15日目:難培養菌とシデロフォア
Title
Author
Sonia R. Vartoukian,
Aleksandra Adamowska,
Megan Lawlor,
Rebecca Moazzez,
Floyd E. Dewhirst,
William G. Wade
Motivation
どんな課題や問題点を解決しようとしたのか?
1/3を超える口腔内細菌はin vitroで未培養のままである。
過去にシデロフォアを加えることで未培養菌が培養可能になった報告がある。
環境中の細菌叢はin vitroでの培養が困難である場合も多い。これは菌たちがお互いにメタボライトのやり取りや菌体間ネットワークを通じて生息が可能になっているからである。シデロフォアのような鉄獲得機構もその一部で、未培養の口腔内細菌では鉄獲得機構を他の菌に委ねている、つまりその機能を失ってしまっていることが考えられる。
既存の研究で足りないところはどこだったのか?
現在まで未培養である口腔内細菌(特に歯周病関連菌)がシデロフォアにより培養可能になるかどうかは明らかにされていない。
Method
どんな実験をしたか?なぜその実験設計でよいと仮定したか?
・シデロフォアが口腔の難培養菌の生育に影響を及ぼすかどうかの検証
・新しいin vitro culture modelを開発し、未培養菌を新たに培養可能にする。
プレートの中心をくり抜いて、シデロフォアもしくはプラーク懸濁液を加える。そこで生えてきたコロニーを観察・採取する。
Insight
どんな結果が得られたのか?どんな条件だと上手くいって,どんな場合は上手くいかなかったのか?
ヘルパー株の継代を重ねると、表現型が変化し、増殖を刺激していたものが一転、阻害する方向にはたらくなるようになる現象を発見した。
新しくわかった知見はなにか?他のアプリケーションやシステムでも使えそうな知見は何か?
シデロフォアによる鉄の獲得は通常好気環境で見られるものであり、嫌気性菌に対しては鉄が使えるかどうかや取り込めるかどうかに関係なく影響を与えている可能性がある。仮説としてはシデロフォアが電子輸送経路(電子伝達系のこと?)に重要であり、これにより菌の成長を促進しているとも考えられる。→なぜこのような考えに行き着いたのか。
Contribution summary
「[Author]は[Motivation]という課題のため,[Method]を行い,[Insight]がわかった.」”[Author] did [Method] to solve [Motivation] and found [Insight].
Sonia R. Vartoukianはシデロフォアにより未培養の菌を培養することができるかという課題のため、プレートのくり抜いた中心部にシデロフォア溶液を入れて菌の生育を観察する実験を行い、口腔の難培養菌である菌が生育することおよび、新たな未培養菌の単離に成功した。
気になったこと。
・そもそも口腔内細菌はシデロフォアを産生する菌があまり報告されていない(Rothiaくらい?)
・Pgではgingipainが鉄獲得機構に関与していることが明らかにされている。(菌体膜表層へのHbの付着、Hbとタンパク質複合体の形成、タンパク質分解酵素による複合体の断片化及び菌体内への取り込み)
・Fnに関してもhumTRUVオペロンおよびhumF, humWにより特殊な鉄獲得機構に関与しているという報告あり。(14日目参照)
・歯肉縁下では嫌気的環境である点や宿主由来のヘム鉄が豊富にある点からシデロフォアはあまり利用されない。(今回シデロフォアにて生育が見られたのは電子伝達系に関与しているから?と言っている。)
・結局FfはFnの何を利用しているのか?おそらく電子伝達系や鉄関連(ポルフィリン)およびFAsは間違いないと思われるが。。。