果たしました。
その後、五十余年にわたり事業を継続してきて、その間における大いなる学びと反省をその都度書き留めてまいりました。そして、次に続く志を持って自身の人生の挑戦を試みる若者の独立・起業に対して、本当に有用な参考資料になるようにとの思いと願いで本書をまとめました。
※筆者のこの五十年の道のりは、創立五十年記念誌『人生・八勝七敗~ 小さな覇気を気力に継げて~』に詳しく、電子書籍版をキンドルにてお読みいただけます。