
それぞれの甘えたい事情




オーピーは甘えたい時「赤ちゃん」という人格を召喚させる。
幼稚園の頃はこの「赤ちゃん」の他に「マイキー」という人格がいた。
「マイキー」はオーピーの中で頼れるお兄さん的人格だったようだが、オーピー自身の成長とともに「マイキー」はいつの間にかどこかに消えてしまったようだ。
「ホラ、赤ちゃんが抱っこして欲しいって!」
とか、
「赤ちゃんが悲しんでるよ!なぐさめて!」
と、前置きしてからハイハイで、時にはおぼつかない足取りで、オーピーはスースに近づき甘えている。
スースは甘えたいオーピーに、『小2にもなって!』など思わないし、むしろ可愛いから大歓迎なのだが、オーピー的には別人格を召喚させた方が甘えやすいのだろうか、、、謎だ。
オーピーのお気に入りの甘え方は、スースの膝の上でお姫様抱っこの形で丸くおさまりトントンされるである。
単にぎゅーっとされるのも好きだけど。
高2になるキャノンも時々、スースゆずりの地を這う低音ボイスで
「甘えたい、、、、。」
と言いながらスースにずっしり抱きついてくる。
キャノンは160cmで骨太なので、こう、、、なんていうか、、抱きつかれると、骨にくる。スースはいつまでキャノンの抱擁に己の腰が持ち堪えてくれるのか、ハラハラしている。
キャノンはオーピーの事もぎゅーっとするのが好きだ。
ただ力が強い上に力加減をしらないのでオーピーは悲鳴をあげている。
ニコニコ顔で弟を抱き潰しそうなキャノンを見ながらスースは心がぽっとあったかくなる。
キャノンが8歳の時に我が家にやってきたオーピー。
やってきた当初、子供の泣き声が苦手なキャノンは赤子オーピーが泣くたびに、
「病院に返して来てっっ!!!!」
と大激怒していたのだ。
それが今や、オーピーが可愛くて仕方のない様子。
キャノンの成長もあわせてスースはすごく幸せな気持ちになる。
かくいうスースも、甘えるのが大好きな大の大人である。
疲れた時、いや、別にただそうしたい時に
「ぎゅーっとさせて!!!」
と言ってオーピーやキャノン時々スッタに甘えている。
キャノンはスースに甘えるくせに、スースにぎゅっとされると、思春期の娘らしく一応「やめて!」と言うが、スースは心の中でまんざらでもないくせにと思っている。
オーピーは今のところ喜んでスースが好きなだけぎゅーっとさせてくれる。
オーピーをぎゅーっとしていると、スースは、あったかくて、心の芯からじんわり幸せが滲み出てくる感じがするのだ。
そして、このままぎゅーっともう一回自分の中に取り込んでしまいたいという、スースの仄暗いじっとりした、抱えるには重た過ぎる愛が顔を出してくる。
「熱い!熱い!離して〜!」
という無邪気なオーピーの訴えに我に帰るスースであった、、、。
ふと、
「オーピーはいつまでこんな風にぎゅーさせてくれるんやろなあ、、、。」
としみじみするスースに、
「そんなの死ぬまでに決まってる!!」
と間髪入れずに答えるオーピー。
「ありがとう!」
と言いつつ、
『きっと思春期になったら無理やろなあ。』
『こんな可愛いのにいつかババア!とか言い出すわけぇ?!、、、、まあ、それも悪く、、ない、、か、、ギャップ萌え!!』
など、心が忙しいスースであった。
ある日スースはスッタに、甘々ベタベタボーイオーピー及びオーピーを愛でまくるスースについてどう思っているのか尋ねてみた。
「別に心配はしてないよ!」
とスッタ。
「ただ、激しく嫉妬してるけどね、、。」
とスッタ。
「にがにがしく思ってるよ、、。」
とスッタ。
「俺もスースに甘えたいのに、、、。」
と言うのでスースは「ははは」と乾いた笑いで誤魔化した。
「いつでも甘えてくれていいよー!」
と言いつつ足早にその場を立ち去るスースであった。