とめどない1日の日記。

蒸し暑い先週の金曜日の日記。
この日はただブルーノートまでジャズライブを聴きに行くだけの道のりなのに
やたらに表参道までの道中では色々なものに会った。

渋谷から半蔵門線に乗り換えるたった数歩のために街に出た瞬間
東京タワーのような背の高い被り物をした髭の立派な人が目前に現れる。
面食らって思わず見上げてしまったら、すかさず声をかけられた。
逃げようと思ったが、聞けば障がい者訪問支援事業を営む人で存外真面目な方だった。
渋谷では結構有名のようだった。
コロナ以降色々な思いあって、その事業の延長として渋谷で活動しているらしい。
本人はそう自認されているか分からないが、
自分には事業というより、その在り方はアウトサイダーアーティストとして映った。

表参道についてから道に沿って歩くと、今度は窓張りのテナントの中に
機械仕掛けの巨大な3つの人の顔が瞬きをしながらあっちにこっちに向いているのが見えて、とても気になった。
何か現代のアートの展示だろうかと思って入ってみたら何とグラサン屋だと言う。
何でグラサン屋にそんなものが展示されているのか分からない。
自分はてっきり何かシンギュラリティとか呼ばれるものをメタファーで表現した作品なのかと思った。
当然グラサンを買う事は無くそこを出た。

それから会場近くまで着くと開演まで時間があったので、どこかで軽食を取ろうと思うが近くにお店が無い。
仕方が無いのでコンビニを見つけて、そこで軽食を買う事にしたが
警察と何かの作業員と大勢の人だかりがコンビニを囲んでいて騒がしい。
どうも上の階で何かあったようだ。
人だかりを搔きわけるようにして店に入って軽食を買うと
脇の通路の自販機の横で食べ始めた。
建物から出てきた男性が興味津々に「何があったんですかこれ」と訊いてきた。
自分は「いや、分からないです。何なんでしょうね。」と食べながら答えた。

そうしてやっとライブ。
この日は本当はトリオの演奏だったのだけど、1人の演奏者が体調不良で急遽デュオとなっていた。
実を言うと、自分はこの日夕方にこのライブのチケットを取ったのだった。
このトリオの演奏をずっと聴きたいと思っていたのだけど、
自分がこの公演があることを知ったのは、1週間前で当然チケットは売り切れだった。
ところが、先ほどの事情でデュオとなったのでキャンセルが出ただろうと思って電話してみたらチケットを取ることが出来たのだ。

こういう時ほど良いライブになるだろうとも思ったし、自分は特にピアニストに興味があった。
滑り込みだったが、自分はライブを楽しむ事が出来た。

そういう訳で、今日は本当は1日家にいるはずの日だったのだけど
それに比べると、随分と色々なものを目にする日となった。
金曜日だからやはり都会は何か渦巻いているように感じた。
目まぐるしく出会っては通り過ぎていく光景と人々。
蒸し暑さから来る汗と、星ひとつ見えない黒い夜空。
今年の夏はこんな日が多い。

翌日ネットを見ると、
昨日体調不良で出演しなかった演奏者の訃報が伝えられていた。
自分はしばらく何かが止まったように感じていた。

それから昨日の演奏への思いが少し変わった。
昨日のあのライブ会場まで時を遡って何かを受け取らなければいけない気持ちになった。

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