『沈黙のがん』卵巣がんのリスクを知ろう!婦人科がん専門医による徹底解説
1. はじめに
卵巣がんは、「沈黙のがん」とも呼ばれるほど初期症状が乏しく、進行がんとして発見されることが多い疾患です。早期発見が難しい理由の一つに、明確な検診方法が確立されていないことが挙げられます。ただし、定期的な子宮頸がん検診が、偶発的に卵巣がんの早期発見につながるケースもあります。
本記事では、卵巣がんの種類と特徴を詳しく解説し、特に上皮性卵巣がんの成因について触れながら、発見が遅れる理由と検診の重要性をお伝えします。
2. 卵巣がんの種類と特徴
卵巣がんは、発生する細胞の種類によって以下のように分類されます。
2-1. 上皮性卵巣がん
卵巣がんの中で**最も多く(約90%)**を占める。
卵巣の表面を覆う「上皮細胞」から発生する。
さらに以下の4つの主な亜型に分類される。
高悪性度漿液性癌(HGSC:High-Grade Serous Carcinoma)
成因:卵管の上皮細胞が起源と考えられている(卵管采部の「STIC:漿液性卵管上皮内がん」が前駆病変と推定)。
特徴:最も悪性度が高く、進行が速い。多くの場合、診断時にはステージIII以上に達している。
好発年齢:50~70代。BRCA1/2遺伝子変異と強い関連がある。
明細胞癌
成因:子宮内膜症が関与すると考えられている。卵巣のチョコレート嚢胞(子宮内膜症性嚢胞)が悪性化したものと推定。
特徴:化学療法への反応が他の亜型に比べて悪く、治療が難しいことがある。
好発年齢:40~50代。
類内膜癌
成因:明細胞腺がんと同様、子宮内膜症が関与している場合が多い。
特徴:比較的早期に発見されることが多いが、進行がんでは治療が難しい場合も。
好発年齢:40~50代。
粘液性癌
成因:卵巣以外の器官(胃腸管など)からの転移性腫瘍が紛らわしいため、原発性腫瘍としての診断が慎重に行われる。
特徴:稀であるが、卵巣以外の原発腫瘍との鑑別が必要。
2-2. 胚細胞腫瘍
卵巣の卵子を形成する細胞から発生する腫瘍。
比較的若年層に多い(10~30代)。
代表的な例:未分化胚細胞腫、卵黄嚢腫瘍。
2-3. 性索間質性腫瘍
卵巣でホルモンを産生する細胞に由来する腫瘍。
稀だが、女性ホルモンや男性ホルモンを過剰に分泌するため、ホルモン異常が症状として現れる場合がある。
3. 卵巣がんの発見が遅れる理由
初期症状が非特異的
腹部膨満感や下腹部痛、食欲不振、頻尿など、日常的な症状と区別が難しい。
解剖学的位置
卵巣が骨盤内の深部に位置するため、触診や画像診断で異常を見つけるのが難しい。
検診方法の確立不足
現在のところ、一般的な無症状者に対する卵巣がん検診の有効性は確立されていない。
卵巣がん検診のエビデンス
**卵巣がん検診(腫瘍マーカー測定や経腟超音波検査)**は、現時点では無症状の一般女性を対象とした場合、死亡率を減少させるというエビデンスはありません。
日本産科婦人科学会 でも、「卵巣がん検診の有効性は明確ではない」とされています。
4. 子宮頸がん検診の重要性
卵巣がんは、**子宮頸がん検診(細胞診や内診)**を受ける際に偶発的に発見されることがあります。
経腟エコー検査や内診で卵巣の大きさや形状異常が偶然見つかるケースもあるため、定期的な子宮頸がん検診は重要です。
5. まとめ
卵巣がんは初期発見が難しいがん
特に上皮性卵巣がん(高悪性度漿液性癌など)は進行が早く、診断が遅れがち。
卵巣がん検診は有効性が不明
無症状の一般女性を対象とする検診では効果が期待されていない。
定期的な子宮頸がん検診がカギ
偶発的な発見や、経腟エコーによる異常の早期発見が期待できる。
症状があれば早めに受診を
腹部膨満感、下腹部痛、食欲不振、頻尿などの症状が続く場合は速やかに医療機関を受診。
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の診断や治療を提供するものではありません。症状やリスクについては、必ず医療機関でご相談ください。