化学物質のリスクアセスメントについて|人事総務担当者向け
こんにちは。ぷらいむです。
今回、改正された安全衛生法の化学物質管理の考え方は「自律的な管理」。
自分たちが取り扱っている化学物質について、ばく露してケガや病気にならないように使い方に応じて対策しましょう、というものです。
自律的な管理はリスクアセスメントをすることから始まります。
ですので、今回のnote ではリスクアセスメントについて書いてみたいと思います。
※ここでは、化学物質の取扱い事業者の人事総務担当者向けの内容とします。
リスクとは?
そもそも、リスクとは何でしょう?
リスクには「危険」や「不確実性」といった意味の使われ方がありますが、安全衛生の分野では 発生する可能性の度合い×発生した場合の被害の影響の大きさ といった意味合いで使われています。
化学物質のリスクアセスメントは、業務で化学物質を取り扱う際にどんな危険性・有害性があるのかを実測や数理モデル等から把握し、取り扱う人がケガや病気をしないためにはどういった対策をとると良いのか、許容範囲に収めるにはどうするか?を検討します。
化学物質の危険性・有害性とは?
化学物質は私たちの生活を便利にしてくれますが、取り扱い方を間違えると大きく分けて2つのネガティブな影響があります。
危険性
物理的・化学的性質(引火性・爆発性等)によって生じる物理的影響有害性
生体への影響(健康影響および環境影響)
どの化学物質にどんな危険性・有害性があるのか?については、GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム:The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)の中で分類されていて、世界共通で同じ認識を持てるようになっています。
リスクアセスメントの実施は義務なのか?
リスクアセスメントについては、2016年(平成28年)6月1日から実施が義務付けられています。
今回の法改正で、リスクアセスメント対象物質が674物質(法改正時)から約3,000物質へ順次拡大していきますが、化学物質自体は何万種類もあるため、リスクアセスメント対象物質以外に取り扱っている化学物質がある場合には、リスクアセスメントの実施が努力義務とされています。
化学物質が納品された時にSDS(安全データシート)が添付されてきたら、リスクアセスメントがあるかもしれない?と考えておくと良いかもしれません。
リスクアセスメントは何をすればいいの?
化学物質を取り巻く法律は、環境や一般消費者の使用など様々な視点がありますが、労働安全衛生法にもとづくリスクアセスメントは「労働環境」の中での人への影響について行われます。
実施者はすべての事業場が対象
化学物質と聞くと化学メーカーや建設業をイメージしがちですが、他の業種でもリスクアセスメント対象物質を使用する場合は対象となります。
※運送業者が容器に入った化学物質を単に運搬する作業を行う場合は「取扱い」に該当せず。
実施のタイミングは新規採用時と変更時
リスクアセスメントを実施するタイミングは、対象物質を新規に採用するときや使用量、作業などを変更する時。
加えて、指針では労災発生時やリスクの状況に変化があったとき、過去から取り扱っている化学物質がありリスクアセスメントを実施したことがないものについては努力義務と定められています。
また、いわゆる市販品(一般消費者の生活の用に供されるための製品)については安全衛生法では対象外となりますが、従業員の安全確保のためにもリスクアセスメントの実質については努力義務となっています。
リスクアセスメントの5つのステップ
リスクアセスメントは以下のステップで進めていきます。
ステップ1については、化学物質に添付されてくるラベルやSDS(安全データシート)に記載されている内容(危険有害性の要約、ラベル要素、有害性情報、適用法令等)を確認します。
ステップ2については、リスクの見積もりには実測法や数理モデルで評価する方法など様々ありますが、数理モデルを用いた評価方法に「 CREATE-SIMPLE(クリエイト・シンプル) 」が加わりました。
コントロールバンディングとの違いは主なものとして以下が挙げられます。
有害性の程度としてばく露限界値を用いていること
取扱量少量(mL)単位が細分化されていること
作業条件(含有率、換気、作業時間、保護具等)の効果を考慮していること
コントロールバンディングよりも精緻にできる、危険性と有害性を同時にアセスメントできるといったメリットがありますが、混合物(特に成分の含有率が記載されていない製品等)に対してのリスクアセスメントのやり方など実務的な課題もあります。
ばく露低減措置の考え方
リスクアセスメントの目的は、業務で化学物質を使用する場合にばく露によるケガや病気を予防することにあります。
ばく露低減措置については、実は保護具の着用は一番最後の対策。
以下の順番で検討していきます。
別の安全な化学物質に変更できるか?(代替物の使用)
局所排気装置や換気など発散源に対しての対処できるか?(工学的対策)
作業方法の改善や教育訓練で改善できるか?(管理的対策)
上記1~3の措置を講じても除去・低減しきれない場合は個人用保護具の使用を検討
保護具は使い方等も含めて万能ではないので、より根本的な対策をとっていきましょうという考え方になります。
意見聴取と書類の保管
ばく露低減措置を検討したら、ばく露の状況や措置の内容につき労働者の意見を聴く機会を設けます。
これらに関する書類は記録を残して3年間保存(がん原性物質については30年間保存)します。
おわりに
濃度基準値が定められた化学物質については、来年度(2024年度)から濃度基準値以下にするようになります。
また、対象物質が拡大されていくと一部の業界・会社だけの話ではなくなっていきますので、今のうちにどんなことをすればいいか運用を整理する際にこちらのnoteをご参考にしていただけますと幸いです。
※法改正の最新情報は、
「化学物質による労働災害防止のための新たな規制について(厚生労働省)」
から確認できます。
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